秘密の部屋

パーセルマウス

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 気を取り直したロックハートは、周囲を見渡した。


「さて、誰か進んでモデルになる組はありますか? ロングボトムとフィンチ-フレッチリー、どうですか?」

「それはまずい」


 そこでスネイプがさっと進み出る。


「ロングボトムは、簡単極まりない呪文でさえ惨事を起こす。フィンチ-フレッチリーの残骸をマッチ箱に入れて医務室に運び込むのがオチでしょうな」


 ネビルの顔が、羞恥と怒りで赤く染まった。


「マルフォイとポッターはどうかね?」

「それは名案!」


 ロックハートは、スネイプの発言に賛成してハリーとドラコを招いた。生徒達は、ふたりのために空間を空ける。

 サクラが「気をつけてね」と声を掛けると、ハリーは頷いて大広間の中心へと向かった。


「さあ、ハリー。ミスター・マルフォイに杖を向けたら、こういう風にしなさい」


 ロックハートは、先ほどのように杖を大袈裟に振り上げ、杖を複雑にくねくねと振った。しかし無様に杖を取り落としてしまい、それを慌てて拾い上げる。


「おっとっと……私の杖はちょっと張り切り過ぎたようだね」


 スネイプの方は、ドラコへ屈んで何やら囁いていた。それを聞いたドラコが、にやりと笑う。

 流石に不安になったのか、ハリーはロックハートを見上げた。


「先生、その防衛技とかをもう一度見せてくれませんか?」


 しかし、ロックハートは何かを低い声で言い、そしてハリーの肩をぽんと叩く。


「ハリー、私がやったようにやるんだよ!」

「え? 杖を落とすんですか?」

「1、2、3!」


 ロックハートが数え、ドラコがハリーよりも早く杖を振り上げた。


「サーペンソーティア!」


 ドラコの杖の先から、1匹のヘビが飛び出した。長くて黒いヘビが、ふたりの間で鎌首をもたげる。

 近くにいた生徒達が怯えて後ずさりをした。


「動くな、ポッター」


 落ち着き払った低い声が響く。


「私が追い払ってやろう……」

「私にお任せあれ!」


 すっとロックハートが出てきて、蛇に向かって杖を振り回す。大きな音を立てて蛇が勢いよく宙へ飛び跳ねた。そしてそのまま落下し、床に打ち付けられた。

 怒り狂ったヘビはシューシューという音を立てて、ジャスティン・フィンチ-フレッチリーの方へ滑っていく。牙を剥き出しているので、攻撃態勢に入っているのだろう。

 するとハリーが、ゆっくりとヘビへ近寄ったのだった。その口から、奇妙な音が漏れる。それは、ヘビのようなシューシューという音のように聞こえた。

 ヘビがジャスティンからハリーの方へ顔の向きを変える。そしてヘビは身を縮めて床に丸まり、ハリーを見上げた。

 それを見たハリーは、ジャスティンへ笑顔を見せる。しかし、ジャスティンは顔を引き攣らせたのだった。


「何を悪ふざけしてるんだ」


 そう叫ぶように述べ、不機嫌そうに大広間から去っていってしまった。

 スネイプが杖を向けると、ヘビは黒い煙を上げて消えた。

 周りがひそひそと話、ハリーを不吉そうに見る。


「もしかして……」


 サクラは、思わず日本語で呟く。


――今、ハリーはヘビと喋ったの?


