秘密の部屋

不可解な気遣い

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「待て!」


 サクラがふたりに続いて談話室の石の扉へ向かおうとした。しかし、その腕をドラコに掴まれる。


「お前……」


 思わず振り返ったサクラの顔を見て、ドラコが目を見開く。

 焦ったサクラはハリーとロンの方を見たが、ふたりはそのまま石の扉に体当たりするようにして開けて出て行ってしまった。

 混乱してドラコの方を振り向くと、視界がぼやけてきた。視力が下がって元に戻ったのだろう。


「こっちだ」


 ドラコは掴んだサクラの腕を引っ張り、急ぎ足でふたりが開け放した扉から出た。

 人気のない暗い廊下まで来て、ドラコの足が止まる。


「これはどういうことなんだ」


 いらいらとしながら、ドラコがサクラの腕を放して振り返る。


「じゃあ、あのクラッブとゴイルはポッターとウィーズリーだったのか」


 何も言えなくて俯いていると、ドラコの機嫌がますます悪くなった。


「お前達は変身して僕のことを嗅ぎ回っていたって訳か」

「それは……」

「何が目的なんだ。いや、僕には分かるぞ。スリザリンの継承者が僕だと思って探りを入れに来たんだろう」


 図星を突かれ、ますます何も言えなくなる。


「フン。バカだな。一番スリザリンの継承者らしい奴がすぐ近くにいるっていうのに」

「ハリーじゃない」


 ようやくそれだけ言った。


「どうかな。あいつはみんなの前でパーセルタングをお披露目したじゃないか。君も見ただろう?」

「でも……わたしは、ハリーじゃないって信じてる」

「まあ、信じたければ勝手に信じればいいさ。でも、その内正体を現すだろう」

「マルフォイくんじゃないことも信じてる」


 そう告げると、ドラコが口を噤んだ。


「わたしは、ハリーじゃなければマルフォイくんでもないって思ってる。だから、それを確かめようと……パーキンソンさんになってここに来た」


 サクラは、ドラコの顔を真っ直ぐに見る。


「絶対にマルフォイくんじゃないって、信じてた」


 ドラコ本人の口からそれが証明出来たが、それでも聞きたくないことをたくさん聞いてしまった。

 ウィーズリー家やダンブルドア、コリンを見下して馬鹿にし、ハーマイオニーが犠牲になってほしいとドラコが言った。

 そして、自分のことなどドラコの眼中に全くないことも思い知らされた。


「でも……」


 ハリーとロンと共に、パンジーに変身してまでドラコを信じて彼の話を聞くことに、何の意味があったのだろうか。

 自分の信念が揺らぎ、視線を落とす。


「クジョウ」


 不意に名前を呼ばれ、はっとして顔を上げる。


「もうこんな危険なことはするな」


 思いもよらない言葉が、ドラコの口から発せられる。


「僕じゃないって分かったなら、もういいだろう。大人しくしていてくれ」


 先ほどとは打って変わって、優しい声色だった。


「事件の標的は皆マグルだ。君にもその自覚があるなら」


 どういう意図でそのようなことを述べているのだろうか。


「分かったら早く戻れ。あいつらが待っているんじゃないのか」


 そして、ドラコは素っ気ない言い方をして背を向けた。


「あ、うん……」


――早く戻らなきゃ心配する!


