華ノ嘔戀 ~神漣奇譚~ -雪華ノ抄-

嘉月 ゆい
@sui_gekka

雪華ノ抄2-桜色のチョコレート その弐-

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「はーい、皆~おやつの時間だよ」


そう言って昼間に入ってきたのは、光忠と沙紀だった

”おやつ” という言葉に反応する様に、皆が広間の長机に集まってくる


「さて、本日の菓子はなにかな?」


三日月がのほほんと、茶をすすりながらそう言う

すると、光忠は ほらっと沙紀の背を押した

沙紀は少し戸惑いながらも、おずおずと持っていた皿を机の上に置いた


「ほほぅ…これは西洋菓子だな」


三日月が興味津々という風に、その目の前の茶色の菓子をひとつまみして眺める


「西洋菓子ですか? これは、中々不思議な色をしていますね」


と一期一振も不思議そうにその茶色い菓子を眺めた

と、その時だった

ひょいっと皿に手が伸びたかと思うと、一粒つまみ一度だけ沙紀を見た後、そのまま口に放り込んだ人物がいた

鶴丸だ


「あ……」


何の躊躇いもなく食べた鶴丸に、沙紀が思わず声を洩らす


「ん……美味いな。 久しく食べてなかった味だな。 沙紀が作ったのか?」


鶴丸のその問いに、皆が 「え!?」 と沙紀と光忠の方を見る

沙紀は少し恥ずかしそうに、頬を赤らめながら…


「その…皆様にはいつもお世話になっているので……その……」


その先が続かない

言葉に詰まった様に、真っ赤になって俯いてしまった沙紀を見て

鶴丸がくすっと笑みを浮かべた


「今日は、確かバレンタインだからなぁ~ありがとうな、沙紀」


そう言って、鶴丸が沙紀の頭をぽんぽんと撫でる

沙紀はそれに頷くので精一杯だった


が……他の連中がその謎の言葉に首を傾げた


「「ばれんたいん???」」


三日月と山姥切国広は知らないらしく、その茶色い菓子―――チョコレートをつまみながら鶴丸を見た

すると見かねた一期一振が


「要は、好いた男士に、女子がチョコを渡すのが現代の風習だそうですよ? 後は…世話になったかたへのお礼の気持ちとか…さしずめ、これは後者でしょう。 ありがとうございます沙紀殿。 美味しいです」


「好いた男士……」


山姥切国広がごくりと息を飲んだ

すると、三日月は 「はっはっは」 と笑いながら


「して、これは主からの品であると? それは食せねばならぬな」


そう言って、ひょいっとつまんでいたチョコを口に運んだ


「その…初めて作ったので…お口に合うかわかりませんが……」


沙紀が控えめにそう言うと、鶴丸や光忠など


「十分美味しいと思うぞ?」


「そうだよ、自信持って」


そう言ってくれるものだから、なんだか嬉しくなって 自然と顔が笑顔になっていくのが自分でもわかった


「それに、ほら」


と、光忠が指さした方には…

大倶利伽羅が黙々とチョコを食べている


「伽羅ちゃん甘党だから。 甘いものには目がないんだよ」


そう言って光忠が笑った

確かに、いつもは淡々として食べている気がするのに…

今日は、心なしか嬉しそうに見える


皆が皆、嬉しそうにしている

それだけで、なんだか嬉しい気持ちになった


作って良かったと思える瞬間だった








****







―――― 夜


「ふぅ……」


湯殿からの帰り、沙紀は髪を拭きながら外を眺めた

外は相変わらず、真っ白な雪が深々と降っている


昼間、皆にはチョコレートを渡す事は出来た―――……

そう、”皆” には……


でも……


部屋に戻り、机の上にある包みを見る

綺麗に桜色と白色のリボンでラッピングされた包みがそこにはあった


「…………渡せない、わ、よね」


実はもうひとつ、あの後こっそり作ったのだ

皆とはちょっと違うアレンジを加えたチョコレート


作ってはみたが…

渡せないまま、夜になってしまった

かといって、皆が一緒に寝ている部屋に押し掛ける勇気はない


「はぁ………」


沙紀はその包みを眺めて、溜息を付いた


どうしよう…これ……

もう、自分で食べてしまおうか……


そう思って、手を伸ばし掛けて…また、溜息がこぼれた

その時だった


「こーら、溜息を付くと幸せが逃げるって言ってるだろう?」


不意に声が聴こえて、はっとして顔を上げると…

鶴丸が部屋の戸の所に立っていた


「り、りんさん……っ」


突然の鶴丸の姿に、沙紀が一瞬動揺する

どうして、鶴丸がここにいるのか

今頃なら、皆と一緒の部屋で寛いでる時間なのに……


瞬間、はっと机の上にある包みを思い出した


いけない……っ!!


