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ネこばん
@tbprotect

渡辺冴子。それが私の名前。17歳。聞こえがいい言い方をすればJKと巷ではいうのかな・・・

ただ、その巷で想像されているようなファッション誌を見ながらこれ可愛いだとか、あれ欲しいなんて話しながら流行に乗っているJKとは程遠く、全く冴えない。

昔からそう、自分で言うことも何の抵抗もなくなった。これほどまでに名前負けするかな・・・


名前を付けた両親には呆れてしまう。全く冴えない父親に全く冴えない母親。私たちとは違う快活でハキハキしたみんなから注目される冴えた子になって欲しいという願いを込めてつけたのだろうが、無理に決まっている。

冴えるの意味の前に遺伝という言葉を知っていたのだろうか・・・

願いなんて漠然としたものよりもはるかに影響力があるものなのに・・・


もちろん名前負けは自分だけが言っているわけではなく、学年中が言っていること。

クラスのみに留まることがなかったのはこの見た目も相まっていた。


髪が長く、俯きなるべく相手に目を合わせないよう、また合わないようにしている。

相手に聞こえる声で話したこと、ましてや会話なんかしたことない。

アクシデントが起きて「すみません」落としたものを拾ってもらって「ありがとうございます」をボソッという程度。これを会話と言っていいならしているが、これ以上はない。


本を読むことが好きで、常に読書をしていることが根暗な印象を増長させているのだろう。

両親の名字が渡辺だということはとても感謝している。必ず初めの月は窓際の席になるからだ。しかも一番後ろ。こんなに最高の読書環境はない。教室内一のユートピア。

本を読むときはしゃべっていることが多い。と言ってもボソボソと本を音読しているだけだけど・・・

そっちの方が記憶に残りやすいから。小説や漫画ではしないが、参考書のように勉強のために読んでいるものはそうしている。


ただ、そのせいで変な噂が囁かれていた。

「呪文を唱えている!?」や「魔女なのか!?」とかオカルト扱いされ、名前負けの時よりもすぐに噂は知れ渡って、『黒魔術師・冴子』の異名は学年中に広まった。

これは両親の願いが少し叶った。冴えないが冴子は注目された。


『黒魔術師・冴子』の異名が広がってから3日後の昼。弁当を食べていたときのこと。私のことが気になるという男子生徒がきた。


「あ、あの。吉川と申します!」

「知ってるよ。」

「あぁぁ・・・す、すみません!」

「なんで謝るの?」

「いや、その・・・なんでかな?」

「・・・吉川善孝(よしたか)君でしょ。隣だし、覚えやすい名前だし。」

吉川君は少し顔を赤らめて俯いた。だが立っている吉川君の顔を座っている冴子は赤らめた顔がしっかり見えていた。吉川君は見ての通り冴子のことが好きでそれを伝えに来たのだが、冴子は全く気付いていなかった。

「(何しに来たの?私に声かける?理解できない・・・今度の文化祭やるお化け屋敷のお化け役をやってほしいとか・・・でも吉川君は実行委員じゃないし、満場一致で私がお化け役になったし・・・・・・・・待って、後ろに3人組の男女がいる・・・そうか、これはきっと罰ゲームだ。何かしらのゲームで負けた吉川君が『黒魔術師・冴子』に話しかけるという・・・なんだか面白そう。乗っかって『黒魔術師・冴子』になりきろう。そうと分かったら、会話を続けないと)・・・それで、何か用?」いつも通りボソボソと返してみた。

好意の吉川君と『黒魔術師・冴子』、大きな勘違いから会話が始まっていく。

「あ、あの実は、わ、わ、、渡辺さんと、す、す、、少し話、、、が、、、したいと思って、」

「話?何の?(罰ゲームの割に緊張しすぎじゃないの?それとも私の迫真の演技の成果?)」

「えっ!!?え、、っと、、、は、話というのは、、、、」

「早く言ったら?(どう!ボソボソと目も合わせないで髪で顔を隠して、ブラウン管から出てくるあの幽霊を彷彿とさせるこの感じ。どう!吉川君!これがお化け役が満場一致の実力よ。)」

