秘密の部屋

疑わしきは罰せず

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 騒ぎに寄せられてやってきたフィルチ。案の定、彼に犯人扱いされた。

 松明の腕木にぶら下がる愛猫を目にした彼は、半ば発狂するように詰め寄ってくる。

 そこで数人の教師を従えて、ダンブルドアが現れた。フィルチを落ち着かせ、ダンブルドアがここから一番近い、ロックハートの部屋へと4人を招いたのだった。

 ロックハートが、磨き上げられた自分の机の上にミセス・ノリスを下ろす。


「猫を殺したのは、呪いに違いありません」


 ダンブルドアとマクゴナガルがミセス・ノリスを調べ、スネイプはその後ろで立っている。

 ロックハートはうろうろと歩き回って、いつものように大仰な言動で自分の意見を宣う。


「多分、『異形変身拷問』の呪いでしょう。何度も見たことがありますよ。私がその場に居合わせなかったのは、まことに残念。猫を救う、ぴったりの反対呪文を知っていましたのに……」


――うるさいな……。


 フィルチはというと、椅子に力なく座り込んでしゃくり上げている。

 フィルチのことはどうしても好きにはなれないが、今回ばかりは同情してしまう。


――大切にしていた猫が、こんな姿になっちゃったんだもんね。


 しかし、フィルチとその猫を心配している場合ではない。

 サクラ達は現在、奇妙な現象の犯人だと疑われているし、犯人ではないにしてもあの場の重要な証言人として、ここへ連行されたのである。

 ダンブルドアが話の分からない人物だとは思わないが、何故あの場にいたのかは、どう説明すれば良いのだろうか。


「アーガス。猫は死んでおらんよ」


 ダンブルドアが、優しく声をかけた。

 これまで、自分の活躍のおかげで未然に防ぐことの出来た事件を述べていたロックハートが黙る。


「死んでない?」


 フィルチが、顔を覆っていた指の隙間から窺う。


「それじゃ、どうしてこんなに……こんなに固まって、冷たくなっている?」

「石になっただけじゃ」


 ダンブルドアの発言に、「やっぱり! 私もそう思いました!」とロックハート。


「ただし、どうしてそうなったのか、わしには答えられん」

「あいつに聞いてくれ!」


 フィルチが、ハリーに向かって叫ぶ。


「2年生がこんなことを出来るはずがない」


 ダンブルドアが穏やかに、そしてきっぱりと否定した。

 それでも、フィルチは怒りと悲しみで我を忘れているように喚く。


「あいつが壁に書いた文字を見たでしょう! あいつは見たんだ……私の事務室で――あいつは知ってるんだ。私が…‥私が出来損ないの『スクイブ』だって知ってるんだ!」


 顔を歪ませて叫ぶフィルチ。

 サクラにとって、『スクイブ』は初めて聞いた言葉だった。


「違います! 僕、ミセス・ノリスに指一本触れていません!」


 ハリーが必死に訴えるが、フィルチの怒りは収まらない。


「それに僕、スクイブが何なのかも知りません」

「バカな! あいつはクイックスペルから来た手紙を見やがった!」


 どうやらフィルチは、ハリーにクイックスペルから来たという手紙を見られ、自分が『スクイブ』だということを知られてしまったと思っているのだろう。


「――校長、一言よろしいですかな」


 そこで、ほとんど部屋の影と同化していたスネイプが口を開く。


「ポッターもその仲間も、単に間が悪くその場に居合わせただけかもしれませんな」


 スネイプがサクラ達の肩を持つとは思えないので、彼の発言には期待しないでおいた。


「とはいえ、一連の疑わしい状況が存在します。大体、4人は何故3階の廊下にいたのか。何故、ハロウィーンパーティにいなかったのか」


 4人はアリバイを証明しようと、「絶命日パーティ」の説明をした。

 ハリーを誘った主催者のほとんど首なしニックも、パーティに参加していた何百人のゴーストも、サクラ達が本当にそこへいたことを証言してくれるだろう。


「それでは、その後パーティに来なかったのは何故かね。何故あそこの廊下に行ったのかね?」


 サクラ、ロン、ハーマイオニーがハリーを見た。

 3人は、ハリーを追って3階の廊下まで来たのである。しかし、あのときのハリーを、どう説明していいのか分からなかった。


「……僕達、疲れていたので、ベッドに行きたくて」

「夕食も食べずに? ゴーストのパーティで、生きた人間に相応しい食べ物が出るとは思えんがね」

「僕達、お腹が空いてなかったんです」


 ロンがそう言ったが、ハリーのお腹が鳴った。

 スネイプが意地悪な笑みを浮かべてダンブルドアの方を向いた。


「校長。ポッターが正直に話しているとは言えないですな」


 そこでスネイプが、とんでもないことを発言したのだった。

 ハリーが正直に話す気になるまで、権利の一部を取り上げるのがいいと。つまり、グリフィンドールのクィディッチチームから外すことが妥当だと述べた。

 しかし、それを否定したのがマクゴナガルだった。


「私には、この子がクィディッチをするのを止める理由が見当たりませんね。この猫は箒の柄で頭をぶたれた訳でもありません。ポッターが悪いことをしたという証拠が何一つないのですよ」


