秘密の部屋

騙されやすい鈍い教師

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「だけど、一体何者かしら」


 その夜、サクラ達は談話室で、パーシーから離れた場所を選んで座った。

 夕方のパーシーのことで、未だに機嫌が悪いロン。呪文学の宿題の羊皮紙に、インクのしみをいくつもつけていた。

 それからしみを消そうと杖に手を伸ばすと、火を吹き出して羊皮紙を燃やしてしまう。頭にきたロンは、「標準呪文集・2学年用」を勢いよく閉じて宿題をするのをやめてしまった。

 すると、ハーマイオニーもそれに倣うようにして教科書を閉じて述べたのだった。


「出来損ないのスクイブやマグル出身をホグワーツから追い出したいと願っているのは誰?」

「それでは考えてみましょう」


 ロンがわざとらしく頭を捻って見せる。


「我々の知っている人の中で、マグル生まれはクズだ、と思っている人物は誰でしょう」


――まさか、いや……。


 サクラも教科書から顔を上げた。


「もしかして、あなた、マルフォイのことを言ってるの……?」


 ハーマイオニーも驚いた顔を向ける。


「モチのロンさ!」


 自分の中で勝手な和訳をしたくなるほど、ロンが明るくそしておどけて言った。


「あいつが言ったこと聞いただろ? 『次はお前達だぞ、穢れた血め!』って。しっかりしろよ。あいつの腐ったねずみ顔を見ただけで、あいつだって分かりそうなもんだろ』」

「マルフォイが、スリザリンの継承者?」

「でも、スリザリンにはもっと他に、マグルのことが嫌いな人、いっぱいいるでしょ?」


 ドラコのことをかばいきれるほど、彼のことを知っている訳ではない。それでも、憶測だけで決めつけてはいけない。


「あいつの家族を見てくれよ」


 ハリーが教科書を閉じた。


「あの家系は全員スリザリン出身だ。あいつ、いつもそれを自慢してる。あいつならスリザリンの末裔だっておかしくはない。あいつの父親もどこから見ても悪玉だよ」

「あいつらなら、何世紀も『秘密の部屋』の鍵を預かっていたかもしれない。親から子へ代々伝えて」

「まさか……」

「そうね、その可能性はあると思うわ」


――でも、継承者って別に、血の繋がりは関係ないでしょ?


「でも、どうやって証明する?」

「方法がないことはないわ」


 ハーマイオニーが、声を落として述べる。


「もちろん、難しいの。それに危険だわ。とっても。学校の規則をざっと50は破ることになるわね」


 向こうにいるパーシーに注意しながらそう言った。


「あと1ヶ月ぐらいして、もし君が説明してもいいというお気持ちにおなりになったら、そのときは僕達にご連絡くださいませ、だ」


 ハーマイオニーの言い方が気に食わず、ロンがイライラする。


「承知しました、よ」


 そんなロンに、ハーマイオニーも冷たく言い返した。


「とにかく、何をやらなければならないかというとね、私達がスリザリンの談話室に入り込んで、マルフォイに正体を気づかれずに、いくつかの質問をするということなのよ」

「だけど、不可能だよ」

「いいえ、そんなことはないわ」


 否定するハリーと笑うロンに、ハーマイオニーがきっぱりとして言い渡す。


「ポリジュース薬が少し必要なだけよ」

「なに、それ」


 ハリーとロンがぽかんとして訊く。

 サクラにとっては、それは聞いたことがある名前である。


「それって、この前魔法薬の授業でスネイプ先生が話してたっけ?」

「そうよ」

「魔法薬の授業に、僕達がスネイプの話を聞いてると思ってるの? もっとましなことをやってるよ」


 うんざりして文句を言うロン。

 そんな彼に、ハーマイオニーが熱っぽく説明した。


「自分以外の誰かに変身できる薬なの。考えてもみてよ! 私達4人で、スリザリンの誰か4人に変身するの。誰も私達の正体を知らない。マルフォイは多分、何でも話してくれるわ。今頃、スリザリンの談話室で、マルフォイがその自慢話の真っ最中かもしれない。それさえ聞ければ」


――完全にスリザリンの継承者がマルフォイくんだと思っている……。


「そのポリジュース何とかって、少し危なっかしいな」


 ロンが眉を顰めた。


「もし元に戻れなくて、永遠にスリザリンの誰か4人の姿のままだったらどうする?」

「しばらくすると、効き目は切れるの」


 心配するところはそこじゃない、とでも言いたげに、ハーマイオニーがもどかしげに手を振って説明する。


「むしろ、材料を手に入れるのがとっても難しいの。『最も強力な魔法薬』という本にそれが書いてあるって、スネイプがそう言ってたわ。その本、きっと図書館の禁書の棚にあるはずだわ」