「えっ!えっ!!あ、あっ、、、し、しゅ、、趣味!」

「え?」

「しゅ、趣味なん、、、ですか?」

「趣味?(まさかそんなこと聞いてくるの?もっと聞くことあるでしょ!なんの呪文唱えているとか、黒魔術使うにはとか、魔女なのかとか、コウモリの姿焼きは魔女窯に入れるとどんなこうかがあるとか、やまほどオカルティな質問あるはずなのに趣味なんて。お見合いじゃないんだぞ。)」

そうこう言っているうちにしびれを切らした吉川君が、

「しゅ、、趣味は?」

とたった3文字を噛みながら言い放った。それに慌てた冴子は思わず・・・

「り、旅行」

やってしまった。『黒魔術師・冴子』らしからぬ答えをってしまった。しばらくの沈黙・・・

沈黙の間冴子は後悔していた。

「(なによ旅行ってこれじゃ普通のお見合いじゃん。キャラに合わないじゃない。『黒魔術師・冴子』の趣味が旅行って理解しがたすぎる・・・どうにかしないと・・・一般人じゃないのよ。私は『黒魔術師・冴子』なのよ!)」

「り、旅行ですか・・・い、いいですよね。旅行!」

「何?その顔?キャラと違うみたいな・・・」

「い、いやそんなことないよ。た、ただ、イメージと違ってて理解するのに時間かかって。意外とみんなと同じような趣味で渡辺さんも普通の女の子なんだなって。」

「・・・普通の女の子」

「あぁぁいや、別に変な意味じゃないですよ。ただ噂と違っていてて・・・」

「(だめだ、だめだーーーー普通じゃダメなんだキャラ崩壊していく・・・なんとかしないと、なんとか・・・!)・・・でも普通の旅行とは違うわよ。」

「え?」

「(やばい、見切り発車してしまった。でもここから糸口を・・・)・・・特産物をたくさん買うの。」

「それは僕もしますよ。お父さんは酒好きだから毎回地酒を買ってくしね。」

「(地酒!これは乗れる!)そう、私のお父さんも同じよ。それで、私ももらうの、その地酒。」

「え、ま、まさか。そ、その地酒を、、、、」

「(いい感じに怪しくなってきた。そろそろ『黒魔術師・冴子』らしさを。)・・・その地酒を魔女釜に入れて買ってきた特産物と一緒にとろ火で2日煮込んだものを作っては口にするのが趣味なの。もちろんコウモリの姿焼きも一緒にいただくわ。」

「・・・・そ、そうなんだ。」

「(どうだ!これぞ『黒魔術師・冴子』さぁ乗り切ってあげたわ。どうする。吉川君)」

「・・・なんか、理解できた趣味だったけど理解しにくい趣味になっっちゃたな。だけどそれが渡辺さんらしいからやっぱ僕、渡辺さんのこと好きだな。」

「は?何言ってるの吉川君?」

「渡辺さんのこと好きなので付き合っていただけませんか?」

さっきまで噛み噛みだった吉川君になぜか流暢に告白された。

「ダメですか?」

「え?・・・・・・・・・わかりました。」

「やった。成功した!!!!」

「喜んでるところごめんなさい。あなたの女性の趣味が理解しにくいわ。」

「渡辺さんの趣味ほどでは。」

「嘘よ。あれ。魔女窯なんてあるわけないじゃん。『黒魔術師・冴子』としてのキャラの趣味よ。」

「キャラに乗ってたの?意外。そんな渡辺さんも好きだ。」

「やっぱ理解しにくいけど吉川君をりかいしてやるわ。」

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電車内での出来事。たまに見る光景に勝手な想像が結びついた物語。

普段とは違うところ見せたいです。