 サクラは慌てて廊下を駆け出した。しかし、こともあろうか躓いて転んでしまったのだった。


「バカだな」


 ドラコが近づいてきて、腕を引っ張られる。


「目が見えないんだろう。玄関ホールまで連れていってやる」


 ドラコが立たせてくれ、前を歩いていった。サクラは、それを追いかける。

 ドラコがどういう考えなのか全く分からず、ただただ混乱したのだった。


「ネクタイ、取った方がいいんじゃないのか」

「あ、そうだったね」


 サクラの姿に戻った今、スリザリンの制服を着ているのを見られてはならない。ドラコに言われてやっと気づいたのだった。

 それからふたりは、何も言葉を交わさずに廊下を進む。幸いなことに、誰とも擦れ違わなかった。


「ここを上れば玄関ホールだ」


 階段の下で、ドラコが足を止める。


「うん、ありがとう」


 サクラは階段を上った。そして途中で振り返ると、ドラコはもう背を向けていたのだった。

 少し悩んだが、今回の行動の意味を無くしたくなくて思い切って口を開いた。


「マルフォイくん!」


 呼びかけると、ドラコは振り返ってくれた。


「わたし、ずっとマルフォイくんのこと信じてるからね」


 目も見開いて驚愕するドラコ。その青白い頬に、じわじわと朱が差していったのは見間違いだろうか。

 サクラは、階段を駆け上がって玄関ホールへ向かった。



 3階に行く階段で、ハリーとロンとハーマイオニーに会った。ハーマイオニーはローブをすっぽりと被っている。


「サクラ、どこに行ってたんだい!」

「今、ハーマイオニーを医務室に連れて行くところなんだ」

「ごめん、遅くなっちゃって。急いで医務室に行った方がいいね!」


 ハーマイオニーは、猫の姿でめそめそしている。

 それからサクラは、ハリーから自分のローブが入った袋を受け取り、ハーマイオニーを医務室へと連れて行った。

 ハーマイオニーは数週間医務室に泊まる必要があり、クリスマス休暇が終わってもまだ戻って来られなかった。これにより、生徒達の間にハーマイオニーが襲われたという噂が飛び交う。

 ハーマイオニーの姿を少しでも見ようと、医務室の前には人集りが出来てしまった。マダム・ポンフリーは、ハーマイオニーを気遣ってずっとカーテンでベッドを囲っていた。

 サクラとハリーとロンは毎日夕方にお見舞いに行き、授業が始まってから彼女へ宿題を届けに行ったのだった。



 金曜日の午後。サクラは、マフラーを巻いてひとりでヒメナデシコの植わる庭へ赴いた。

 白い雪の中、花が開くヒメナデシコを見つけて思わず駆け寄った。濃いピンクの花を咲かせたヒメナデシコは、とても可憐に見える。


――今年はちゃんと成功した!


 この状態をずっと維持するのもいいが、この花から種を取ってもっと数を増やすこともやってみたかった。

 少し悩み、サクラはこの花から種を取ることを選んだのだった。

 すると、誰からこちらに近づいてくるのに気づいた。顔を上げると、そこにはマクゴナガルがいた。


「マクゴナガル先生、こんにちは」

「こんにちは、ミス・クジョウ」


 マクゴナガルは柔らかい笑みで挨拶を返し、そしてその表情のままヒメナデシコへ視線を落とす。


「見事に咲いたのですね」

「はい! 今年は成功しました」

「素晴らしいです。綺麗に咲いていますね。それでは、あなたに10点差し上げましょう」


 突然のことに、サクラは言葉を詰まらせた。言うまでもなく、得点が欲しくて、もらえると思って花を育てていた訳ではない。


「ほ、本当ですか!」


 教師は嘘で生徒に点をあげることはない。けれども、サクラは思わず訊き返してしまった。


「ええ、本当です。あなたの努力と才能と、そして結果を評価致します――それでは、風邪を引かないように」

「はい、ありがとうございます!」


 教師達の目を盗み、校則を破ってポリジュース薬を飲んだことに後ろめたさはあるものの、サクラは嬉しくなって礼を述べたのだった。

 マクゴナガルが去ったあとも、サクラは暫くヒメナデシコを眺めていた。

 そして、あのときこの花を見下ろしていたドラコの姿や、ポリジュース薬を飲んで彼の話を聞いたあとのことを思い出す。


――彼にどんな考え、意図があるのか全然分からない。気になって仕方ない。


 もしかして、ドラコは自分を騙そうとしているのではないだろうか。そう考えると、悲しくて胸が痛むのだった。


「もう少し……一緒にいられたら、分かるかな」

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