秘密の部屋

決闘クラブ

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 その日の夜8時に、サクラ達は大広間へと向かった。この決闘クラブにはほとんどの生徒達が集まっているようで、とても賑やかで混み合っている。

 食事用の長いテーブルはなくなっていて、一方の壁に沿って金色に輝く舞台が設置してあった。天井は光沢のある黒色で、大広間は数え切れないほどの蝋燭が漂って照らしている。

 4人は人垣を掻き分けながら奥へと進んだ。

 サクラは、何となしに辺りを見回す。


――やっぱりほとんどの生徒がいるな……。


 そのとき、ある人物を見つける。彼を探していた訳ではないのに、見つけてしまったのだった。

 ドラコは、いつものように腰巾着ふたりと共にいた。その彼が、何故だかこちらに気づいて目が合ってしまう。

 驚きすぎて、サクラは弾かれたように目を逸らした。


「どうしたの?」


 突然肩を震わせたような挙動になってしまったサクラ。

 サクラは、慌てて首を横に振るったのだった。


「何でもないっ。それにしても、この『決闘クラブ』って誰が教えてくれるのかな」

「誰かが言ってたけど、フリットウィック先生って若いとき、決闘チャンピオンだったんですって。多分彼だわ」


――フリットウィック先生だったら、分かりやく楽しく教えてくれそう。


 呪文学の教師であるフリットウィックは、生徒からの人気が高い。彼の教え方は優しく分かりやすく、それによく出来た生徒にはご褒美やお菓子をくれるからである。


「誰だっていいよ。あいつでなければ……」


 そのままハリーの声がうめき声へと変わった。

 4人の視界に「あいつ」が飛び込んできたのである。

 ギルデロイ・ロックハートが、優雅な振る舞いで金色の舞台に上がってきた。華やかに輝く深紫のローブをはためかせ、後ろには黒装束のスネイプを従えていた。

 生徒全員が自分を称えていると思い込んでいるロックハートはこちらへ手を振り、「静粛に」と述べる。


「皆さん、集まって。さあ、集まって。私がよく見えますか? 私の声が聞こえますか? 結構、結構!」


 一息置き、ロックハートが声高々に演説を始めた。


「ダンブルドア校長先生から、この小さな決闘クラブを始めるお許しをいただきました。私自身が、数え切れないほどの経験をしてきたように、自らを護る必要が生じた万一の場合に備えて、皆さんをしっかりと鍛え上げるためです――詳しくは、私の著書を読んでください。では、助手のスネイプ先生をご紹介しましょう」


 ロックハートとは対照的に、スネイプは闇のような存在である。


「スネイプ先生が仰るには、決闘クラブについてほんの少しご存知らしい。訓練を始めるにあたり、短い模範演技をするのに、勇敢にも、手伝ってくださるというご了承をいただきました」


 そして、自分と手合わせしても、魔法薬の先生はちゃんと存在するから心配するな、と生徒達の曖昧な笑いを誘う。


「相討ちで、両方やられっちまえばいいと思わないか?」


 ロンの囁き声が聞こえた。

 スネイプの口元は、ロックハートの不愉快な言葉により歪んだ。

 明らかに機嫌の悪いスネイプだが、ロックハートは気付く素振りもなく進行する。

 まず、ロックハートとスネイプが向かい合って一礼をした。

 ロックハートは、腕を大袈裟に振り上げて複雑に杖を振って胸の前に持っていってから礼をするという、いつものような大仰な振る舞いを見せる。

 対してスネイプの礼は、ただ顎を僅かに引いただけだった。

 そしてふたりは、杖を剣のように構えて互いを見据える。


「ご覧のように、作法に従って杖を構えます」


――なるほど。魔法使いの決闘にも、作法というものがあるのか。


「3つ数えて、最初の術をかけます。もちろん、どちらも相手を殺すつもりはありません」

「僕にはそうは思えないけど」


 ハリーが呟く。

 確かに、スネイプのロックハートを見る表情を見れば、サクラもハリーと同感である。

 ロックハートがゆっくりと3つ数え、ふたりは杖を高く振り上げた。


「エクスぺリアームス」


 スネイプの暗く低い声が呪文を紡ぐ。

 杖から赤い閃光が迸り、ロックハートの胸を突いた。

 ロックハートが勢いよく吹っ飛び、後ろの壁に激突。そのまま壁伝いに滑り落ちていった。

 ドラコやスリザリン生から歓声が上がる。ハーマイオニーは両手で顔を覆った。爪先立ちでぴょこぴょこと跳ねながら、指の間からロックハートを窺う。


「先生、大丈夫かしら?」


――ハーマイオニー、すごく可愛いなあ。


「知るもんか!」


 微笑ましく思ってハーマイオニーを見たが、ハリーとロンがそう吐き捨てるように言った。


「さあ、みんな分かったでしょうね!」


 ロックハートが、足元が覚束無い様子で舞台へ上ってくる。被っていた帽子はどこかへ吹っ飛び、セットしてあった髪はぼさぼさになっていた。


「あれが『武装解除の術』です――ご覧の通り、私は杖を失った訳です……ああ、ミス・ブラウン、ありがとう」


 ロックハートへ杖を手渡したラベンダー。隣のパーバティと嬉しそうにはしゃいだ。


「スネイプ先生、確かに生徒にあの術を見せようとしたのは、素晴らしいお考えです」


――まあ、殺すつもりのない決闘で「武装解除の術」は無難だよね。スネイプ先生、無難な考えをしたのか。


「……しかし、遠慮なく一言申し上げれば、先生が何をなさろうとしたかが、あまりにも見え透いていましたね。それを止めようと思えば、いとも簡単に止められたでしょう……しかし、生徒に見せた方が、教育的によいと思いましてね」


――んん? 何言ってんの?


