秘密の部屋

狙い

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「だからパーティのときダンブルドア先生、ロックハート先生は記憶を取り戻す必要があるって言ったんだね」


 サクラは合点がいった。

 真夜中のパーティでダンブルドアは詳細を教えてはくれなかったので、ずっとロックハートの記憶を失くした訳を分からずにいたのである。

 ただロックハートがこの学校からいなくなることが嬉しかった。人がいなくなることを喜ぶのは性格が良いとは言えないが、彼の性格を考えるとそう思うのも無理はないだろう。


「僕のイカれた杖を使ったからね、あのバカ」

「でも、言ってみれば奪ったのがロンの杖でよかったよ……。それから僕は、ひとりで先を進んでいったんだ」

「僕は、記憶を失くしたロックハートと残って、瓦礫を崩した。ハリーが戻ってきたときに通れるようにね」



 曲がりくねったトンネルを、ひとりで進んでいくハリー。

 延々と歩き、そして遂にトンネルの終わりに辿り着く。

 正面に見えてきた壁には、2匹の絡み合う蛇の彫刻が施されていた。その蛇は、トイレの蛇口の蛇よりも生き生きとしているように見える。


「開け」


 パーセルタングでそう告げると2匹の蛇が離れ離れになって、それと同時に扉も開かれた。

 ハリーは、全身の震えが収まらないまま扉を潜る。

 薄暗くて細長い空間だった。見上げても天井が見えず、それを支えている筈の石の柱も蛇が絡み合う彫刻が施されている。

 ハリーは杖を取り出し、直ぐにでも目を閉じられるように心掛けて歩き出した。

 両側に立ち並ぶ蛇の柱に沿っていき、巨大な石像のところに行き着いた。纏っているローブ の裾まで髭が伸びている老人の魔法使いのようだった。

 ハリーは、その石像の足元に横たわるジニーを見つける。

 杖を投げ出して慌てて駆け寄り、ジニーを抱き起こした。

 白く冷たくなっているジニー。揺さぶっても目を開けなかった。


「――その子は目を覚まさない」


 突然声がして振り開けると、黒髪の少年がいた。

 いつからそこにいたのか分からない。そばの柱にもたれ掛かって立っていたのだった。

 背が高く、真面目そうな顔立ちで、その双眸には妙な熱情がこもっている。そして、スリザリンの制服を着ていた。


「……トム? トム・リドル?」


 日記の記憶で見た少年に間違いなかった。


「目を覚まさないって、どういうこと? ジニーはまさか……まさか」

「その子はまだ生きている。しかし、辛うじてだ」


 目の前にリドルが立っていることが信じられない。

 日記で見たリドルは50年前の存在で、そしてその姿のままの少年がハリーと現実で喋っている。

 しかし、輪郭がぼやけていて不鮮明であり、彼の周りに薄気味悪い光が漂っている。


「君はゴーストなの?」

「記憶だよ。日記の中に、50年間残されていた記憶だ」


 リドルが指差した。巨大な石像の足の指辺りに、あの黒い日記が開いたまま置いてあったのだった。

 何故その日記がここにあるのか疑問に思ったが、今はジニーの方が優先である。

 ハリーは、リドルに助けを求めながら自分の杖を探した。

 ふと見上げると、リドルがハリーの杖を指で回して弄んでいる。ハリーに返すことはせずに、ハリーを見つめたままくるくると回し続けた。

 唇の端を上げて笑むリドルに不気味さを感じるも、ハリーは強く言葉を発する。


「聞いてるのか? ここを出なきゃいけないんだ! もしもバジリスクが来たら……」

「呼ばれるまでは、来ない」


 リドルが静かに述べた。

 ハリーが杖を返せと頼むがリドルは返さず、代わりに要領の得ないことを言っている。


「僕はこのときをずっと待っていたんだ。ハリー・ポッター。君に会えるチャンスを。君と話せるときを」

「いい加減にしていくれ。君は分かっていないようだ。今、僕達は『秘密の部屋』にいるんだ。話ならあとで出来る」

「今、話すんだ」


 リドルが、笑みを浮かべたままハリーの杖をポケットにしまった。

 ハリーもただならぬ状況を察し、リドルへ訊ねる。


「ジニーはどうしてこんな風になったの?」

「そう、それは面白い質問だ。しかも、話せば長くなる」


 リドルがジニーについて説明しだした。

 ジニーがこのようになってしまった原因とは、誰なのか分からない目に見えない人物に心を開き、自分の秘密を洗いざらい打ち上げたことだと言う。

 あの日記はリドルの物であり、ジニーがその日記に何ヶ月もバカバカしい心配事や悩み事を書き綴っていた。

 からかってくる兄達のこと、お下がりの物で学校に行かなければならないこと、そして、ハリーのこと。

 リドルは視線を、一時もハリーから外さなかった。


