秘密の部屋

「秘密の部屋」の真偽

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 それからというもの、フィルチは出来るだけあの3階の廊下に居座って見張っていた。

 壁を「ミセス・ゴシゴシの魔法万能汚れ落とし」でこすっていたようだったが、文字は消えずに残っていたのだった。

 彼は、見張りをしていないときも廊下ですれ違う生徒達に「音を立てて息をしていた」とか「嬉しそうだった」などととんでもない理由で処罰しようとして、相当気が立っている。

 ジニーは、猫好きなようで今回のミセス・ノリスに、とても心を痛めていた。

 ロンが慰めようと、ジニーはミセス・ノリスの本性を知らないからだ、とかあんなのはいない方がいいなどと言い、ジニーを余計に悲しませてしまう。

 ハーマイオニーはというと、今まで以上に一緒に図書館へ通った。どうしても「秘密の部屋」が何なのか知りたいからである。


「ハリーが聞こえた声と関係があるんだよね? だって、その声を追っていったら、『秘密の部屋は開かれた』って書いてあったし」

「ええ、そうね。ハリーだけしか聞こえない声も気になるけど、このホグワーツ内で誰も知らない部屋があるなんて……」


 図書館で関係のありそうな書物を読み漁っても、一向に「秘密の部屋」について書いてある本が見つからない。

 ハーマイオニーは、分からないことがあるとそのままにはしておけない性分で、しかしこれだけ調べてもなかなか答えが出てこないのだから、最近は少し機嫌が悪い。

 ハリーとロンが何をしているのかと訊いてきても、彼女の中で答えが出ていないからまともな返答をしなかった。

 完璧に答えられる自信がないから、人にも言えないのだろう。

 ハーマイオニーがひとりで図書館に赴き、ハリーとロンと一緒に談話室で宿題をしているときにサクラは、こっそりとふたりに教えてあげたのだった。


「実は、『秘密の部屋』のことを調べているの」

「ああ、そうか」

「僕達が必死に宿題をしているというのに、ハーマイオニーにはそんな時間があるのか」

「でも、ハーマイオニーは何で何も言ってくれないんだろう」

「自分でも答えを見つけられずにいるからじゃないかな」


 そのとき、寮の階段からフレッジョとリーが下りてきた。


「あ、ふたりなら何か知ってるんじゃない? 『秘密の部屋』について」

「どうかな」

「ハーイ、フレッド、ジョージ、リー。訊きたいことがあるんだけど、ちょっといいかな」

「やあ、サクラ」

「どうしたんだ?」

「3人は何か知らないかな。『秘密の部屋』のこと」

「ああ、そのことか」


 3人が顔を見合わせる。その表情は、決して何かを知っているというものではなさそうだった。


「もし俺らがそれについて知っていたら、もうそこに行っていて調べ尽くしているさ」

「でも、俺達は君達にそれについて何も言えることがない」

「つまり、何も知らないってこと」

「そっか。3人が知らないのなら、『秘密の部屋』はないのかな」

「でも、調べる価値はあるみたいだけどな」


 フレッドが何かを少し掲げてウィンクをする。それは折りたたんだ羊皮紙のように見える。


「そっか。分かった。ありがとう」


 3人が去ってからサクラは、ハリーとロンに向かって言う。


「3人が知らないなら、『秘密の部屋』は相当秘密なんだね。なおさら気になるな」

「気にはなるけど、僕達は今この宿題を終わらせなきゃならないんだ」


 ロンが憎らしげに、羊皮紙を睨みつけた。


「それもそうだね」


 サクラは、羽ペンを握り直したのだった。



 ある水曜日の日。

 魔法薬の授業の後で、ハリーがスネイプに居残りをさせられた。机に貼り付いたフジツボを落とすように言われたのである。

 手伝ってあげたいが、これはハリーだけに言われたことなので、ここはさっさと教室から出た方が賢明である。

 大広間で昼食を食べてから、昼休みもまた図書館へ向かった。

