撫子無双

もた@夢松熱中
@mota_aaa

自称、貴方のナイト

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『これで良し、っと』



洗濯物を一通り干し終えた凛の額には、薄らと汗が滲んでいる。それを腕で拭いつつ、洗濯籠を持ち上げると、「凛ちゃーん」とヂェーンの声が聞こえた。



「お昼ご飯できたから、食べましょー」


『はい!今行きます』



笑顔で答え、すぐにヂェーン達の元へと駆け寄っていく。すると、ブロロロ…とエンジン音が聞こえた気がした。振り返ると、白い車がこちらに向かって走ってくる。



『ヂェーンさん、車がこちらに…』


「ああ、アナベベよ、きっと」


『アナべべ…?』



ターちゃんと同じくこのアフリカに住んでいる人のようで、ターちゃん達は皆知っているようだ。

キキィッ、とブレーキをかけ車がターちゃんの家の前に停まる。白塗りのリムジンは、どう見てもアフリカの風景の中では違和感を放っている。


そして、ゆっくりと運転席のドアが開いた。しかし、そこから顔を出した男を見て、ターちゃん達は思わず目を疑った。



「ア、アナベベ…その恰好は一体…?」



上下真っ白なタキシードスーツに身を包んだのは、紛れもなくアナベベその人だった。だが彼の腕には、真っ赤な薔薇の花束が抱えられているのだ。すると、なぜかヂェーンがポッと頬を紅く染めた。



「やだ、アナベベったら…私にそんな花束をくれるだなんて…」


「違うわッ!!」



勘違いするヂェーンを一蹴すると、アナベベはその花束を持ち、真っ直ぐに凛の前へと歩み出た。



「凛さん、この花束は貴女に贈る為に買い付けたものです」


『え…私に、ですか…?』


「はい!このアナベベ、貴女と出会ったあの日に、貴女の為に全てを捧げると誓ったのです!!」


「あの日ってどの日よ」


「さあ…」



熱弁するアナベベの台詞に、ターちゃんとヂェーンは呆れながらに呟いた。

ヂェーン達に、自分がアナベベにターちゃんの家を案内してもらったことを説明するも、凛はずいっと目の前に差し出された薔薇の花束に戸惑うばかりであった。



『有難うございます、アナベベさん。本当は私の方からアナベベさんの元へお礼に伺わねばならないのに…』


「いえいえ!自分は当然の事をしたまでですから…」


『まあ、アナベベさんは紳士的なんですね』


「いやー!そんな事ないですよー!なははははっ!」



すっかり調子に乗ってしまったアナベベを、一同は何も言わずに睨みつける。

すると、気を良くしたアナべべは凛を今夜自分の別荘へ来るよう誘い始めた。



「この先にある湖の畔に別荘があるんです。良かったら、今晩そこで二人でディナーなんていかがでしょうか?」


『素敵ですね。でも、私一人で行くわけには…家のお手伝いなどもありますし…』



残念そうにそう呟く凛。すると、一通りの会話を聞いていたヂェーンが「行っていいわよ、凛ちゃん」と優しく声を掛けた。



「凛ちゃんはよく働いてくれてるから、今日はお休みよ」


『ヂェーンさん…でも…』


「いいから!家の事なら大丈夫だから」



ヂェーンの言葉は嬉しいが、それでも不安は残る。チラッとターちゃんの顔色も窺うが、彼は凛と目が合うとニコッと微笑んだ。



「心配しなくて大丈夫。ゆっくりしてきなさい」


『ターちゃん先生…ありがとうございます』



そして、その晩。

アナべべは湖の畔にある別荘にて、凛が来るのを心待ちにしていた。



「ここらで俺の魅力を存分に発揮し、凛さんともっと距離を縮めよう…」



彼の目的は、勿論凛とお付き合いをする為だった。ここまでのアナべべは、凛の目にはしっかりと紳士的な男性として映っているはずだ。他の者達が変な事を言っていなければ。


豪華な食事の並ぶテーブル。その中央に置いてある花瓶に、そっと薔薇を一輪挿してやる。すると、玄関のチャイムが鳴った。



「はーい!今行きまーす!」



るんるんと鼻歌を歌いながら玄関へ向かい、そっとドアを開けた。



「お待ちしてま…」


「やあ、アナべべ!」



待っているのは美しい大和撫子、かと思いきや、なぜかターちゃんの顔が目の前にあった。「ぎゃーっ!?」と思わず驚き後退るアナべべだが、よく見るとその隣にはヂェーンまで立っていた。



「何でお前らが来てんだよ!?」


「だって今夜のディナーいかがですかって、アナべべが言ったんじゃないか」


「俺は凛さんを招待したんだよ!!…って、おい。凛さんはどうした?」



立っているのは二人だけで、肝心の凛の姿が見えない。思わずターちゃんに尋ねると、彼の代わりにヂェーンが答える。



「凛ちゃんなら、ペドロちゃんと梁ちゃんの二人とお留守番してくれてるわよ」


「……は?え、何で?」


「『やはり私一人で御呼ばれするのは心苦しいです。先生方の方が、ディナーへ行くのに相応しいです』って凛ちゃんが言って、」


「「じゃあ、先生とヂェーンさんの夫婦水入らずで行かれてはどうですか?」って、ペドロが言って、」


「「留守なら俺達で預かるから、たまには豪華な飯でも食ってこい」って梁ちゃんが言ってくれたから、二人で来たの」


「誰が熟年夫婦を労わる為にディナーに呼んだっつったよ!?」



思わぬ展開に、アナべべも思わず声を荒げてしまう。しかし、ヂェーンはそんな彼などお構いなしにズカズカと別荘の中へ上がりこんで行く。



「ゴチャゴチャ言ってないで、さっさともてなしなさいよ!この成金!」


「ふざけんな!何が悲しくてお前ら夫婦に飯をご馳走せにゃ…」


「わー!豪華な料理だなー!」


「勝手に上がるな!つうか、待て、せめてスリッパは履けお前ら!!」



結局、アナべべはターちゃん夫妻にディナーをご馳走する羽目になってしまったのであった。