 一言申し上げれば、何をなさろうとしていたか見え透いているのは当たり前なのではないだろうか。

 サクラは、自分の訳し方を間違えただろうかと心の中で首を傾げたのだった。


――もしかして、今までロックハート先生がよく意味分かんないことを言っていたのは、あたしの訳し方が間違っていたのかな。


 けれども、周りの反応から察するに、少なくとも彼が妙な言動をしているということは間違っていないのだろう。


「模範演技はこれで十分!」


 ロックハートは、漸くスネイプのただならぬオーラを感じ取ったのだろう。

 スネイプの殺気を向けられ、これ以上は手合わせ出来ないと判断したようである。


「これからみなさんのところへ下りていって、ふたりずつ組にします。スネイプ先生、お手伝い願えますか」


 ロックハートとスネイプが生徒達の間を行き、2人組を作っていく。

 スネイプが、最初にハリーとロンの元へやってきて述べる。


「どうやら、名コンビも別れのときが来たようだな」


――確かにふたりは名コンビだね。


 スネイプの言葉に、サクラは心の中で笑ってしまった。


「ウィーズリー。君はフィネガンと組みたまえ。ポッターは――」


 ハリーがこちらへ寄ってきた。ロンが他の人と組むなら、ハリーはサクラかハーマイオニーのどちらかと組めばいいだろう。

 しかし、スネイプは口元を歪めて冷たい笑みを浮かべた。


「そうはいかん。マルフォイ、来たまえ。かの有名なポッターを、お前がどう捌くのか拝見しよう」


 ドラコがこちらへやってきたが、なるべく見ないように心がけた。


「それから、ミス・クジョウ。ミス・パーキンソンとだ。それに、ミス・グレンジャー。ミス・ブルストロードと組みたまえ」


――まさか、パーキンソンさんとだとは……。


 サクラが呆然として突っ立っていると、トラウマのパンジー・パーキンソンが現れた。

 こちらを睨む黒髪のおかっぱ少女を見ると、一気にやるせなくなる。


「サクラ、私、いいこと考えたわ」


 そこで、ハーマイオニーがこっそり耳打ちをしてきた。


「え?」

「彼女の髪の毛を取ってきてちょうだい」


 一瞬何のことか分からなかったが、サクラは理解することが出来た。


――でも、どうやって?


「相手と向き合って! そして礼!」


 ロックハートの声で我に返り、慌ててパンジーへ頭を下げた。

 日本人特有の癖のためか、随分深いお辞儀をしてしまった。しかし、パンジーの方は頭を下げたのか下げていないのか分からなかった。


――しっかりしなきゃ。えっと、ここはスネイプ先生みたいに「武装解除の術」が無難だと思うけど。でも、髪の毛をもらうためには……。


 しかし、パンジーは性格の悪い女子と考えていい。そんな彼女がここで無難な術を出してくるだろうか。


「杖を構えて。私が3つ数えたら、相手の武器を取り上げる術をかけなさい――武器を取り上げるだけですよ。皆さんが事故を起こすのは嫌ですからね」


 ロックハートがゆっくりと数える。

 しかし、数え終わる前にパンジーの口が開いた。


「エンゴージオ!」

「プロテゴ」


 パンジーが肥大呪文を繰り出してきたので、サクラはそれを盾の呪文で防いだ。

 サクラが防御出来ると思っていなかったためか、パンジーはびっくりして目を見開く。


――よかった、ちゃんと出来た。


 ハーマイオニーとの特訓の成果が出たので、サクラはほっとしたのだった。


――じゃあ、さっさと終わらせて髪の毛いただいちゃおう。


「ペトリフィカス・トタルス」


 全身金縛り術を掛けると、パンジーはばったりと床に倒れた。サクラは彼女に駆け寄って膝をつく。

 パンジーは、視線だけ動かして睨みつけてきた。


「痛かった? ごめんなさい。あのね、あなたがわたしにぶつかってきて花を踏んだのはまだ赦せないの。でも、これでチャラにしてあげてもいいよ。チャラって英語でなんて言うんだろ」


 「チャラ」だけそのまま言い、最後の言葉も日本語で呟く。


「まあ、いいや。じゃあ、もらうね」


 パンジーの髪の毛を数本掴み、引っこ抜いた。


「やめなさい! ストップ!」


 大広間は悲惨な状況になっていた。周りを見回すと、近くでハリーが、足を軽快に動かしてステップを踏んでいる。


「フィニート・インカンターテム」


 スネイプが呪文を唱えるとハリーの足が止まり、そして何故か笑い転げていたドラコも止まった。

 ロンを見ると、顔面蒼白でその腕にシェーマスを抱きかかえている。手には折れた杖を持っていて、悲痛な声で謝っていた。

 そして、ハーマイオニーはなんと、ミリセント・ブルストロードにヘッドロックをかけられていた。ミリセントは大柄な女子で、そんな彼女に首を絞められているハーマイオニーは、苦痛に表情を歪めている。


「ハーマイオニー!」


 サクラはパンジーの髪の毛をポケットに入れ、ハリーとほぼ同時にハーマイオニーへと駆け出した。図体の大きいミリセントを、ハリーとやっとの思いでハーマイオニーから引き剥がす。

 ハーマイオニーとミリセントのものであろう杖は、ふたつとも床に落ちているので、術の掛け合いから肉弾戦へと移行してしまったのだろう。

 ロックハートは大広間を歩き回り、生徒達の様子を見て回った。

 緑がかった煙が立ち込める大広間。失神している生徒がいれば、鼻血を吹き出す生徒もいる。


「むしろ、非友好的な術の防ぎ方をお教えする方がいいようですね」


 ひどい有様に、ロックハートは大広間の中心で立ち尽くしたのだった。

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