秘密の部屋

書店での出来事

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「本物の彼に会えるわ!」


 書店内に飾られた弾幕を見て、うれしそうに声を上げるハーマイオニー。

 その弾幕には、ギルデロイ・ロックハートのサイン会を知らせる内容が書かれていた。


――え、ハーマイオニー!?


 どうやら彼女は、ギルデロイ・ロックハートに憧れを持っているようだった。

 書店の外や中は、黒いマントを羽織った奥様方で溢れかえっている。4人は人垣を押し分けて店内を進み、やっとの思いで『泣き妖怪バンシーとのナウな休日』という教科書を1冊ずつ取った。

 列の中に、祖母とウィーズリー一家とハーマイオニーの両親がいるのを見つけて、そちらへ向かった。


「まあ、よかった。来たのね。もうすぐ彼に会えるわ」


 モリーが、ハリーの髪を撫でて整える。

 彼女もロックハートのファンだった。

 彼がサインを行う机の周りには、彼の大きな写真が何枚も貼られている。そのどれもが、人垣に向かってウィンクをして、そして白い歯を見せていた。


――まあ、ハンサムなのかな? あたしは別にだけど。


 本人が登場し、拍手と歓声が響く。

 ロックハートは、勿忘草色のローブを着て、ウェーブがかった髪に魔法使いの三角帽を小粋な角度で被っていた。

 カメラを持った小男が色んな角度で彼の写真を取る。その度に目の眩むようなフラッシュを焚き、紫の煙が上がる。


「そこ、どいて。日刊予言者新聞の写真だから」


 カメラの男が後ろに下がり、ロンの足を踏んだ


「それがどうしたって言うんだ……」


 そのとき、ロックハートが顔を上げた。ロンを見て、そしてハリーを見る。それから勢いよく立ち上がた。


「もしや、ハリー・ポッターでは?」


 人垣が分かれ、出来た道にロックハートが飛び込む。

 彼はハリーに近づき、腕を掴んで正面へ連れて行ってしまった。ハリーはロックハートに無理やり握手をさせられ、人々が拍手をする。そばでカメラの男が何度もフラッシュを焚いたので、頭上には雲のような煙が出来た。


「ハリー! ニッコリ笑って! 一緒に写れば、君と私とで一面大見出し記事ですよ」


 ハリーは居心地が悪そうで、唇を引きつらせた。

 やっと開放されたハリーは、こちらへ戻ってこようとする。しかし、ロックハートに腕を回されて拘束された。


「みなさん、何と記念すべき瞬間でしょう! 私がここしばらく伏せていたことを発表するのに、これほど相応しい瞬間はまたとありますまい!」


 ロックハートは何かを発表するらしく、ハリーがいることで最高の機会になったということだろう。

 ロックハートは、ハリーが自分の自伝を買うためだけにここへ訪れたのだと言い出し、そしてそれを喜んでプレゼントしようと述べた。


「もちろん、無料でね」


 ロックハートが本の束をハリーに押し付けると、ハリーがよろけた。


――ちょっとちょっと。見てれば分かるよ。この人、やばい。


 そしてロックハートは能書きを垂れてから、しばらく伏せていたということを発表したのだった。


「みなさん、ここに、大いなる喜びと、誇りを持って発表いたします。この9月から、私はホグワーツ魔法魔術学校にて、『闇の魔術に対する防衛術』担当教授職をお引き受けすることになりました!」



 サクラとロンが絶句する。ハーマイオニーは他の奥様達と一緒に歓声を上げて拍手をした。

 ハリーは、ロックハートの本を抱えながらよろよろと部屋の隅へ逃げていった。

 サクラ達も彼の教科書を揃えてハリーを追う。そこには、ロンの妹のジニーの他にドラコもいたのだった。

 ふと、今の服装が気になった。

 今日は小花柄のワンピースに白いレース編みの羽織、そして赤いメリージェーンの靴を履いている。

 この服装でダイアゴン横丁に入ったとき、少し後悔したのだった。周りはほとんど魔法使いの黒い服装をしているので、自分が浮いているように思えたから。

 果たしてこの服装は、ドラコ受けがいいだろうか。


――いやいや、別に、マルフォイくん関係ないし。別に。別にっ!


