秘密の部屋

殺された女子生徒、連れ去られた女子生徒

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 秘密の部屋を開けたのは、今も昔もハグリッドではなかった。

 サクラは幾分かほっとしたのだった。

 今の季節、火の気配など微塵もない暖炉の側の椅子を陣取って、サクラとハーマイオニーがハリーとロンの言葉に熱心に耳を傾けていた。


「トイレで殺された女子生徒が、マートルだった……」


 ハーマイオニーはというと、考えるようにそう述べた。


「あのトイレに住みついているのは、そうことだったのね」

「じゃあ、マートルはあのトイレで殺されたってこと?」

「うん。いじめられてトイレにこもっていたら、男子が入ってきたみたいで。それで、出て行けって言おうとしたら、そこであのバジリスクの目を見てしまったんだ」


 マートルはサクラ達とは違い、バジリスクの目をまともに見てしまった。

 言葉が見つからないが、彼女はとても悲しい存在に思える。


「それじゃあ、当時の犯人はその男子だったの? もしかして、そこから『秘密の部屋』へ?」


 早く真相を知りたくて、疑問がサクラの胸を疼かせた。


「そうなんだ。僕達、当時殺された女子生徒がマートルなんじゃないかって気づいたあと、彼女に話を聞こうと思って。それでこっそり廊下を歩いていたら、マクゴナガル先生に見つかっちゃったんだ。それで、とっさに君達のお見舞いに行こうとしていたって言ったんだ」

「あれは、君の最高傑作の作り話だったなって」


 ロンが、ハリーを見遣って笑う。

 ハリーも少し笑って肩を竦ませた。


「先生に言ったことは嘘じゃないよ。それで僕達、怒られると思ったんだ」

「でもマクゴナガルは許可してくれた。おまけに、ちょっと泣いてたんだ」

「マクゴナガル先生が?」

「きっと君達のことが心配だったんだよ。グリフィンドールの生徒だし」


 マクゴナガルは確かに厳格な性格だが、情があって生徒思いでもある教師なのである。

 彼女に心配をかけてしまって申し訳なく思うが、自分達のことを思ってくれていて嬉しくも感じた。


「それで医務室に行って、ハーマイオニーの手からメモを見つけたって訳」


 ハーマイオニーは、破ったバジリスクのページを握ったままだった。

 それをハリーとロンが見つけてくれたから、事件の解決に繋がったのだろう。


「ええ、私閃いて、それでバジリスクはパイプの中を移動していることを思いついたの」

「そうなんだ。バジリスクはパイプの中を通っていたから、僕は壁の中から声が聞こえてきたんだ」

「それで、『秘密の部屋』」の入口が『嘆きのマートル』のトイレにあったらって思って」


 50年前、ある男子が3階の女子トイレで秘密の部屋からバジリスクを操り、そこでマートルを殺したようだった。


「50年前の継承者は男子生徒だったんだね。じゃあ、今回は? やっぱり、その日記とスリザリンの継承者は関係があるってことだよね? スリザリンの生徒?」


 サクラが尋ねると、ハリーとロンが表情を曇らせて互いを見遣ったのだった。

 サクラの胸に不安が生まれる。

 ふたりがこのような表情で言葉を詰まらせているということは、悪い意味で意外な存在がスリザリンの継承者だったということだろう。


「誰なの?」


 ハーマイオニーもふたりの雰囲気を察し、か細く声を漏らす。

 口を開いたのは、ロンの方だった。


「ジニー」


 サクラもハーマイオニーも、その名前の理解が遅れて言葉を失ったのだった。



 50年前に殺された女子生徒が、マートルだったのではないか。そう気づいてハリーとロンは3階の女子トイレへ向かおうとした。

 しかし、そこでマクゴナガルに見つかってしまうのである。ハリーは咄嗟に、サクラとハーマイオニーのお見舞いに行きたいと告げ、マクゴナガルに許可をもらう。

 そうして医務室でハーマイオニーのメモを見たあと、ふたりは事情をマクゴナガルに説明しようと職員室へ向かった。室内には誰もいなくて、ふたりはマクゴナガルを待つことにする。

