秘密の部屋

化けの皮

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 ハリーとロンがロックハートの部屋へ行くと、彼は慌ただしく荷造りをしている最中だった。

 少し開いたドアから見えるロックハートの顔は、焦っているように見える。


「私は今、少々取り込み中なので、急いでくれると……」

「先生、僕達、お知らせしたいことがあるんです」


 ハリーがそう告げるが、ロックハートの表情を見ると、それは受け入れられないと言いたいような感じがした。


「あー、いや、今はあまり都合が……」


 歯切れ悪く言葉を紡ぐロックハートだったが、しかし渋々と承諾したのだった。

ドアが開けられてふたりが中に入ると、室内は大方片付いていた。

 床には大きなトランクが2つ置かれ、それぞれに色とりどりのローブや本が乱雑に入れられている。壁に飾られていたいくつもの自身の写真も、綺麗に取り払われていた。

 これからスリザリンの怪物の退治に赴くというよりは、すぐにホグワーツを発つというような感じである。


「どこかに行くんですか?」

「緊急に呼び出されて……仕方なく……行かねば」

「僕の妹はどうなるんですか!」

「そう、そのことだが……全く気の毒なことだ。誰よりも私が一番残念に思っている……」

「闇の魔術に対する防衛術の先生じゃないですか! こんなときにここから出て行けないでしょう! これだけ闇の魔法がここで起こっているというのに!」


 ロックハートの言動が信じられず、ハリーは彼へ詰め寄った。


「いや、しかしですね、私がこの仕事を引き受けたときは……職務内容には何も……こんなことは予想だに……」

「先生、逃げ出すって言うんですか? 本に書いてあるように、あんなに色々なことをした先生が?」

「本は誤解を招く」


 そこでロックハートが、奇妙なことを口にした。


「ちょっと考えれば分かることだ。私の本があんなに売れるのは、中に書かれていることを全部私がやったと思うからでね」


 もしも、醜い魔法戦士が狼男から村を救っても、その本は半分も売れないはずと言う。


「それじゃ先生は、他のたくさんの人達のやった仕事を、自分の手柄にしたんですか?」


 ハリーが訊くと、ロックハートは悪びれなしに続ける。

 ロックハートは、単純に他人の功績を自分のものにした訳ではない。実際にそのような人達を探し出し、話を聞き、そして『忘却術』をかけるのである。


「私が自慢出来るものがあるとすれば、忘却術ですね。大変な仕事ですよ。本にサインしたり、広告写真を撮ったりすれば済む訳ではない。有名になりたければ、倦まず弛まず、長く辛い道のりを歩む覚悟が要る」


