秘密の部屋

バレンタインデー

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 ハーマイオニーが元の姿に完全に戻ったのは、2月に入ってすぐだった。

 その日の夜に、T・M・リドルの日記を見せて話すと、ハーマイオニーが興味津々になってそれを調べたのだった。


「もしかしたら、何か隠れた力があるかもしれないわ」

「でもね、一回出現呪文を試してはみたんだけど、何も現れなかったよ」

「そう。だから隠してるんだったら、完璧に隠しきってるよ。恥ずかしがり屋かな。ハリー、何でそんな物早く捨てないんだい?」

「どうして誰かがこれを捨てようとしたのか、それが知りたいんだよ」


 それはサクラも知りたかった。50年前の日記を、誰が何故女子トイレに捨てたのか。


「リドルがどうして『特別功労賞』をもらったのかも知りたいし」

「そりゃ何でもありさ・O・W・L試験で30科目も受かったとか、大イカに捕まった先生を救ったとか。極端な話、もしかしたらマートルを死なせてしまったかもしれないぞ。それがみんなのためになったとか……」


 ふ、とマートルが何故女子トイレのゴーストになってしまったのか疑問に思った。

 それにしても、色んな理由で「特別功労賞」をもらうことが出来るとなると、もしかしたら「秘密の部屋」と何か関係があるのではないか。


――「秘密の部屋」が開かれたのが50年前。この日記も50年前のもの。じゃあ、リドルって人が「特別功労賞」をもらったのは……。


「何だよ?」


 ロンが、3人の顔を見て眉を顰める。どうやら、サクラ、ハリー、ハーマイオニーは同じことを考えているようだった。


「だって、その日記は50年前のものなんだよ」


 サクラがそう言うが、ロンはまだしっくりこないようだった。


「何よ、ロン。しっかりしなさい」


 ハーマイオニーが日記をとんとんと叩いて言う。


「『秘密の部屋』を開けた人が50年前に学校から追放されたことは知ってるでしょう? T・M・リドルが50年前『特別功労賞』をもらったことも知ってるでしょう? それなら、もしリドルがスリザリンの継承者を捕まえたことで、賞をもらったとしたらどう?」

「そう。だから、この日記は何か知ってるかもしれない。『部屋』がどこにあるのか。どうやって開けるのか。その中にどんな怪物がいるのか。だから、今回の犯人がこの日記をトイレに捨てたんじゃない? こんなのがそこら辺にあったら困るから」

「そいつは素晴らしい論理だよ」


 ロンが茶化すように口を開く。


「でも、ほんのちょっと、ちっちゃな穴がある。日記にはなーんにも書かれてない!」


 確かにロンの言う通りで、サクラが出現呪文を唱えても何も現れなかったのである。

 それを聞いたハーマイオニーは、鞄の中から何かを取り出した。


「『現れゴム』よ」


 ダイアゴン横丁で買ったという赤い消しゴムのようなものを見せてくれた。

 ハーマイオニーはそれで日記のページをこすってみる。しかし、何も現れず、何も起こらなかったのだった。


「だから言ってるじゃないか。何も見つかるはずないよ。リドルはクリスマスに日記帳をもらったけど、何も書く気がしなかったんだ」


 そうだとしても、50年前の日記が何故今ここで出てきたのか、不思議でならない。

 サクラ以上に、ハリーはそれに強く惹かれているようだった。

 とにかくハリーはリドルのことが気になっているようなので、ある日4人はトロフィー・ルームに向かったのだった。そこでリドルの盾を見れば、他に何か分かるかもしれない。


「あの部屋は、もう一生見たくないぐらい十分見た」


 ロンはうんざりしてやる気のない声を出したのだった。

 リドルの盾は、部屋の隅の棚の奥の方に飾ってあった。その盾を確認してみると、詳しい内容までは書かれていなかったのである。


「名前と日付と『特別功労賞』ってことしか書いてないね」

「その方がいいよ。なんか書いてあったら、盾がもっと大きくなるから、きっと僕は今でもこれを磨いてるよ」


 他に何かないか室内を探すと、「魔術優等賞」のメダルと首席名簿の中にもリドルの名前を見つけた。


「パーシーみたいなやつらしいな。監督生、首席……たぶんどの科目でも一番か」

「何だかそれが悪いことみたいな言い方ね」


 ロンが顔を顰めて述べるので、ハーマイオニーが弱弱しく呟いた。

 ハーマイオニーは、どの科目でも一番を目指している優等生なので、ロンの言葉に傷ついたのだろう。



 それから、マグルが襲われる事件は起こらなかった。

 マンドレイクも順調に成長していると、マダム・ポンフリーが報告した。マンドレイクは情緒不安定になって隠し事をするようになったという。思春期に入ったということだった。その後植え替えをして刈り取り、とろ火で煮るまで時間はかからないそうである。そうすれば、石になった人達を治す薬はすぐに出来るようである。

