秘密の部屋

グリフィンドール生の証拠

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 目を閉じていても、ハリーには分かっていた。大蛇のバジリスクが、湿った地面を這いずっている。


「あいつを殺せ」


 リドルが、パーセルタングでバジリスクへ命令した。

 ハリーは、目を閉じたまま走って逃げた。

 何か重くて硬いものがぶつかり、ハリーは壁に打ち付けられてしまう。

 遂にハリーは、薄く目を開けて状況を確認しようとした。

 そこには、想像を絶する程の巨大な蛇がいた。胴は怪しく光る緑色で、樫の木のように太い。

 フォークスが、バジリスクの鎌首の周りを飛び交っていたのだった。バジリスクの方は、長い牙でフォークスを迎え撃っている。

 フォークスが、長い嘴でバジリスクを突き刺し、そこからどす黒い血が吹き出した。バジリスクの両目を潰したのである。

 のたうち回るバジリスクの尾を避けるハリー。そのときに、顔に何かが当たった。

 バジリスクの尾で吹き飛ばされた組分けである。

 それを被って地面に伏せ、ハリーは必死に「助けて」と祈った。

 しかし、帽子は応えなかった。その代わり、帽子が縮んで重いものが中から落ちてきて、ハリーの頭のてっぺんを打った。

 帽子を脱いで中の物を確認すると、それは銀の剣だった。

 「秘密の部屋」のわずかな光りを受けて、光り輝いている。柄の部分には、きらめく卵くらいの大きさのルビーがはめ込まれていた。


「小僧を殺せ!」


 リドルがバジリスクに命令する。

 ハリーは、銀の剣を持って立ち上がった。

 柱にぶつかりながらも、ハリーの方へ鎌首を向けるバジリスク。両目が見えなくなったが、においでハリーの居場所が分かるようだった。

 バジリスクの体当たりを懸命に避けながらも、ハリーを丸呑みしようとする巨大な口内を見た。

 剣のように鋭い牙が、ぬらぬらと不気味に光っている。

 全身を地面やバジリスクの身体で打ち込まれても、ハリーは剣をバジリスクへ向けた。

 バジリスクの鋭い牙が襲ってくる。ハリーは剣を強く握って、バジリスクの口蓋へ突き刺した。

 長い毒牙がハリーの腕に深く食い込み、バジリスクの生暖かい血が全身を濡らす。

 ハリーの腕に牙を残し、バジリスクは痙攣しながら地面へ倒れ込んだのだった。

 ハリーも、地面へ崩れ落ちる。深く刺さる牙を引き抜いたが、ハリーにはもう遅いことが分かっていた。

 すると、そこへフォークスが近寄ってきたのである。ハリーの毒牙で貫かれた腕にその頭を預けた。


「ハリー・ポッター。君は死んだ」


 ハリーに自身の暗い影を落としながら、リドルが告げる。


「ダンブルドアの鳥にさえ、それが分かるらしい。鳥が何をしているか、見えるかい? 泣いているよ」


 フォークスを見ると、その瞳から涙を流していたのだった。真珠のような涙が、艶やかで綺麗な羽毛に落ちて滑り落ちていく。


「これで有名はハリー・ポッターもおしまいだ」


 ハリーは眠くなり、リドルの声が遠くで聞こえる。

 周りのものがくるくると回っているようで、そして痛みが和らいでいく。

 しかし、徐々に「秘密の部屋」がはっきりと見えてきた。フォークスの方へ目を向けると、その涙が腕の傷へぽつりぽつりと落ちている。そうして、傷がみるみる治っていったのだった。


「鳥め、どけ!」


 急にリドルが慌て出す。ハリーの杖をフォークスに向けると、爆発音が鳴った。

 フォークスが金色や真紅の羽を靡かせながら、舞い上がっていった。

 