 ハーマイオニーと共にホグワーツのことを調べていたら、自ずと創設者のことまで分かってくる。ホグワーツ創設者のひとりサラザール・スリザリンは、ヘビと話せていたのだった。

 呆然としていると、ロンがハリーへと向かっていった。サクラとハーマイオニーも、急いで後を追う。


「来て」


 ロンは、ハリーの袖を引いた。ハリーが怪訝そうにロンを見るが、ロンは「行こう」と囁いてハリーを引っ張る。

 4人がドアへ向かうと、人垣がさっと左右に分かれた。


「どうしたんだい?」


 ハリーが聞いてくるが、これは簡単に話せるものではないので、サクラ達は黙ってグリフィンドールの談話室へとハリーを連れて行く。

 ロンは、ハリーを肘掛け椅子に座らせてから口を開いた。


「君はパーセルマウスなんだ。どうして僕達に話してくれなかったの?」

「僕がなんだって?」

「パーセルマウスだよ! 君はヘビと話せるんだ!」

「そうだよ」


 ハリーが、こともなげに頷く。


「でも、これで2回目だよ。一度、動物園で偶然、大ニシキヘビをいとこのダドリーにけしかけた――話せば長くなるけど」


 そのヘビはハリーに、ブラジルなんか一度も見たことがないと話しかけてきて、ハリーがそのヘビを助けてあげたような結果になったという。しかし、ハリーにとってそのようなつもりがなかったようだったが。

 これは、自分が魔法使いだと知る前のことだと言う。


「大ニシキヘビが、君に一度もブラジルに行ったことがないって話したの?」


 ロンが力なくハリーの言葉を繰り返した。


「それがどうしたの? ここにはそんなことできる人、掃いて捨てるほどいるだろう?」

「それが、いないんだ……そんな能力はざらには持っていない。ハリー、まずいよ」


 ロンが意気消沈して項垂れる。ハリーはというと、まだ意味を分かっていないようにいらいらとしてきたのだった。


「何がまずいんだい? みんな、どうかしたんじゃないのか? 考えてもみてよ。もし僕が、ジェスティンを襲うなってヘビに言わなかったら――」

「へえ。君はそう言ってたのか」

「どういう意味? 君達、あの場にいたし、僕が言うことを聞いたじゃないか」

「あのね、ハリー」


 見ていられず、サクラは詳しく教えようと口を開いた。


「ハリーは、普通の言葉を喋っていなかったの。ハリーが喋っていたのはパーセルタング、蛇語だったの。だからわたし達、ハリーがヘビに何て言ってるのか分からなかったし、それに何より、ハリーがパーセルマウスだとは知らなかったよ」

「君が何を話したか、他の人には分かりゃしないんだよ。ジャスティンがパニくるのも分かるな。君ったら、まるでヘビをそそのかしてるような感じだった。あれにはゾッとしたよ」

「僕が普通の言葉を喋っていなかった? だけど……僕、気がつかなかった。自分が話せるってことさえ知らないのに、どうしてそんな言葉が話せるんだろう……」


 ロンが首を振るった。

 サラザール・スリザリンがパーセルマウスで有名。そして、ハリーもパーセルマウスだった。そのことが、今このタイミングで学校中が知ってしまうのは、とても具合が悪い。


「あのヘビが、ジャスティンの首を食いちぎるのを止めたのに、一体何が悪いのか教えてくれないか。ジャスティンが、『首無し狩り』に参加する羽目にならずに済んだんだよ。どういうやり方で止めたかなんて、問題になるの?」

「問題になるのよ」


 ハーマイオニーが、掠れ声で囁く。彼女も、ハリーがパーセルマウスだという事実に、とてもショックを受けているようだった。


「どうしてかというと、サラザール・スリザリンは、ヘビと話ができることで有名だからなの。だからスリザリン寮のシンボルがヘビなのよ」


 ハーマイオニーの言葉に、ハリーがぽかんとする。


「そうなんだ。今度は学校中が君のことを、スリザリンの曾々々々孫だとか何とか言い出すだろうな……」

「だけど、僕は違う」


 ハリーも漸く事態を把握してきたようで、か細い声を出す。


「それは証明しにくいことね。スリザリンは千年ほど前に生きていたんだから、あなただという可能性もありうるのよ」



 降り出した雪の勢いが増し、翌日には激しく吹雪いていた。そのため、学期最後の薬草学の授業が休講になった。

 スプラウトが、マンドレイクに靴下やマフラーを纏わせる作業をしなければならなかったのである。それは、ミセス・ノリスや、コリンを蘇生させるために特に重要な作業だった。