 これだけ学校中が警戒しているのだから、スリザリンの継承者もこれ以上行動するのは危険だと思い始めたのだろうか。

 石にされたマグル達が目覚め、早く事件が終結してほしかった。

 しかし、ピープズが冷やかすように騒ぎを起こすのである。人が大勢いる中で現れ、妙な踊り付きで「オー、ポッター、いやなやつだー」と歌っている。これでは、スリザリンの継承者がハリーであることを、多くの人達が忘れなくなってしまう。

 本当はハリーではないのに、ピーブズの行動にハリーの気も滅入ってしまうだろう。

 ロックハートはというと、今回の事件を自分が解決したと思い込んでいるようだった。

 変身術の教室の前で列になって待っていると、マクゴナガルとの会話が聞こえてきた。


「ミネルバ、もう厄介なことはないと思いますよ」


 自慢げに鼻をとんとんと叩き、ロックハートがウィンクを見せる。


「今度こそ部屋は、永久に閉ざされましたよ。犯人は、私に捕まるのは時間の問題だと観念したのでしょう。私にコテンパンにやられる前に止めたとは、なかなか利口ですな――そう、今、学校に必要なのは、気分を盛り上げることですよ。先学期の嫌な思い出を一掃しましょう! 今はこれ以上申し上げませんけどね。まさにこれだ、という考えがあるんですよ……」


 そう一方的に述べ、ロックハートは去っていった。


「ロックハート先生の考えって、何だろう」


 ロックハートの背を目で追うハーマイオニーを尻目に、サクラが訊いてみた。


「さあね。ロクなことじゃないってことは確かだけどね」

「期待しない方がいいよ」


 ロックハートの考えが明らかになったのは、2月24日の朝食のとき。

 サクラがハーマイオニーと共に大広間に入ると、その光景に驚いて眠気も吹き飛んだのだった。

 壁全面に派手なピンクの花で飾られ、青空を映す天井からはハートの紙吹雪が舞い降りていた。


「なに、これ……」


 少し遅れて来たロンも絶句し、そしてげんなりした顔で椅子に腰かけた。

 教師達のテーブルを見るに、ロックハートがけばけばしいピンクのローブを着ている。


――これが、ロックハート先生が言ってた考えかな。バレンタインだし、何かそれっぽい企画をするのかな。


「きっと、これが先生のアイディアなのよ」


 ハーマイオニーが弾む声で述べる。


「これが……」

「彼が仰ってたじゃない。先学期の嫌な思い出を一層するって」

「これが……」

「飯がまずくなるだけだよ……」


 ロンが、ハートの紙まみれになりつつあるご飯を眺めて呟く。

 ハーマイオニーは、ロックハートの考えが気に入ったのかとても楽しそうに笑っていた。

 少ししてやってきたハリーも、眼鏡の奥の双眸を見開き、戸惑いながら椅子に座った。


「これ、何事?」


 ロンが教師達のテーブルへ指差し、そちらを見遣ったハリーは、それだけで理解したようだった。

 気分が盛り上がっているのはロックハートただひとりのようで、他の教師達の表情は固まっている。

 スネイプは、この状況に果てしない嫌悪感を抱いているようで、頬がひくひくと痙攣しているのだった。

 ロックハートがすくっと立ち上がり、「静粛に」と合図をする。


「ハッピーバレンタインデー! 今までのところ46人の皆さんが私にカードをくださいました。ありがとう!」


 ハーマイオニーを盗み見ると、彼女は今までとは違った微笑みを湛えているようだった。ハーマイオニーが彼へメッセージカードを書いているところを見たことがある。

 イギリスでは、バレンタインの日に男女共に相手へカードや花を贈るのが一般的だった。


――花か……。あたしもいつか、自分で育てた花を――って別に誰にあげるとかないけど、別に!