すっかり隠すタイミングを見失って、オロオロとしていると、鶴丸が少し苦笑いを浮かべ


「どうしたんだ? あの管狐が呼んでるって言いに来たから、来たんだが……違ったか?」


「え…!?」


あの管狐って…こんのすけのこと…?

まさか、こんのすけがここに鶴丸を呼んだというのか


言われて はっとする

いつも傍に居る筈の、こんのすけの姿が無い

問いただそうにも、聞く事すら叶わない


沙紀が困った様に狼狽えているのが目に取れて分かったのか…

鶴丸が少し困った様に頭をかいた後


「うーん…俺は行った方がいいなら、行くが…ゆっくり休めよ。 おやすみ。 寝る前に顔が見れただけでも良かったよ」


そう言って、そのまま戸を閉めて部屋から出て行こうとする


「あ……」


このままでは、鶴丸は行ってしまう

折角、こんのすけが作ってくれた機会なのに……


「ま……」


沙紀は慌てて立ち上がると、「待って下さい…っ、りんさん!!」 と、鶴丸に駆け寄った

そのまま今にも去りそうな鶴丸の背に身を寄せる


ぎょっとしたのは、鶴丸だ


「お、おい、沙紀…っ」


「い、行かないで…くだ、さい……」


そう言って抱きついて来た沙紀の顔は真っ赤だった

鶴丸が少し困った様にまた頭をかいた


「その、な、沙紀…、言い辛いんだが……」


「え……?」


「何か…羽織ってくれ…、その姿は、目のやり場に困るというか……」


と、何やら少し顔を赤らめしどろもどろにそう言われて、はっとした


やだ……私ったら……っ


よくよく考えれば、湯殿から帰ったままの姿だった事に気付く


「す、すみませんっ!!!」


慌てて沙紀が、鶴丸から離れようとする

が、その瞬間 その手を掴まれた


「え…あの……」


今すぐ何かを羽織りたいのに、止められて沙紀が一瞬 戸惑いの色を見せる

が、鶴丸の美しい金色の瞳がじっとこちらを見ていて、思わず動けなくなってしまった


「りん…さ、ん……?」


「沙紀……」


目が――――離せない


どの位そうしていたのだろうか……

恐らく時間的にはほんの数秒

だが、沙紀には、酷く長く感じた


「あの……?」


「…………ごめん、沙紀」


「え……?」


一瞬、鶴丸が何を意図して謝ってきたのか分からず、沙紀がその躑躅色の瞳を瞬かせた時だった

不意に、引き寄せられたかと思うとそのまま鶴丸の腕の中に包み込まれた


え――――……?


突然の、鶴丸からの抱擁に沙紀が動揺する


「あ、の…? りんさ――――ん…」


”りんさん” と、呼ぼうとした唇は鶴丸のそれに塞がれた


「あ……」


鶴丸からの口付けに、沙紀がぴくりと肩を震わす

最初は触れる様に優しく

二度目は、頬を撫でられて、そのまま重なる

三度重ねられた口付けは次第に深いものになって行った


「あ…ん、……り、んさ……ん……っ」


息が、声が次第に洩れる

それが鶴丸のそれを更に煽った


「馬鹿……そんな、可愛い声で啼かれたら、抑えられなくなっちまうだろ…」


鶴丸が切なそうに目を細め、沙紀の唇に触れる


「そんな、こ、と…言われ、て、も………あ……」


そのまま重ねられた唇が熱い……

堪らず、鶴丸の背に回していた手に力が籠る


「りん、さ………ん」


身体が熱い

全身が火照る様に、熱くなっていく――――……


さらっと、鶴丸が沙紀の艶やかな漆黒の髪を撫でる

それが気持ちよくて、思わず嬉しくなった


「私…りんさんに、髪撫でられるの好きです……」


「ん? こんな事でいいのか…? 欲のない奴だ……」


髪を撫でられる事だけじゃない

こうして、触れられる事も

名前を呼ばれる事も………  全部、好き


この人の、全てが愛おしくてたまらない……


「りんさん………」


ぎゅっと鶴丸にしがみ付く






          好きです――――………






そう…言えたらいいのに……

沙紀に、そこまでの勇気はなかった


「あ、あの、りんさん…?」


「ん?」


「わ、渡したい物が――――……」


それが、今の自分の精一杯の勇気……

でも、いつか……


そんな日が来るのかは分からない

分からないけれど……それでも――――……


今目の前の人が喜んでくれている



「りんさん…ハッピーバレンタイン…です」



その事実だけで、今は十分………











おわ~~り~~~~~

最後は甘めに終了(`・ω・´)キリッ


え? 鶴丸が優遇されてる…?

だって、これ本編が鶴メインの派生ですから(*'ω'*)


今回のターゲットはみっちゃんと鶴でした~~~






嘉月(2017.2.21)