 ロックハートはずっと、ハリーが有名になりたいと思っていると思い込んでいるのだろう。



 この話を聞き、サクラの方はそれほどショックを受けなかった。驚きはしたが、ロックハートの言動が偽りだろうとそうでなかろうと、正直に言えばどうでもよかった。


――普段の彼を見れば、まあ確かに過去にそれほどのことをやったとは思えないね。


 問題はハーマイオニーである。

 ちらりと彼女を窺うと、果たして呆然としていたのだった。


「君がお熱を上げていたロックハートは、実は嘘つき野郎だったって訳さ。君の観察眼は流石だよ」


 ロンが皮肉り、サクラとハリーはハーマイオニーを気遣わしげに見る。


「所詮、見た目だけだったんだよ、良かったのは。で、話を戻すけど、そいつ、僕達に忘却術をかけようとしたんだ――」


 *


 「君達には気の毒ですがね、忘却術をかけさせてもらいますよ。私の秘密をペラペラそこら中に喋ったりされたら、もう本が1冊も売れなくなりますからね……」


 ロックハートが、杖を振り上げる。

 しかし、それよりも早くハリーが杖に手を掛けたのだった。


「エクスペリアームス!」


 ロックハートが吹っ飛び、空中で弧を描いて飛ぶ彼の杖は、ロンがキャッチしてそのまま窓の外へ投げ捨てた。


「私に何をしろと言うのかね?」


 ハリーを見上げ、弱々しく述べるロックハート。

 既に抵抗を見せなくなった彼を見ると、今までどれだけ虚栄を張っていたのかが分かる。


「秘密の部屋がどこにあるのかも知らない。私には何も出来ない」

「僕達はそのありかを知っていると思う。中に何がいるのかも」


 ハリーがロックハートに杖を突きつけて立たせる。

 ロックハートを連れ立てて、ハリーとロンは秘密の部屋へと向かった。

 嘆きのマートルの女子トイレに着いて中へ入と、マートルは一番奥の個室にいた。


「あら、あんただったの? 今度は何の用?」

「君が死んだときの様子を聞きたいんだ」


 すると、今まで陰気臭い表情をしていたマートルが、一気に嬉しそうな様子を見せたのだった。


「怖かったわ! まさにここだったの。この個室で死んだのよ」


 マートルは、当時いじめられてこの個室に隠れていた。すると誰かが入ってきて、その声が男子だったので、出て行けと言おうとして死んだのである。

 覚えているのは、大きくて黄色い目玉がふたつあったということ。


「その目玉、正確に言うとどこで見たの?」


 ハリーが訊くと、マートルは手洗い台の辺りを指差した。

 ハリーとロンはその手洗い台へ駆け寄って調べた。ロックハートは、恐怖でずっと喋らず後ろの方でじっとしている。

 マートルが指した手洗い台やその水道は、他のものと変わりないように見える。しかし、その水道はずっと壊れたままのようだった。

 そこでロンがハリーに、パーセルタングで何か言ってみろと提案する。

 ハリーが何とかパーセルタングを話せたのは、本物の蛇に対してのときだけだった。なので、蛇口の脇に彫ってある小さな蛇を本物だと思い込んで「開け」と言ってみた。

 しかし、ハリーの口から出たのは普通の言葉だった。

 もう一度集中してパーセルタングを言ってみると、口からシューシューというような音が出る。すると、その手洗い台が下に沈み出して、その床に暗い穴が現れた。この穴の下に地下が続いているようである。


「さて、私はほとんど必要なかったようですね」


 ロックハートがトイレから逃げ出そうとしたが、ハリーとロンがふたりで彼に杖を向けた。


「先に降りるんだ」


 ロンが凄むと、ロックハートは絶望したような顔つきなる。


「君達……それが何の役に立つというんだね?」


 弱々しく足掻こうとする彼の背中をハリーが杖で小突き、穴へと押しやった。

 杖も持っていないロックハートが力なく抵抗するが、ロンがその背を押す。その後すぐにハリーとロンも穴へ降りた。

 ぬるぬるとした滑り台のようなパイプを滑り落ちていく。他にもいくつか枝分かれしていたが、自分達の滑るパイプが一番太い。

 曲がりくねりながらパイプを滑っていき、じめじめとした地面に着地した。

 そこは、学校の地下牢よりも深い地下なのだろう。

 ハリーが杖に光を灯して、3人は歩き出した。

 3人の歩くトンネルは静まり返っていて、下には小さい動物の骨が散らばっている。


「ハリー、あそこに何かある」


 3人はその場で立ち止まり、前方を見つめた。

 何か大きくて長いものが行く手を塞ぐように横たわっている。

 ゆっくりと近づき、杖の灯りで照らして確認すると、それは巨大な蛇の抜け殻だった。

 そこで腰を抜かすロックハート。

 ロンが杖を向けて「立て」ときつく告げると、ロックハートが急に立ち上がってロンを地面へ押し倒したのだった。

 ハリーが何かをするよりも早くロックハートが立ち上がる。その手には、ロンの杖が握り締められていた。


「坊や達、お遊びはこれでおしまいだ!」


 形勢逆転と言うかのように、彼はお得意の笑顔を取り戻した。

 ロックハートは、この蛇の皮を少し持って帰り、女の子を救うには少し遅すぎた、と告げるつもりだった。そして、ハリーとロンはその無残な死骸を見て、哀れにも気が狂ったと。

 ロックハートが杖を振り上げる。その杖は、テープでぐるぐる巻きにされた、ロンの杖である。


「オブリビエイト!」


 杖が爆発し、ハリーは両手で頭を庇って逃げた。

 トンネルが、轟音を上げて崩れていく。瓦礫が目の前を塞ぎ、ハリーが完全に孤立してしまった。


「ロン! 大丈夫か!?」

「ここだよ! 僕は大丈夫だ」


 ロンは瓦礫の向こうで無事だった。


「でも、こっちのバカはダメだ。杖で吹っ飛ばされた」


 どうやらロンの壊れた杖が魔法を逆噴射してしまったようだった。

 思えば、決闘クラブのときもスネイプに吹っ飛ばされていたし、ロックハートは魔法で吹っ飛ばされてばかりである。

 ロンが、やたらとロックハートの脛を蹴り飛ばしている。

 問題は、ハリーとロンが瓦礫で分かれてしまった今、どうすればいいのかである。

 魔法で崩してみても、それはやったことがないし、それにトンネル全体が崩れてしまったら大変である。

 ハリーは、ひとりで進むことを決めた。


「ロックハートと一緒に待ってて。僕が先に進む。一時間経って戻らなかったら……」


 少しの静寂があり、ロンが冷静になろうと努めて述べた。


「僕は少しでもここの岩を崩してみるよ。そうすれば君が、帰りにここを通れる」


 ハリーはひとりで先を急いだ。

 ロックハートはもちろん、忘却術が逆噴射してしまったので、ここがどこなのか、自分が誰なのか全て忘れてしまったようだった。

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