 早く調べたいハーマイオニーを、半ば追いかけるようにしてご飯を掻き込んで図書館へ行ったのだった。

 図書館の奥のテーブルにつき、ロンは魔法史の宿題を取り出した。ハーマイオニーはさっさと鞄を机に置いて本棚の方へ姿をくらませる。


「あとどれくらいなの?」

「もうちょっとで終わりそう」


 魔法史の宿題は「中世におけるヨーロッパ魔法使い会議」について調べて1mの長さの作文を書くことだった。

 サクラはもう宿題のノルマを終わらせていたので、ハーマイオニーと同じく参考になりそうな書物を探しに出かけたのだった。

 サクラにとって、どこをどのように探したらいいのか分からず、結局何の収穫もないまま戻った。その頃にはハリーも来ていて、そしてハーマイオニーとロンが喧嘩をしていたのだった。

 ハリーに訳を訊くと、ロンが宿題を見せてくれと頼み、それをハーマイオニーが断ったからだと言った。

 本来宿題は自分でやり遂げるものであり、その上提出の猶予はあった。それにも関わらず、だらだらとやっていたロンが悪い、というのがハーマイオニーの言い分なんだろう。

 少しくらい見せてくれてもいいではないかと言うロンは、サクラに少し見せてもらっていたが、それでも終わらすことが出来なかったのである。

 ロンは結局、魔法史の宿題を終わらせることは出来ないまま授業に向かったのだった。

 魔法史の担当は、ビンズという唯一のゴーストの教師だった。

 ある日、立ち上がって授業に行こうとしたとき、生身の身体を職員室に忘れていってしまったらしい。こうして自分が死んでしまったことが気づかないまま、暫く身体を置き忘れていたのだった。

 魔法史は、一番退屈で眠くなる授業である。ビンスが、頭に入ってこない低い調子の声で、延々と教科書を読み上げるのだった。

 生徒達は、名前や年号とかのノートをとるところだけ辛うじて目を覚まし、そしてまた眠ってしまうのである。

 今日もまた一段と退屈で眠くなる授業だった。ビンズはもう、30分も教科書を読み上げている。

 そのとき、ハーマイオニーがさっと手を挙げたのだった。

 この授業で誰かが挙手をしたのは、これで初めてである。

 ビンズも、驚いて教科書から顔を上げた。


「ミス……あー?」

「グレンジャーです。先生、『秘密の部屋』について何か教えていただけませんか」


 ハーマイオニーの発言で、生徒達の眠気が一気に覚醒する。

 サクラも、驚いて隣のハーマイオニーを見たが、確かに教師なら何か知っていそうだと思った。


「私がお教えしとるのは、魔法史です。事実を教えとるのであって、ミス・グレンジャー、神話や伝説ではないんであります」


 ビンズは小さく咳払いをして、再び教科書に目を落とす。

 しかし、ハーマイオニーは懲りずにまた手を挙げたのだった。


「ミス・グラント?」

「先生、お願いです。伝説いうのは必ず、事実に基づいているのではありませんか?」


 ビンズが目を見開いてハーマイオニーを見つめる。


「ふむ……然り、そんな風にも言えましょう。多分。しかしながらです。あなたが仰るところの伝説とはいえ、これはまことに人騒がせなものであり、荒唐無稽な話とさえ言えるものであり――」


 生徒達は、じっとビンズの方を見て言葉を聞く。

 こんなことが未だかつてないビンズは、少しまごついているようだった。


「あー、よろしい……『秘密の部屋』とは……」


 今の状況に、僅かな嬉しさもあるのだろう。ビンズは語りだしたのだった。


「皆さんも知っての通り、ホグワーツは千年以上も前――正確な年号は不明であるからにして――その当時の、最も偉大なる4人の魔女と魔法使い達によって、創設されたのであります」


 4つの寮を、創設者に因んで名付けたのである。

 ゴドリック・グリフィンドール、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクロー、サラザール・スリザリン。彼らは、マグルから遠く離れたこの地に城を築いた。

