撫子無双

もた@夢松熱中
@mota_aaa

因縁の男

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出場の手続きを終えたターちゃん達も、ホテルへのチェックインを終えて部屋へとやって来た。

しかし、中に居たのはヂェーン一人だった。



「あれ?ヂェーン、凛ちゃんは?」


「あぁ、凛ちゃんならフロントに明日の観戦チケットを買いに行ってくれてるわ」


「何だぁ。もしかしたらシャワーでも浴びてるかと思ったのに…」


「…それよりターちゃん。あんた達の部屋は隣の二部屋よ」


「え?一緒じゃないの?」


「当たり前でしょ!この部屋は私と凛ちゃん、残り二部屋は四人でじゃんけんでもして割り振んなさい」



そう言われ、ターチャンは嫌々ながらに部屋を後にした。


一方、フロントで観戦チケットを購入した凛はエレベーターを降り、部屋に向かって廊下を歩いていた。



「おや、凛さんじゃないですか」



その時、どこかで聞いたことのある声が聞こえて彼女の名前を呼んだ。振り向くと、そこに居たのは青木一哉だった。



『あ、青木さん!どうしてここに…』


「私は大会へ出場する為に来たんですよ。シード選手としてね」


『シード選手…?』



青木一哉は、日本にある空手流派の名門と言われている「青木一閃流」の青木家長男である。現在は彼の父・青木宗孝が師範となり空手を指導しているが、青木はそんな流派の次期当主とも噂されている。


そして、そんな青木一閃流は、凛の父がかつて築いた「楢橋派」を壊滅に追いやった流派でもある。



『どうして貴方がシード選手に?』


「実は、うちの父がこのホテルのオーナーと知り合いでね。是非私にシード選手として出てほしいと頼まれてしまいまして…勿論、実力を認められているからこそ、ですけど」



相変わらず、高飛車な性格だ。凛はこの男が苦手だった。性格的にも、家柄的にも。

『そうなんですか』と素っ気無い態度を取り、彼女は早々に部屋へ戻ろうとしたが、その細腕を青木が掴んだ。



『何するんですか!放してください!』


「貴女こそどうしてこんな場所に居るんですか?もしや、この私を応援に?」


『違います!私はターちゃん流派の弟子としてここへ来たんです』


「ターちゃん?」



凛が一連の経緯を話すと、突然青木は笑い始めた。



「あははははっ!どこへ行ってしまわれたのかと思えば、アフリカへ行っていたんですか!?それもジャングルの王者に会いに!?実に馬鹿馬鹿しいですね!」


『馬鹿馬鹿しくなんてありません。ターちゃんは誰よりも強いです!』


「ハッ、ジャングルで生きた野生児如きが何だって言うんですか。猿を親だと思いながら育ち、ゴリラに格闘技を教わっただなんて、そんな奴が強いわけがない」


『ターちゃんの強さは本物です!きっと貴方よりも…』



ドンッ!!

彼女の言葉が言い終わる前に、青木は彼女を自分と壁との間に追いやった。逃げ場を失いながらも、強い視線で自分を睨みつける凛を見降ろし、青木はふと笑みを浮かべた。



「きっと貴女は、私よりも強い男を見つければ私が諦めると思っているんでしょう?」


『…ッ…』


「諦めませんよ、私は。貴女は私の妻となるんです」



卑しい笑みを浮かべながら、青木はそっと凛の顎を撫でる。しかし、パシッとその手を叩かれた。



『触らないでください』


「…どうやら貴方は、まだ私の事を嫌っているみたいですね」


『好きだという方がおかしいですよ』


「気の強いところも可愛らしいかと思っていましたが…少し度が過ぎるようですね。私がその気丈な性格を躾け直した方が良さそうだ」



そう言うと、青木はスッと右手を宙へ翳した。その目は怒りを宿しており、凛はすぐに彼が自分を打つのだと気付いた。そしてその右手が動いた直後、彼女はすぐに走るであろう痛みに耐える為、ギュッと目を瞑った。

だが、痛みは無かった。



「格闘家といえど、力を振るう相手を間違えないようにしろよ」



そんな言葉が聞こえたが、青木の声ではない。そっと目を開くと、金髪の屈強な体躯の男が青木の右腕を掴み上げていた。

思わぬ邪魔が入った、と青木はその腕を振り解くと、何も言わずに凛の前から去って行った。



「大丈夫ですか」



青木が去ると、金髪の男性はそれまで見せていた厳しい表情を和らげた。その優しい表情に安堵してか、凛もそれまで肩に入っていた力をふと緩めた。



『ありがとうございました。お陰で助かりました』


「いえ、たまたま通りかかっただけですから。それより、あの男…」


「おーい、ロド兄さん!」



男性が何かを言い掛けたが、その言葉はまた違う声によりかき消された。

見ると、二人の男性と一人の女性が駆け寄って来る。



「ロド兄さん、先に行くなんてひどいじゃないか」


「ああ、すまん」


「…あれ?そちらの方は?」



やって来た三人のうち、黒髪の男性が凛を見て目を丸くさせた。

「ロド兄さん」と呼ばれた男性は彼らに向きなおった。



「彼女は…廊下でぶつかってしまってね。今謝っていたところなんだ」



咄嗟に理由を隠した男性に、凛は驚き彼を振り返ったが、男性はそのまま「ぶつかってしまった相手」を演じてくれた。



「すみませんでした。私の不注意で」


『いえ、こちらこそ』



凛も咄嗟に彼の演技につられてそう言った。

すると、三人の内の女性が「もしかして!」と声を上げた。



「貴女も明日から行われる大会に出るんですか!?」


『え?』


「何言ってるんだ、リサ。明日の大会は女子は出場できないだろ」


「あ、そっか。じゃあ誰かの応援で来てるのね」


『はい。私はターちゃん先生の応援に…』


「「「ターちゃん!?」」」



凛が師匠の名前を口にした途端、三人がずずいっと目の前に迫って来る。

横に居るロドと呼ばれていた男も驚いた様子でいる。



『皆さん、先生を御存知なんですか?』


「せ、先生って…もしかして、ターちゃんの事言ってるの?」


『え、えぇ。私、つい先日ターちゃんの弟子にさせてもらった、#楢橋凛と申します』


「「「弟子ぃぃぃ!?」」」


「…三人共、声が大きいぞ」



ホテルの廊下であるのを忘れ、大声で騒ぐ三人を、ロドは呆れるようにしながら窘めた。