「11歳の小娘のたわいない悩み事を聞いてあげるのは、全くうんざりだったよ」


 それでもリドルは、ジニーに同情し、親切にもして、辛抱強く返事を書き続けた。そうすることで、ジニーはすっかりリドルに夢中になったのだった。



 リドルが、何故ジニーの話を辛抱強く聞かなければならなかったのか。

 サクラは考え、そして口に出した。


「ジニーを操るために?」


 ハリーが頷く。


「リドルは、必要となればいつでも誰でも惹きつけることができる。だから、ジニーはどんどん日記のリドルに惹かれていき、自分の魂を彼へ注ぎ込んだんだ」


 ジニーの魂を注ぎ込まれたリドルは段々と強くなっていき、そして今度はリドルの秘密を少しだけ与え、ジニーへ魂を注ぎ込む。


「そうして、ジニーにつけこんで操ったのね」

「そう。リドルはジニーを操って『秘密の部屋』を開けたんだ。学校の雄鶏を絞め殺したのも、壁に文字を書いたのも。そして、蛇をマグルやミセス・ノリスに仕掛けたのもジニーだった」

「ジニーは自覚していたの? 一連の事件を起こしていたのは自分だって」


 ジニーが率先してそのようなことをする筈がないと信じて、サクラが訊いた。


「いや。ジニーは、リドルに操られているときの記憶がなかったみたいなんだ。何故かローブが鶏の羽だらけだったとか、ハロウィーンの夜、ローブにペンキがついていたのに、自分が何をしたか覚えていない、とか」


 ハリーが、苦しそうに表情を歪めて述べた。



「――バカなジニーのチビが、日記を信用しなくなるまでに随分時間がかかった。しかし、とうとう変だと疑い始め、捨てようとした。そこへ、ハリー、君が登場した」


 会いたいと思っていたハリーが拾ってくれて、最高に嬉しかった、とリドルが言う。

 ハリーは、怒りで自分を落ち着かせることもままならないまま、その理由を問う。


「ジニーがハリー、君のことを色々聞かせてくれたからね。君の素晴らしい経験をだ」


 リドルには分かっていたという。ハリーのことをもっと知らなければならない。会って話をしなければならないと。


「だから君を信用させるため、あのウドの大木のハグリッドを捕まえた有名な場面を見せてやろうと決めた」

「ハグリッドは僕の友達だ!」


 ハリーは、とうとう怒りで声が震える。


「それなのに、君はハグリッドを嵌めたんだ。そうだろう? 僕は君が勘違いしただけだと思っていたのに」


 リドルの笑い声が、『秘密の部屋』に響き渡った。


「ハリー、僕の言うことを信じるか、ハグリッドのを信じるか、ふたつにひとつだ。アーマンド・ディペットじいさんが、それをどんな風に取ったか、分かるだろう?」


 ひとりはトム・リドル。貧しいが優秀な生徒で、勇敢であり監督生で模範生。

 もうひとりは、ルビウス・ハグリッド。図体ばかりでかくてドジで、一週間おきに問題を起こす生徒。


「しかし、あんまり計画通りに運んだので、張本人の僕が驚いたことは認めるよ」


 リドルは、顔に嘲笑を貼り付けたまま続ける。


「誰かひとりぐらい、ハグリッドが『スリザリンの継承者』ではありえない、と気付くに違いないと思っていた」


 それは、このリドルでさえ『秘密の部屋』について出来る限りのことを探り出して、秘密の入口を発見するまでに5年もかかったから。


「ハグリッドに、そんな脳みそがあるか! そんな力があるか!」


 リドルがそう言い切り、そして声を落とした。


「……たったひとり、変身術のダンブルドア先生だけが、ハグリッドは無実だと考えたらしい」


 だからダンブルドアは、ハグリッドを学校に置き、家畜番、森番として訓練するようにディペットを説得した。


「きっとダンブルドアには、君のことをとっくにお見通しだったんだ」

「そうだな。ハグリッドが退学になってからは、ダンブルドは、確かに僕のことをしつこく監視するようになった」


 リドルがこともなげに言うが、それは彼には信念があるからだった。

 ダンブルドアに監視されようと自分のことを危険に感じられようと、リドルは今までの努力を無駄にするつもりはない。

 そして、日記を残して自分をその中へ保存することを決心した。


「いつか時が巡ってくれば、誰かに僕の足跡を追わせ、サラザール・スリザリンの崇高な仕事を成し遂げることが出来るだろうと」


 リドルがそう述べるとハリーは、君はそれを成し遂げていないと指摘する。

 猫一匹たりとも死んでいないし、あと数時間でマンドレイク薬が完成し、みんな元に戻るのである。


「まだ言ってなかったかな?」


 しかし、リドルは怯むことなく静かに告げる。

 自らの狙いは、『穢れた血』を殺すことではなかった。


「この数ヶ月間、僕の新しい狙いはーー君だった」

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