 マクゴナガルは、ハリーが自分の寮の生徒だから信じて庇ってくれているのだと思うし、それにハリーのクィディッチの実力を分かっているから、選手から外されたくないと思っているのだろう。


「疑わしきは罰せずじゃよ、セブルス」


 ダンブルドアの言葉に、フィルチが怒りで声を上げた。


「私の猫が石にされたんだ! 刑罰を受けさせなきゃ収まらん!」

「アーガス、君の猫は治してあげられますよ」


 ダンブルドアが、三日月眼鏡越しに穏やかな目を向ける。


「スプラウト先生が、最近やっとマンドレイクを手に入れられてな。十分に成長したら、すぐにでもミセス・ノリスを蘇生させる薬を作らせましょうぞ」

「私がそれをお作りいたしましょう」


 ロックハートのやけに明るい声が室内に響く。


「私は何百回作ったか分からないくらいですよ。『マンドレイク回復薬』なんて、眠ってたって作れます」

「分かっているとは思うが」


 そこで、スネイプの冷たい声がかかる。


「この学校では、私が魔法薬の教師のはずだが」


 ロックハートが固まり、室内が気まずい雰囲気になる。

 そこに、ダンブルドアが「帰ってよろしい」と言ってくれたので、サクラ達は早足でその場から出たのだった。

 上の階に上がり、4人はとりあえず誰もいない教室に入る。


「――あの声のこと、僕、みんなに話した方がよかったと思う?」


 ハリーが言うと、ロンが否定した。


「いや。誰にも聞こえない声が聞こえるのは、魔法界でも狂気の始まりだって思われてる」

「君は……僕のことを信じてくれるよね?」

「もちろん、信じてるさ」

「わたしもハリーのこと、信じてるよ。でも、ちょっとよく分からないの。ハリーにしか聞こえない声って何だろう? ハーマイオニーも、あのときあそこに何かがいるのを感じた?」

「いいえ、分からなかったわ。ハリーにしか聞こえないって、どういうことなのかしら」

「まさか、『例のあの人』ってことじゃ……」


 去年目の当たりにしたヴォルデモートの姿を思い出し、そしてホグワーツ内でサクラ達の近くで這いずり回っているところを想像した。思わず身震いをする。


「そんなことないわ。『例のあの人』は、ホグワーツには入れないはずよ」

「そうだよね……あ、そういえば、あの壁には何て書いてあったの? 『秘密の部屋は開かれた』の次は何て書いてあったの?」

「Enemies of the heir, beware.つまり、そうね、伝統や権利を受け継ぐ人の敵よ、気をつけろって意味かしら」


――『伝統や権利を受け継ぐ人の敵』か……継承者とか後継者ってことかな。てことは、『継承者の敵よ、気をつけろ』ってことかな。


「それって、どういう意味なんだろう」

「ちょっと待って。何だか思い出しそう。誰かがそんな話をしてくれたことがある……」


 ロンが思い出そうと、考えながら言う。


「ビルだったかもしれない。ホグワーツの秘密の部屋のことだ」


 ビルとは、ロンの兄である。

 ロンは、兄達からよくホグワーツのことを聞いているのだろう。


「それに、出来損ないのスクイブって何?」


 ハリーが訊いてサクラも思い出す。

 先ほどフィルチは、自分が『スクイブ』だということをハリーが知っている、とひどく怒っていた。フィルチにとって、それはよほど知られたくないことだったのだろう。

 ハリーが訊くと、ロンが笑いをかみ殺しながら答えた。


「あのね……本当はおかしいことじゃないんだけど――でも、それがフィルチだったもんで……。スクイブっていうのはね、魔法使いの家に生まれたのに、魔力を持たない人のことなんだ」


 しかし、スクイブとは滅多にいないらしい。それでも、フィルチがクイックスペル・コースで魔法の勉強をしているのなら、スクイブで間違いないようだった。


「これで色んな謎が解けた」


 ロンが満足げに述べる。


「例えば、どうして彼は生徒達をあんなに憎んでいるのか、とか。きっと妬ましいんだ」


 そのとき、どこかの時計の鐘が響いた。午前零時を示めす鐘である。


「早くベッドに行かなくちゃ。スネイプがやってきて、別なことで僕達を嵌めないうちにね」


 ハリーの言葉に頷き、サクラ達はそっと教室から出て速やかに寮へと向かった。

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