咲かない華なんてない。

に゛ゃ゛あ゛ん゛
@sem_xrom

第一話

『お母さん、行ってきます』


母親にそう声をかけて慌てて靴を履き駆け足で出て行く女の子。

そう、この子がこの物語の主人公である。


名前は、神代伊吹。

現在高校二年生の図書委員。

運動音痴。

出来るのは勉強ぐらい。


容姿は、長めの前髪に肩くらいまで伸びた髪。

そして眼鏡。


高校二年生になった伊吹は、一年生と変わらず地味な容姿であった。

でもちゃんと見るとすごく可愛いもったいない子である。


始業式早々遅刻間近の伊吹は走る走る…

『うぅ…なんでこんな事に…』


そう、好きで遅刻ギリギリになってしまったのではない。


朝伊吹が目を覚ますと、隣に何故か三男の弟が…

伊吹が驚いて思わず『うひゃぅ!!』という変な悲鳴を上げた。


「伊吹おはよ。いつまで寝てんの?もう朝だよ」

『わ、分かってるよ…っなんでしーちゃんここにいるの…?』

「伊吹が起きて来ないから心配して起こしに来たんだよ。そしたら気持ちよさそうに寝てたからつい隣で…」

『もー…しーちゃん…』

ベットから立ち上がり眼鏡をかける。


「ねえ。なんで眼鏡かけんの?コンタクトにしないの?」

『だってこっちの方が落ち着くしコンタクトだと怖いし…』

「うーん…そうかもしんないけどさ…そんなに可愛いのにもったいない…」

『からかわないでよぉ…』

「え?めっちゃ真面目なんだけど…」


すると突如部屋のドアが勢いよく開け放たれる。

「いーぶき♡おはよ♡」

すごく爽やかなイケメンスマイルで登場したのは長男。


「うわ。でた」

「化け物でも見たかのような顔するのやめてくれるかな」

『おはよう、れん兄』


そう挨拶を返すと突如抱きついてくる長男。


そしてその開いた扉からちらっとこちらを見る次男と目が合う。

しかし次男はさっとその場から去ってしまう。


次男はいつもそうだった。

伊吹が小さい頃からずっと何故か次男をは距離を感じていた。


伊吹のその視線に気付いた長男の漣は、優しく伊吹に声をかける。

「伊吹、八尋は不器用なだけなんだよ。嫌いにならないであげてね」

『れん兄…嫌いになるはずなんてないよ。大切なお兄ちゃんだよ?なんか距離があって寂しいなって…』

「大丈夫。ちゃんと伊吹の事は見てるから。」

「あ、やばいよ時間」


時計を見ると既にやばい時間帯だった。

それから伊吹は慌てて学校の準備を行い速攻で家から出たのである。

だから朝ご飯は食べていない。



『うぅ…もう少し早く起きれば良かった…れん兄達が悪いわけじゃないもん…私が全部悪いんだもん…』


再び自分のiPhoneの時計に目をやると、もう泣いても笑っても遅刻の道しかなかった…

半泣きになりながらしょぼしょぼと歩き始める伊吹。

せめて自転車でもあれば…


とぼとぼと悪きながらようやく学校に到着した伊吹は、誰もいない静かな廊下を歩く。

自分の靴音だけが虚しく響く。


進級そうそう遅刻とは…

『初日から印象最悪だよね…どうしよう…保健室…?先生いるかな…きっと今の時間帯だと皆体育館だよね…』


しかしとりあえず保健室へ行こうと思い立ち、そっちに歩みを進めた。


そして保健室前。

とりあえずドアをノックしてみる。


「はーい」


すると、以外にも先生は中に居たらしく…

『…すみません』

「あら、どうしたの?鞄まで持って…あ、もしかして遅刻しちゃった?」


図星である。


『私どうすればいいのか分からなくて…』

「にしても以外ね…あの神代さんが遅刻だなんて…何かあったの?先生には私から話しておくわ。神代さんに免じて♡」

『うぅ…先生ぃ…ありがとうございますぅ…私が悪いんです…寝坊してしまって…』

「とか言いながら実はお兄さん達が関係してるんでしょう?あの人達伊吹ちゃんの事好きだもんねぇ」

『先生は何でもお見通しなんですか…?でもすべての原因は私に…』

「またそうやって自分を蔑むんだからぁ。可愛いんだから自身持ちなさい。はい、アップルティー」

先生が入れてくれたアップルティーを貰い流し込む。


『本当に先生の入れるアップルティー美味しいです』

「ふふっ、いつもそう言ってくれるわよね伊吹ちゃんは」

『先生は美人さんで凄く羨ましいです…私にはないものをたくさん持ってますし…』

「もーっ。何言ってるの?神代さんの方が可愛いし、私にはないものを持ってるわ。その言葉、そっくりそのままお返しします」

にこっと微笑む先生。

その微笑みも綺麗。


(…私にはそんな微笑み方出来ないよ。)


『あ、そろそろ二時間目ですね…ほんとにすみませんでした…!ご迷惑をおかけして…』

「いいのよ。神代さんは特別♡いつでもどんな時でもおいで」


その先生の言葉に深く頭を下げて保健室を後にした伊吹は、自分の教室へと戻っていった。