「だったら、材料もそうだけどその本を借りてくることも、とても難しそうだね」


 禁書の棚にある本を借りるには、一手間がかかる。教師のサイン入りの許可証をもらわなくてはならなかった。


「それに、薬を作るつもりがなくても、そんな本を読みたいって言ったら、変だと思われるだろう?」

「でも、理論的な興味だけなんだって思い込ませれば、もしかしたら上手くいくかも……」

「なーに言ってるんだか。先生だって、そんなに甘くないぜ」


 ハーマイオニーはどうか分からないが、サクラとハリーとロンの脳裏にある人物が思い浮かぶ。


「――でも……騙されるとしたら、よっぽど鈍い先生だな」



 次の闇の魔術に対する防衛術の授業では、ロックハートを上機嫌にさせないといけなかった。そのために我慢をしてもらうのは、ハリーである。

 ロックハートは、ピクシー小妖精の事件以来、授業に生き物を使うことはしなくなった。その代わりに、教科書として使っている自分の著書を読み上げ、ときにその場面を再現してみせた。

 大抵そのときの相手役はハリーで、毎回恥ずかしく惨めで悲惨な目に遭わされている。

 今日は、ある目的のためにハリーは、今回とてその相手役を懸命に努めなければならない。

 ロックハートは、ハリーを生徒達の前まで引っ張ってきて、狼男をやらせたのだった。


「ハリー、大きく吼えて――そう、そう――そしてですね、信じられないかもしれないが、私は飛びかかった――こんなふうに――相手を床に叩きつけた――こうして――片手で何とか押さえつけ――もう一方の手で杖を喉元に突きつけ――それから残った力を振り絞って非常に複雑な『異形戻しの術』をかけた――」


――あのときロックハートが言っていた、ミセス・ノリスを救うぴったりの呪文って、これだったのかな。それにしても、ハリーがかわいそすぎて、目も当てられない。


 要約すると、ロックハートが狼男を元の人間に戻し、狼男の被害に怯えていた村人達に感謝され、永久に英雄として称えられるようになった、という内容だった。

 やっと終業のベルが鳴り、早く教室から出たかったが、サクラ達はそのまま待機していなければならない。

 ロックハートが、ワガワガの狼男が自分に敗北したことについての詩を書いてくるように言った。そして、一番よく書けた生徒には、サイン入りの『私はマジックだ!』を進呈すると宣う。

 やっと解放されたハリーが、一番後ろに座っているサクラ達の方へ戻ってきた。


「用意は?」

「みんないなくなるまで待つのよ」


 生徒達が教室から出ていき、4人だけになった。


「行きましょう」


 ハーマイオニーが立ち上がり、サクラとハリーとロンがその後を追う。


「あの、ロックハート先生」


 緊張しながら、ハーマイオニーがロックハートに声をかけた。


「私、あの……図書館からこの本を借りたいんです。参考に読むだけです」

 

「最も強力な魔法薬」と書かれたメモを差し出す。


「問題は、これが『禁書』の棚にあって、それで、どなたか先生にサインを頂かないといけないんです……先生の『グールお化けとのクールな散策』に出てくる、ゆっくり効く毒薬を理解するのに、きっと役に立つと思います……」