「不死鳥の涙……」


 傷が癒えたハリーの腕を見つめ、リドルが低く唸るように呟く。


「そうだ、癒しの力……忘れていた――しかし、結果は同じだ。寧ろこの方がいい。1対1、ふたりだけの対決だ」


 リドルが杖を振り上げたが、そこでフォークスが頭上へ舞い戻ってきた。ハリーの膝へ何かを落としたのである。

 それは、リドルの日記だった。

 ハリーは、何故か何も考えずに傍らに落ちているバジリスクの牙を掴んだ。まるで、そうするように初めから分かっていたかのように、日記へ牙を突き立てたのだった。

 耳を劈くような悲鳴。日記から迸る黒いインク。身を捩って悶えるリドル。

 地面をのたうち回るリドルは、やがて消えていった。

 日記は、焼け爛れた穴だけを残していた。


 その後、目を覚ましたジニーは一気に泣き叫んだ。一連の事件を自分がやったと告白し、そして、退学になると憂慮する。

 そんな取り乱すジニーをハリーが宥めて、帰ろうと促す。

 「秘密の部屋」を後にし、暗いトンネルを歩いてロンの元へと向かった。

 瓦礫に大きな隙間が出来ていて、そこから顔を覗かせるロン。未だに泣きじゃくっているジニーだったが、無事である妹を確認して喜んだ。

 それからハリー、ロン、ジニー、記憶を失ったロックハートは、フォークスに掴まってマートルのトイレへと戻ってきたのだった。

 生きて戻ってきたハリーを見てマートルが、もしハリーが死んだらここで一緒に住んでもらえたら嬉しいと考えていた、と言った。青白い頬を銀色に染めて。



 ハリー達は、フォークスに導かれながら廊下を行き、マクゴナガルの部屋へ辿り着いた。

 中にはマクゴナガルとダンブルドア、そしてウィーズリー夫妻がいた。

 ウィーズリー夫妻はジニーを抱きしめ、ダンブルドアが笑顔を向けてくれ、マクゴナガルは安堵で胸を撫で下ろしている。

 ウィーズリー夫人に抱き締められた後にハリーは、組分け帽子と剣とリドルの日記をデスクに置いてから全てを語った。

 勿論、誰にも聞こえない声が聞こえたこともである。

 ジニーが魔法をかけられていたことも正直に話すと、ウィーズリー夫妻は信じられなくて戸惑っていた。

 ダンブルドアは、ヴォルデモートがどうやって魔法をかけたのか一番興味があると述べた。

 ハリーは、リドルの日記を見せて詳しく説明をした。

 ウィーズリー氏は、何故そのような危ない日記を使ったのかとジニーの行動を非難する。

 ジニーはまた泣きながら、そういうものであるとは知らなかったと弁明する。この日記が、母が準備してくれた本の中にあったからと。

 そこでダンブルドアは、ジニーに医務室に行くように告げた。

 ジニーに処罰はないようである。もっと年上の魔法使いや、賢い魔法使いでさえ、ヴォルデモートにたぶらかされてきたからである。

 そうしてジニーは、両親と共に部屋を出て行った。

 マクゴナガルがダンブルドアに言われてパーティをする旨を厨房へ知らせに行き、室内にはハリーとロンとダンブルドア、そして恐ろしく静かにしているロックハートだけになった。

 そこでハリーとロンはダンブルドアに、「ホグワーツ特別功労賞」と200点ずつを与えられた。

 その後、ロンはダンブルドアに言われてロックハートを医務室へと連れて行ったのだった。



「それで、ダンブルドアとふたりきりになった僕は、ダンブルドアに何を言われたと思う?」


 そのハリーの表情から察するに、悪いことを言われた訳ではなさそうである。


「お礼を言われたんだ。『秘密の部屋』で自分に真の信頼を示してくれたはずだからって」

「どうしてダンブルドア先生は、それを知っているの?」


 いくらダンブルドアが偉大な魔法使いだとしても、自分のいない場での出来事を把握出来る筈がないだろう。


「そうじゃなきゃ、フォークスを呼び寄せられないんだって。僕、リドルに自分と似ていると言われたのをダンブルドアに話したんだ。でも、僕はそうとは思わない。だって僕、グリフィンドール生だもん。でも、実は、組分け帽子が言ったんだ……」


 去年の組分けの際に、ハリーは帽子に、スリザリンで上手くやっていけただろう、と言われたのだった。

 それは、ハリーがスリザリンに入れないでとお願いしたからだった。組分け帽子は、ハリーをスリザリンに入れる考えだったのである。


「僕は確かにパーセルマウス。でも、それは何故か――ヴォルデモートが自分の力の一部を僕に移したから」


 その名を聞き、ロンの表情が引き攣った。

 サクラには、いつどのようにしてヴォルデモートがハリーにそのようなことをしたのかが気になった。

 けれども、サクラにも少し察しがついた。


「もしかして、ハリーが赤ちゃんのときに……」


 ハーマイオニーがそう口を開くと、ハリーは頷いた。


「ヴォルデモートが、赤ん坊の僕にこの傷を負わせたとき。そのときに力の一部が僕に移った。もちろん、あいつがそうしようと思ってしたことではないみたいだけど。でも、だとしたらやっぱり、僕はスリザリンに入るべきだったのかって思った」


 サクラは否定しようとしたが、それよりも早くハリーがしっかりとした口調で述べた。


「でも、それは違う。ダンブルドアが、僕とトム・リドルは違う者だという証拠があるって言ったんだ」


 組分けのとき、ハリーは帽子に、スリザリンに入れないでと頼んだ。だから、帽子はハリーをスリザリンではなくグリフィンドールに入れたのだった。

 確かにハリーは、スリザリンの素質をいくつも持っている。けれども、自分が本当に何者であるかを示すのは、持っている能力ではなく、自分がどのような選択をするかということだとダンブルドアが告げた。


「それからダンブルドアは、僕がグリフィンドールに属するという証拠が欲しいなら、あの組分け帽子から出てきた銀の剣をもっとよく見てみるといいって言ったんだ」


 ハリーは、言われるままに血に染まった剣を見てみたという。すると、鍔のすぐ下に刻まれる名前に気付いた。


ゴドリック・グリフィンドール


 それは、ホグワーツ創始者の内のひとりの名だった。

 真のグリフィンドール生だけが、組分け帽子からこの剣を出すことが出来る。

 ハリーが、紛れもなく正真正銘のグリフィンドール生だという証拠だった。

 それからハリーは、パーティへ向かおうとドアへ向かった。しかし、ハリーが開ける前にドアが乱暴に開けられたのだった。

 現れたのは、普段の青白い顔を真っ赤にした怒りの形相のルシウス・マルフォイと、包帯でぐるぐる巻きにされたドビーだった。

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