 すると、休憩時間のベルが鳴らず、代わりにマクゴナガルの声が校内に響く。


「生徒は全員、それぞれの寮にすぐに戻りなさい。教師は全員、職員室に大至急お集まりください」


 まさか、再び生徒が襲われたのだろうか。

 ハリーとロンは、教師達のマントが掛かっているハンガーラックへ身を潜ませた。マントが何着もびっしりと掛かっているので、ふたりがその中へ隠れることが出来た。

 次々に職員室へと集まってくる教師達。その表情はどれも、良くないことが起こったということを物語っていた。


「とうとう起こりました」


 マクゴナガルが口を開く。


「生徒がひとり、怪物に連れ去られました。『秘密の部屋』そのものの中へです」


 スリザリンの継承者がメッセージを書き残したらしい。あの廊下の血文字のすぐ下に。


「『彼女の白骨は永遠に「秘密の部屋」に横たわるであろう』」


 先ほどマクゴナガルの言葉を聞いて悲鳴を上げたフリットウィックが、今度は泣き出してしまった。


「誰ですか? どの子ですか?」


 椅子にへたり込んだマダム・フーチの問いかけに、マクゴナガルが答える。


「ジニー・ウィーズリー」


 明日、全校生徒を帰宅させなければ、とマクゴナガルが重く続ける。


「ホグワーツはこれでおしまいです。ダンブルドアがいつも仰っていた……」


 そこで職員室のドアが開いて誰かが入ってきた。

 場違いな程の笑顔を湛えたロックハートである。


「大変失礼しました。ついウトウトと……何か聞き逃してしまいましたか?」

「なんと、適任者が」


 全員がロックハートへ憎しみのこもった視線を送る中、スネイプが一歩進み出る。

 いよいよ出番が来た、とロックハートへ告げたのだった。


「その通りだわ、ギルデロイ」


 スプラウトがスネイプのあとに続く。


「昨夜でしたかね。『秘密の部屋』への入口がどこにあるのか、とっくに知っていると仰ったのは」

「私は――その、私は……」

「そうですとも」


 動揺してまごつくロックハート。そんな彼へ、フリットウィックも涙を拭って述べる。


「『部屋』の中に何がいるか知っている、と自信たっぷりに話しませんでしたか?」

「い、言いましたか? 覚えていませんが……」

「私は確かに覚えている」


 言い逃れ出来ぬように、スネイプがロックハートへ畳み掛けた。


「ハグリッドが捕まる前に、自分が怪物と対決するチャンスがなかったのは残念だとか仰っていましたな」

「私は、何もそんな……あなたの誤解では……」

「それでは、ギルデロイ。あなたにお任せしましょう」


 焦るロックハートへ、マクゴナガルが言い放つ。


「今夜こそ、絶好のチャンスでしょう。誰にもあなたの邪魔はさせませんとも。おひとりで怪物と取り組むことが出来ますよ。お望み通り、お好きなように」


 ロックハートは絶句して教師達を見回したが、しかし誰も彼に同情する者はいなかった。


「OK……」


 そして、諦めたようにロックハートが呟く。


「部屋に戻って……支度をします」


 その顔に、いつものキラキラとした表情などなかった。


「――さてと。これで厄介払いが出来ました」


 ロックハートが職員室を出て行き、マクゴナガルが他の教師達へ向き直す。

 誰も、彼が本当にスリザリンの怪物に立ち向かうことを期待してはいない。皆が、ロックハートを目の上の瘤のように感じていたのだろう。


「寮監の先生方は寮へ戻り、生徒に何が起こったかを知らせてください。明日一番のホグワーツ特急で生徒を帰宅させる、と伝えてください。他の先生方は、生徒が一人たりとも寮の外に残っていないように見廻ってください」



 それからハリーとロンは談話室に戻り、フレッジョと共に隅で座っていた。

 パーシーは、両親へふくろう便を飛ばしたあと部屋にこもったようだった。

 談話室は生徒で混み合っているが、こんなに静まり返ったことは今までになく、ハリー達もずっと黙りこくっていた。

 日が沈んでフレッジョが寝室に上がっていき、そこでロンが久しぶりに口を開いた。


「ジニーは、何か知っていたんだよ……だから連れて行かれたんだ。パーシーのバカバカしい何かの話じゃなかったんだ。何か『秘密の部屋』に関することを見つけたんだ。きっと、そのせいでジニーは――」


 今朝、朝食の席で何かをふたりへ話そうとしていたジニー。しかし、なかなか言い出せずにいるとパーシーが現れ、そこでジニーが慌てて去っていってしまったのだった。

 パーシーに話を聞くと、ジニーがパーシーの何かを見てしまったらしく、それを誰にも言うなと頼んだようだった。

 しかし、このときのジニーは、決してパーシーの何かをハリーとロンへ言うつもりではなかったのである。


「だって、ジニーは純血だ。他に理由があるはずがない」


 ロンが強く目をこすりながら呟く。

 『秘密の部屋』について知ってしまったばかりに、ジニーが連れ去られてしまったのである。

 ウィーズリー兄弟は、酷く心を痛めている。

 スリザリンの継承者に連れ去られてしまったのなら、ジニーはもう生きている可能性がないのだろうか。

 そこで、ロックハートのところへ行こうとロンが言い出した。


「僕達の知ってることを教えてやるんだ。ロックハートは何とかして『秘密の部屋』に入ろうとしている。それがどこにあるか、僕達の考えを話して、バジリスクがそこにいるって、教えてあげよう」


 ジニーのほんの僅かの可能性をも信じたい一心のロン。ハリーも、とにかく何かをしたかったし他にいいアイディアも思い浮かばないので、ロンの考えに頷いたのだった。

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