あなたに愛をこめて

来年こそは頑張る愛蘭(あいら)
@kanon__baby



夏も終わり、いつの間にか秋の香りが漂うそんな昼下がり。


揃って休みの私達は、大輔さんの提案で植物園に来ていた。



「植物園なんて初めて来たかも知れません……!凄い綺麗!あっちもこっちもお花ですよ!大輔さん!」

「玲がそんなに喜んでくれて良かったよ。俺も初めて来たけど、凄い癒されるね」



そう言うと大輔さんは、そっと手を私の方に差し出した。あまり外で手を繋ぐことがないから、未だにドキドキしながらその手に自分の手を重ねる。重ねた瞬間、大輔さんがぴくり、と動いて少し赤くなった気がするけど、私の一歩前にいるその表情を伺うことは出来なかった。


しばらく歩くと、色鮮やかな花畑が目の前に広がり、その美しさに思わず、息を呑む。



「これって……ブーゲンビリア?」

「そう、よく知ってるね。前にチラッと新聞に載ってるのを見て、どうしても玲に見せたかったんだ」

「これを私に……?」

「女性が喜ぶデートってあまり分からなくて、新聞に女性が好きだって書いてあったから誘ってみたんだけど、あまり好きじゃなかった?」

「いえ!小さい頃に、実家で花を育てていたので大好きだし、ブーゲンビリアは色々な花の色があって一番好きなんです!」



私がそう言うと、大輔さんはとてもホッとした顔をして、近くにあったブーゲンビリアの説明書きを真剣に見つめ始めた。



「ねえ、玲はブーゲンビリアの花ってどの部分か知ってる?」

「この赤とかオレンジの部分じゃないんですか?」

「俺もそうなのかなって思ってたけど、実は違うらしいよ。ほら、ここの説明書き見て」



大輔さんの手が離れてしまったことが少し気になったけど、大輔さんに促されて説明書きに集中する。



【ブーゲンビリアの花だと思われている赤や黄色の色のついた部分は、苞と呼ばれる葉っぱであり、本当の花は真ん中の小さな白い部分です】



「……は、初めて知りました」

「むしろ、知ってる人の方が少ないんじゃないか?」

「ですよね。良かった、私が知らないだけじゃなくて……」

「ねえ、玲」

「はい?」



大輔さんに呼ばれて振り向くと、彼の手には目の前に広がっているブーゲンビリアの花束が抱えられていた。



「今日は君に、これを渡したい」



大輔さんは、手に抱えた花束を私に渡してきた。



「いつもは中々、伝えられない言葉も花の力を借りて伝えることができるって新聞で見たんだ。花言葉って言うらしいんだけど……」



ブーゲンビリアは、私が一番好きな花。もちろん、花言葉も知ってる。花言葉は"あなたしか見えない"



「ブーゲンビリアの花言葉は、あなたしか見えない……って玲?何で泣いてるの?」

「え?」



私は、知らない間に泣いていたみたいで、意識すれば頬やら顎やらが冷たかった。



「……嬉しくて。大輔さんの気持ちが」

「どうしても玲に、ここでこの花束を渡したくて、初めて花屋に行ったんだ。それで、この花は厳しい環境で美しい花を咲かせるたくましさを持ってるって聞いて、益々、玲みたいだなって思ったんだ」

「……大輔さん」

「俺達は、マトリでこれからも危険な事と隣合わせで厳しい環境に晒される。でも、俺は必ず玲のことを守るし、この花みたいに厳しい環境でも"玲"という美しい花を咲かせてみせるよ」


そう言った大輔さんの表情は真剣で、その瞳に吸い込まれそうになる。



「ありがとうございます……。ブーゲンビリアみたいになれるように、これからもマトリとしても一人の女性としても、精一杯頑張りますね!」

「俺はずっと隣にいるから、これからもよろしく頼む」



花の香りがしないことで有名なブーゲンビリアから甘い優しい香りがしたのは、大輔さんから貰った愛情から香るのか何なのかは分からないけど、大輔さんの思いと共に私は明日からも頑張っていこうと心に誓った。