 今、スプラウトはマンドレイクを枯らせることなく、一刻も早く育てなければならない。

 サクラ達4人は、談話室の暖炉のそばを陣取って過ごしていた。

 今では、グリフィンドールの生徒でさえ、ほとんどがハリーによそよそしくなってしまった。

 サクラとロンが魔法チェスをして、それをハーマイオニーが眺めている。

 ゲームを始めて早々に、ロンにキングを詰められてしまったのだった。


「ああ、また負けちゃった」

「――ハリー、お願いよ」


 ゲームに一区切りつき、ハーマイオニーがハリーを振り返る。

 ハリーはずっと機嫌が悪かった。昨日のことが気になって仕方ないのだろう。

 サクラもそんなハリーを気にして、ゲームに集中出来なかった。だからあっさりとロンに負けてしまったのだろう、きっと。


「そんなに気になるんだったら、こっちからジャスティンを探しに行けばいいじゃない」


 ハーマイオニーがそう言うと、ハリーは立ち上がって談話室を出ていったのだった。

 やはり、ずっと気にしていたのだろう。


「もしかして……」


 ハリーの背を見送った後、サクラが声をひそめた。


「ハリーがパーセルマウスだったんなら、ハリーがスリザリンの継承者だって思われちゃうかな」

「もしかしなくてもだよ」


 チェスの駒を片付けながら、ロンが述べる。


「じゃあ、『秘密の部屋』へはパーセルタングが必要とか」

「スリザリンの継承者にしか開けられないのなら、その可能性はあるわね」

「もちろん、わたし達はハリーを信じてるよね……でも」


 信じているが、スリザリンの継承者である条件がハリーに当てはまっていってしまうのだった。


「ハリーが無意識にやってるんだとしたら」

「マルフォイに吐かせれば、ハリーの無実は証明されるよ」


 悲観的なサクラに対し、ロンが楽観的に言う。


「マルフォイが、自分がスリザリンの継承者だということを話せば、ハリーの疑いは晴れるわ」


 サクラにとって、ドラコがスリザリンの継承者であってほしくないが、ドラコがそうでないとなると、やはりハリーの可能性が高くなってしまう。


――どっちもスリザリンの継承者であってほしくない。でもあたし、なんでこんなにマルフォイくんのことが気になるんだろう。


 ドラコは純血主義でマグルを「穢れた血」と罵る。

 サクラは実際に、ハーマイオニーへ「生まれ損ないの穢れた血」と吐き捨てるドラコをこの目で見たし、はっきりと聞いた。

 けれども、彼は見ず知らずの自分に本を取ってくれたし、仲の良くないグリフィンドールの自分に道案内をしてくれた。


――それに、怖くて動けなかったあたしを、引っ張って助けてくれた。


 嫌いで見下す存在に、ここまでしてくれるだろうか。

 もうひとつ気がかりなのが、ドラコとよく目が合うこと。

 何故、何度も彼と目が合うのか。ただの偶然か、それとも勘違いなのだろうか。



 ハリーが談話室を出てジャスティンを探しに向かった後に、事件が起きた。

 ジャスティンとほとんど首なしニックが、何者かに襲われたのだった。

 ジャスティンはミセス・ノリスやコリンのように石にされ、ニックは黒く煤けて動かなくなっていたらしい。

 そして、その場にハリーがいたのだった。

 ハリーは、たまたま出くわしたと言っていたが、学校中は恐怖に慄く。ゴーストであるニックにもあのようなことをするなんて、どんな恐ろしい力なのか。

 予定を変更してクリスマス休暇に帰宅しようとする生徒達が、一気に増えたのだった。

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