 その時代は、一般的な人間が魔法を恐れていて、魔女や魔法使いを迫害していたからである。


「数年の間、創設者達は和気藹々で、魔法力を示した若者達を探し出しては、この城に誘って教育したのであります。しかしながら、4人の間に意見の相違が出てきた」


 スリザリンが、ホグワーツには選別された生徒のみが入学を許されるべきだと考えたのである。それは、純粋な魔法族の家系にのみ、魔法教育を与えられるべきだということ。

 そして、マグルの親を持つ生徒には学ぶ資格がないとして、入学させることを嫌ったのだった。

 この問題により、スリザリンとグリフィンドールが激しく言い争い、スリザリンが学校を去ったという。


「信頼出来る歴史的資料は、ここまでしか語ってくれんのであります。しかし、こうした真摯な事実が、『秘密の部屋』という空想の伝説により、曖昧になっておる」


 それは、スリザリンが他の創設者には知られていない、隠された部屋を作ったという話があるからだった。


「その伝説によれば、スリザリンは『秘密の部屋』を封印し、この学校に彼の真の継承者が現れるときまで、何人もその部屋を開けることが出来ないようにしたという」


 その継承者のみが、『秘密の部屋』の封印を解くことが出来て、そしてその中の恐怖を解き放ち、この学校から魔法を学ぶに相応しくない者を追放する。

 生徒達は、じっとビンズを見つめて話を聞いていた。このようなことは、今まで一切なかった。

 この珍しい状況に、ビンズは僅かに戸惑いを見せる。


「もちろん、全ては戯言であります。当然ながら、そのような部屋の証を求め、最高の学識のある魔女や魔法使いが、何度もこの学校を探索したのでありますが、そのようなものは存在しなかったのであります。騙されやすい者を怖がらせる作り話であります」


 そこで、ハーマイオニーが再び挙手をする。


「『秘密の部屋の恐怖』というのは、具体的にどういうことですか?」

「何らかの怪物だと信じられており、スリザリンの継承者のみが操ることが出来るという――言っておきましょう。そんなものは存在しない」


 顔を見合わせる生徒達に、ビンズはきっぱりと言い放つ。


「『部屋』などない。従って、怪物はおらん」

「でも、先生」


 次は、シェーマス・フィネガンが発言した。

 夏休み前に、サクラに告白してきた男子である。新学期が始まっても、やはりあまり関わりがなく、まだまともに話してもいなかった。


「もし『部屋』が、スリザリンの継承者にだけ開けられるなら他の誰も、それを見つけることは出来ないんじゃないでしょうか」

「ナンセンス。ミスター・オッフラハーティ」


――誰?


「歴代のホグワーツ校長、女校長方が、何も発見しなかったのだからして――」

「でも、ビンズ先生」


 パーバティ・パチルが、ビンズの言葉を遮って発言する。

 彼女はサクラとハーマイオニーの同室の子でよく話すが、同じく同室のラベンダー・ブラウンとふたりで仲がよく、言うなればキャピキャピとしたコンビだった。だから、サクラとハーマイオニーにとって深く付き合える人達ではなかった。


「そこを開けるには、闇の魔術を使わないといけないのでは?」

「ミス・ペニーフェザー」


――だから誰。ビンズ先生は生徒の名前を覚えられないのかな。


「闇の魔術を使わないからといって、使えないということにはならない。繰り返しではありますが、もしダンブルドアのような方が――」

「でも、スリザリンと血が繋がっていないといけないのでは? だから、ダンブルドアは……」

「以上、おしまい!」


 ディーン・トーマスの言葉を最後まで聞かず、ビンズはもうたくさんだと言わんばかりに打ち切った。


「これは神話であります。部屋は存在しない! スリザリンが部屋どころか、箒置き場さえ作った形跡はないのであります。こんなバカバカしい作り話を聞かせたことを悔やんでおる。よろしければ歴史に戻ることにする。実態のある、信ずるに足る、検証出来る事実であるところの歴史に!」


 そしてすぐに、いつものように生徒達は無気力状態になったのだった。

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