 ハーマイオニーが、予め考えておいただろう言葉を伝えた。

 するとロックハートは、己の著書を話に出したハーマイオニーへ、白い歯を見せた。


「ああ、『グールお化けとのクールな散策』ね! 私の一番のお気に入りの本と言えるかもしれない。面白かったかい?」

「はい、先生!」


 頬を染めて頷くハーマイオニーが、とても可愛らしく見えたのだった。


「本当に素晴らしいです。先生が最後のグールを、茶こしで引っ掛けるやり方なんて……」


 ハーマイオニーが、本の内容の素晴らしいところや感想などを述べる。

 彼女が嬉しそうなのは何よりだが、サクラもハリーもロンも所在なく突っ立っている羽目になってしまった。


「――そうだね、学年の最優秀生をちょっと応援してあげても、誰も文句は言わないでしょう」


 ロックハートは、渡されたメモにサインをしてハーマイオニーに返した。

 ハーマイオニーは、名残惜しそうにメモを丸めている間、ロックハートが後ろのハリーをロックオンする。


「で、ハリー。明日はシーズン最初のクィディッチ試合だね? グリフィンドール対スリザリン。そうでしょう?」


 何と、彼は昔シーカーだったようだった。しかし、闇の魔術根絶の生涯を選んだという。それでも、自分より能力の劣る選手には喜んで経験を伝授すると宣った。

 ハリーは曖昧な返答をし、そして4人は教室を後にした。


「信じられないよ」


 急ぎ足で廊下を進みながら、ハリーが呟く。


「僕達が何の本を借りるか、見もしなかったよ」

「そりゃあいつ、能無しだもん。どうでもいいけど。僕達は欲しいものを手に入れたんだし」

「能無しなんかじゃないわ!」

「君が学年の最優秀の生徒だって、あいつがそう言ったからね……」


 司書のマダム・ピンズの元へ行き、ハーマイオニーがロックハートのサインが書かれたメモを差し出した。

 彼女は怒りっぽいので、サクラはあまり好きにはなれなかった。


「『最も強力な魔法薬』?」


 マダム・ピンズはメモにあるタイトルを、疑わしげに眺めながら受け取ろうとする。しかし、ハーマイオニーはそれを離さなかった。


「これ、私が持っていてもいいでしょうか」


 ハーマイオニーが少し興奮して頼むが、ロンが「やめろよ」とそれをむしり取ってマダム・ピンズに渡したのだった。


「サインならまたもらってきてあげるよ。ロックハートときたら、サインをする間だけ動かないでじっとしている物なら、何にでもサインするよ」


 ハリーが、慰めるようにハーマイオニーへ言う。

 マダム・ピンズが、偽物ではないだろうかとメモを明りへ透かしてみたりしたが、無事承諾してもらえた。

 彼女が『禁書』の棚へと赴き、大きくて古ぼけた本を持ってきてそれをハーマイオニーがカバンに入れる。

 4人は、至って普通に自然に見えるようにしながら図書館から出た。



 サクラ達が「最も強力な薬」の本を携えて訪れたのは、「嘆きのマートル」のいる女子トイレである。

 マートルは泣き喚いていたが、こちらは彼女を無視することにした。そうして、マートルもこちらを無視してくれるようになる。

 ハーマイオニーが「最も強力な魔法薬」を開き、ポリジュース薬の書かれたページを探す。


「あったわ」


 そのページには、他人へ変身していく途中の挿絵が描かれており、その表情がとても痛々しいものだった。


「こんな複雑な魔法薬は、初めてお目にかかるわ」

「……クサカゲロウ、ヒル、満月草。これなら、生徒用の材料棚にあるんじゃない?」

「ええ、そうね」


 そこの棚にあるものなら、自分で勝手に取りに行けるのである。


「ああ、でも、見て。二角獣バイコーンの角の粉末……これ、どこで手に入れたらいいか分からないわ」

「毒ツルヘビの皮の千切りも難しいよね」

「それに、当然だけど、変身したい相手の一部」

「何だって? どういう意味? 変身したい相手の一部って……僕、クラッブの足の爪なんか、絶対飲まないからね」

「でも、それはまだ心配する必要はないわ。最後に入れればいいんだから」


 ロンが絶句をした。

 変身したい相手の一部を入れる必要が分からなくもないが、サクラも出来ればそんなものは絶対に飲みたくない。

 ハリーも、別のことを心配しだした。


「ねえ、どんなに色々盗まなきゃならないか、分かってる? 毒ツルヘビの皮の千切りなんて、生徒用の棚には絶対にあるはずはいし。どうするの? スネイプの個人用の保管倉庫に盗みに入るの? 上手くいかないような気がする……」


 すると、ハーマイオニーが本を閉じたのだった。黴臭いにおいが一瞬濃くなる。


「そう。ふたりとも怖気づいてやめるって言うなら、結構よ――私は規則を破りたくはない。分かってるでしょう? だけど、マグル生まれの者を脅迫するなんて、ややこしい魔法薬を密造することより、ずーっと悪いことだと思うの。でも、ふたり共マルフォイがやってるのかどうか知りたくないって言うんなら、これからまっすぐマダム・ピンズのところに行って、この本をお返ししてくるわ」


 ハーマイオニーは、ドラコに直接「生まれ損ないの穢れた血」と言われたことがとても傷ついたし、マグル排除の思想に怒りを感じているのだろう。

 頬を紅潮させて述べるハーマイオニーを見て、サクラも決心する。


――スリザリンの継承者が本当にマルフォイくんなのか、はっきりさせたい。


「君が僕達に、規則を敗れって説教する日が来るとは思わなかったぜ」

「ロン。わたしも、マグルを脅迫するやり方とか、スリザリンの考え方とかが赦せないの。でも、きっとわたしとハーマイオニーだけじゃ上手くいないと思う。ふたりの協力が必要なの」


 真剣にハリーとロンへ訴えると、ふたりは頷いてくれたのだった。


「分かった。やるよ。でも、足の爪だけは勘弁してくれ。いいかい?」


 ロンの念押しには、苦笑いをしてしまう。

 ハーマイオニーも、気を取り直して再びページを開いた。


「でも、造るにはどれくらいかかるの?」


 ハリーがハーマイオニーに尋ねる。


「そうね。満月草は満月のときに摘まなきゃならないし、クサカゲロウは21日間煎じる必要があるから……材料が全部手に入れば、大体1ヶ月で出来上がると思うわ」

「1ヶ月も? マルフォイはその間に学校中のマグル生まれの半分を襲っちゃうよ!」


――だから、まだマルフォイくんだって決まったわけじゃないのに。


 ハーマイオニーが睨みつけたので、ロンは慌てて付け足したのだった。


「でも、今のところ、それがベストな計画だな。うん、全速前進だ」

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