撫子無双

もた@夢松熱中
@mota_aaa

二人きりの夜を我が手に

この小説は夢小説 (名前変換ができる小説) です。
キャラベルに登録してログインすると、登場人物の名前をお好きな名前に変更できます。

『世界格闘技選手権?』



その日、ペドロが凛に見せたのは、アメリカで行われる格闘技の世界大会のパンフレットだった。世界各国より腕に自信のある格闘家達が集結するこの大会は、毎年この時期になると行われるものである。

ペドロは過去に何度か出場経験があり、今年も出場しようと考えていたのだ。



「先生の元で格闘技を教わり、早数ヶ月。そろそろ僕の上達ぶりを発揮してもいい頃ではないかと思いましてね!」


『そうなんですか。ペドロさんならきっと優勝間違いないですよ!』


「ありがとうございます!」


「まだおめーには早いんじゃねぇのか?」


「何を言うんですか、梁師範!僕はターちゃん先生の一番弟子!ターちゃん流派の強さを世界の強豪共に見せつけてやりますよ!」



ペドロには、どうにも調子に乗ってしまう節がある。確かに彼の実力は確かだ。しかし、世界はまだまだ広い。ターちゃんは過去に、アメリカのパンピング・アイアン・ホテル主催の、プロフェッショナル異種格闘オープントーナメントで優勝経験がある。とはいえ、あの時は他の事でいっぱいいっぱいで、正直優勝したという実感もあまり湧かなかったのだが。

そんなターちゃんの一番弟子という立場に、ペドロは少し浮かれているのではないかと、梁は心配しているのだ。


大会が開催されるのは来月だという。というわけで、来月はペドロがアメリカへ旅立ってしまうので、ターちゃんファミリーは四人だけになってしまう。

そこで、梁はある事に気が付いた。



「(ペドロがアメリカへ行ったら、今俺達が寝ている部屋に余裕が出来る。なおかつ夜は俺と凛さんが二人きりになる…)」



こういった考えをすぐに思い付いてしまうのが、この師範の悪いところだろう。



「ペドロ!体には十分気をつけて行って来るんだぞ!」


「え?お、押忍!」



数秒にして意見がコロッと変わった梁に戸惑いつつ、ペドロは元気よく返事をする。

と、そこへ、またもや黒塗りの高級車が砂埃を巻き上げながら走って来た。運転席から顔を出したのは、案の定アナベベだった。



「どうも、凛さん!今日も相変わらずお美しいですね!」


『アナベベさん、こんにちは』


「おい、俺達には挨拶も無しかよ」


「ん?おお、これは失敬。諸君らも、相変わらず貧相な面構えで結構結構」


「何が結構だ!この腐れ成金野郎が!!」


「梁師範、落ち着いてくださいよ」



やって来て早々に失礼な物言いを繰り返すアナベベに、怒る梁が殴りかかろうとする。それを慣れた手つきで取り押さえるペドロも、今ではよく見る光景となった。

「成金が何しにきやがった!」と言えば、「今日はちょっと、確かめたい事があってな」とアナベベはスーツの襟を正した。



「時に、ペドロ君」


「はい?」


「君、来月の世界格闘技選手権に出場するのかね?」


「はい!あ、もしかしてアナベベさんも出られるんですか?」


「いや、そういうわけではないのだが」



そう言うと、アナベベはちらっと凛を盗み見てから、おほんっとひとつ咳払いをした。



「まあ、その、何だね。君は俺の親友でありライバルであるターちゃんの弟子で、俺にとっては親戚のような間柄だ」


「…そう、ですかね?」


「そうなんだよ!…まあとにかくそんなわけで、君が来月にはアメリカに行ってしまうわけだから、その見送りくらいには行ってやろうかと思ってな」



アナベベらしくない気遣いである。格闘技トーナメントの類には、あまり興味がないというか、成金になってからは保守的な性格になってしまった彼は、自分の身に危険が及ぶと真っ先に逃げるような軟弱な男になってしまったわけで、人数合わせに出場するよう頼んでも「嫌だ!」の一辺倒になってしまう事も最近では当たり前になっていた。


そんな男が、わざわざペドロの出立を見送りたいなどと言うのは、怪しい。



『アナベベさんって、仲間思いな方なんですね』


「いやあ!このくらい人間として当然ですよ!だーはっはっは!」



凛に褒められ、浮かれ調子なアナベベ。彼の目的は無論、この凛の存在にあった。



「(ペドロがアメリカに行くのを見送るフリして、その帰りに凛さんをうちの別荘へ誘っちゃおうっと♪)」


「(金の亡者のアナベベがわざわざ見送りに行きたいなんて言うとは…絶対に裏があるに決まってらぁ!)」


「(なんか…アメリカに行かない方がいいような気がしてきた…)」



しかし、そんな彼らの思惑は、ペドロがアメリカへ出立する前日に崩されることとなってしまうのだった。