 きっとドラコは、パンジーやその他大勢の女子からカードなどをもらっているのだろう、と無意識に考えてしまったのだった。


「そうです。皆さんをちょっと驚かせようと、私がこのようにさせていただきました――しかも、これがすべてではありませんよ!」


 ロックハートが手を叩くと大広間の扉が開き、小人が12人入ってきた。無愛想な表情で、金色の羽が背中についていて、ハープを持っている。


「私の愛すべき配達キューピッドです!」


――キューピッドというには、ずいぶんと不細工。


「今日は学校中を巡回して、皆さんのバレンタイン・カードを配達します」


 それだけでは飽き足らず、こともあろうかロックハートは、スネイプに「愛の妙薬」の作り方を見せてもらってはどうかと宣ったのだった。

 スネイプを見ると、何とも言えない憎悪が顔に滲み出ているようである。

 彼は愛の妙薬などより、毒薬を作る方がよっぽど似合っているし、もし愛の妙薬を貰いにきた生徒がいるなら、むしろ毒薬を振る舞いそうだった。


「ついでにフリットウィック先生ですが、『魅惑の呪文』について、私が知っているどの魔法使いよりもよくご存知です。素知らぬ顔して憎いですね!」


 いきなり話題に上げられたフリットウィックは、両手で顔を覆ってしまった。


――先生、可愛らしい! それにしても、魅惑の呪文か……。


 サクラは、その呪文に僅かに興味を持った。

 食欲を低下させられ、無理やり朝食を食べた後に、サクラ達は最初の授業へ向かった。

 そのときに、ロンがハーマイオニーへ縋るような表情を向ける。


「ハーマイオニー、頼むよ。君まさか、その46人に入ってないだろうな」

「あ、時間割はどこかしら……」


 ハーマイオニーが鞄の中を探し始め、ロンの言葉に返事をしなかった。

 もちろん、ハーマイオニーの荷物は教科書や本などで多いのだが、決して整理整頓が出来

ていない訳ではない。


――ロン、ロックハート先生が好きなハーマイオニーがやたらと気に食わないのは何でかなあ?


 今日一日、小人達は授業中にも関わらず教室に乱入してきたのだった。これには教師達うんざりしていたのだった。

 なんとサクラに7通のカードが送られたのである。送り主は、フレッジョとシェーマスとディーンと、あと知らない男子3名だった。


「サクラはかわいいからね」

「そんなまさか」


 ハーマイオニーの言葉が信じられない。


――絶対何か裏があるに違いない。あたしをからかいたいとかそういうのだな、きっと。


 ハリーがターゲットになったのは、午後の授業で呪文学の教室へ行く途中だった。


「オー、あなたです! アリー・ポッター!」


 名前を間違っているが、ハリーのことで間違いないだろう。後ろを振り向くと、不細工な小人が駆け寄ってきたのだった。

 その小人は、周囲の人を肘で押し退けながら近づいてくる。

 反射的にハリーは、小人とは反対方向へ逃げようとした。しかし、小人は周囲の脛を蹴って追いかけ、ハリーの前に立ちはだかった。


「アリー・ポッターに、じきじきにお渡ししたい歌のメッセージがあります」


 小人はハープをかき鳴らしながら告げる。


「ここじゃダメだよ」

「動くな!」


 逃げ出そうとするハリーの鞄に、小人が飛びつく。


「放して!」


 ハリーが引っ張ると鞄が破れてしまい、中の物がばらばらと床へ落ちた。

 インク壷が割れ、教科書や羽ペンなどがインクまみれになる。

 小人が構わず歌いだすが、ハリーは慌てて拾い集めた。

 廊下が渋滞し、人だかりも出来てしまったのだった。


「――何をしてるんだい?」


 少し気取った声がした。嘲笑も含むその声は、ドラコのものである。

 するとまた声が響く。


「この騒ぎは一体何事だ」


 パーシーが人混みをかき分けてやってきた。

 ハリーが必死になって破れた鞄の中に物を詰め込んで走り出そうとすると、小人がハリーの足にしがみ付いた。ハリーが床に倒れてしまい、小人はハリーの踝の上に座り込む。


「これでよし……貴方に歌うバレンタインです」


 小人がハープで妙なメロディーを響かせながら歌い出した。


 あなたの目は緑 新鮮な蛙のピクルスのよう

 あなたの髪は真っ黒 黒板のよう

 あなたがわたしのものならいいのに あなたはとっても素敵

 闇の帝王を倒した あなたは英雄


 小人の歌を聴き、サクラの心臓がひやりとした。

 これは、ジニーがハリーへ綴った詩である。

 一年生の人垣の中にジニーもいる。彼女は顔を真っ赤にして今にも泣き出しそうになっていた。

 ハリーもかわいそうだったが、ジニーも哀れでならない。

 周囲に笑い声が溢れ、ハリーも必死に笑ってみせたが、サクラやハーマイオニーは決して笑うことが出来なかった。

 パーシーが監督生らしく見物人を追い払う。

 すると、ドラコが何かを拾ったようだった。


「それを返してもらおう」


 ハリーは、落ち着きを払ってドラコに手を差し出す。


「ポッターは一体これに何を書いたのかな?」


 それはリドルの日記だった。


「マルフォイ、それを渡せ」


 パーシーも厳しく言うが、ドラコは聞く耳を持たない。


「ちょっと見てからだ」

「本校の監督生として――」


 パーシーが何かを言うが、ハリーはさっと杖をドラコへ向けた。


「エクスペリアームス!」


 決闘クラブで、スネイプがロックハートへかけた武装解除の呪文である。

 日記は見事ドラコの手から離れ、宙を飛んでロンがキャッチをした。


「ハリー! 廊下での魔法は禁止だ。これは報告しなければならない。いいな!」


 ドラコはというと、自分より一枚上手に出たハリーが気に入らず、不機嫌になった。

 教室に入ろうとしたジニーに向かって、叫んだのである。


「ポッターは君のバレンタインが気に入らなかったみたいだぞ」


 それを聞いたジニーは、顔を両手で覆って教室の中へ走っていったのだった。

 またドラコの嫌なところを見てしまったし、ジニーがかわいそうでならなかった。

 サクラは、それからずっと気分が最悪だった。

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