「なんだ、君か」


 ロンが不愉快そうに言う。


「ハリーがここにいるので驚いたっていうわけか、え?」

「ウィーズリー、君がこの店にいるのを見てもっと驚いたよ。そんなにたくさん買い込んで、君の両親はこれから1ヶ月飲まず食わずだろうね」


――マルフォイくんって、やっぱり性格悪いんだなあ……。


 そんなことを考えていると、ロンがドラコに飛びかかろうとした。それを、ハリーとハーマイオニーが抑えたのだった。


「ロン!」


 アーサーとフレッジョが、人混みに揉まれながら何とかこちらへ来ようとしていた。


「何してるんだ? ここはひどいもんだ。早く外に出よう」

「これは、これは、アーサー・ウィーズリー」


 男性の声がした。

 ドラコの肩に手を置き、薄ら笑いを浮かべて登場した。ドラコと同じ色の長い髪を背中に垂らし、そしてドラコと同じくらい青白い肌をしている。

 もう少し若い頃は美形だったと思われるが、しかし顔には年齢が刻まれていた。


「ルシウス」


 アーサーはほとんど唇を動かさずに呟き、首を僅かに傾かせて挨拶をする。


「お役所はお忙しいらしいですな」


 ドラコの父ルシウスは、そんなアーサーに挨拶を返さないで皮肉のように言ってくる。


「あれだけ何度も抜き打ち調査をして……残業代は当然払ってもらっているのでしょうな?」


 ルシウスは、無遠慮にジニーの大鍋に手を突っ込んだ。ロックハートの本が入っていたが、その中から「変身術入門」の教科書を取り出す。その本は使い古されていて、兄達のお下がりのようだった。


「どうもそうではないらしい。役所が満足に給料も支払わないのでは、わざわざ魔法使いの面汚しになる甲斐がないですねえ」


 ルシウスに貶され、アーサーの顔が羞恥と怒りで赤くなる。


「マルフォイ……魔法使いの面汚しがどういう意味かについて、私達は意見が違うようだが」

「左様ですな」


 そして、ルシウスの視線がアーサーから外れる。その先には、心配そうにこちらを見ている祖母とハーマイオニーの両親がいた。


「ウィーズリー、こんな連中と付き合っているようでは……君の家族はもう落ちるところまで落ちたと思っていたんですがねえ」


 アーサーひとりだけが貶され馬鹿にされた訳ではない。自分の家族や知り合いの家族までもが見下されたのである。

 アーサーはルシウスに飛びかかり、後ろの本棚へ押し付けた。その衝撃でそこにいた人達の上に本が大量に落ちてきた。


「やっつけろパパ!」


 サクラはびっくりしたのだが、フレッジョは喜々として叫ぶ。


「アーサー、だめ! やめて!」


 モリーが悲鳴を上げた。

 アーサーとルシウスが取っ組み合いになり、書店が騒然となる。


「お客様、どうかおやめを……どうか!」


 店員が叫んだが効果はない。そこへ、大きな声が轟く。


「やめんかい、おっさん達! やめんか!」


 聞き慣れた声に振り向くと、背が一際高いハグリッドがやってきたのだった。

 取っ組み合っているふたりに何の躊躇いもなく近づき、そしてふたりを引き剥がした。

 ルシウスは、まだ握っていた変身術の本をジニーへ突き出す。その目には、本で叩かれた痕が残っている。


「ほら、チビ。君の本だ――君の父親にしてみれば、これが精一杯だろう」


 捨て台詞のように言い、ルシウスはドラコに目で合図をした。


――マルフォイくん。


 心の中で思わず名前を呼んでしまった。すると、ドラコがこちらを向いて目が合った。しかし、その表情から感情は読み取れず、彼はすぐに目を逸らして父親と出て行ったのだった。



 アーサーは、先ほどの取っ組み合いで唇を切っていた。


「アーサー。あいつのことはほっとかんかい」


 ハグリッドがアーサーのローブを整えようとしたが、危うくアーサーを吊るし上げそうになる。


「骨の髄まで腐っとる。家族全員がそうだ」


――でも、マルフォイくんは違う……違くないのかな……。


「マルフォイ家のやつらの言うこたぁ、聞く価値がねえ。そろって根性曲がりだ」


 そしてハグリッドに促され、一行は書店の外へ出た。

 店員が引きとめようとしたが、ハグリッドの背の高さを見て何も言えなくなったのだった。


「怪我はないかい、サクラ」


 心配してくれる祖母に、サクラは頷く。


「うん、大丈夫だよ」

「子供達に何てよいお手本を見せてくれたものですこと!」


 モリーが憤然として述べた。


「ギルデロイ・ロックハートが一体どう思ったか……」


――やっぱりモリーおばさまもロックハートのファンなのか。


「あいつ、喜んでたぜ」


 フレッドが言い、更にロックハートの印象が悪くなる。


「あの『日刊予言者新聞』ってやつに、喧嘩のことを記事にしてくれないかって頼んでたよ。何でも、宣伝になるからって言ってたな」


 それからウィーズリー家は「漏れ鍋」の暖炉へ向かい、グレンジャー家はそこから裏側のマグルの世界へ、ハグリッドはまだ買い物があるからと言い、サクラはそこで皆と別れたのだった。

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