今までも、これからも…。

『光』@キャラベル小説投稿中
@licht_hyde

カルテ0

『松野先生、今日の患者様は先程の方で最後です』

「…あぁ、うん、ありがとう」

看護師からの報告に曖昧な相槌を打ちつつ、僕は今日診察をした患者のカルテを見返していた。

『じゃあお先に失礼します』

「…うん、お疲れ様」

形式的な挨拶を交わし、また視線をカルテに落とす。

最近はこれまでの通院患者に加えて初診の患者がどっと増えた為、診察時間が終わってもこうして一人残ってカルテを確認する日が度々あった。

しかし今日は手術患者が居た為いつもにも増して疲労感が酷い。

急いで終わらせようと気合い入れ直したその時だった。


「お疲れ様ぁ~♪」


部屋に響いたのは場違いな程明るい聞き慣れた声。

「…おそ松」

僕の後ろからひょっこりと顔を覗かせているのは看護師の松野おそ松。

僕の科の専属ナースだ。

「あれぇww?病院内では"松野さん"じゃないんですかぁ?"松野先生ぇ"♪」

「今日の診察は全部終わったし患者も居ないから良いんだよ」


---ちゅっ


そう言って、からかう様にニヤニヤとしているおそ松の口を乱暴に塞ぐ。

「っ、ぷはっ…なにぃww?チョロちゃん欲求不満ww?」

とろんとした瞳をしながらも、あくまで自分のスタイルを崩さないおそ松の口をもう一度塞ぎ、そのまま後ろのベッドに押し倒した。

「あ、わかったぁ♪今日手術したんでしょ?ホントチョロちゃんって分かりやすいよねぇ~♪」

「うっさいな……僕の前でそんな格好をしてるお前が悪い」

「仕事はいいnんむっ」

「お前を前にして仕事なんて出来る訳ねぇだろ………いいから黙って俺に抱かれろ」

「…そういう顔は反則だって///」


---僕、松野チョロ松と、彼、松野おそ松は所謂恋人同士という関係だった。

きっかけは些細な事で、小さい頃から僕の隣にはおそ松が居て、おそ松の隣には僕が居て、それが僕達にとっては普通で当たり前な事だった。

いつしか僕の隣に居るのはおそ松以外に考えられなくなって、その気持ちが恋愛感情だと気付いたのは中学二年生の頃。

交際を始めたのは緑が眩しい中学三年生の夏の日で、学校の帰り道に僕がおそ松に告白をした。

少し恥ずかしそうにはにかみながら頷いてくれたのを覚えている。

今でこそこんな風だけど、当時は手を繋ぐ事すらままならなかった。


「…もっ、チョロちゃんがっつきすぎぃ…」

おそ松が肩で喘ぐ様に息をしながらそう呟いた。

「あ、ごめん…」

「んーん、いーよぉ別にぃ♪…へへへ♪」

素直に謝ると今度は嬉しそうに笑いかけてくる。

「…なんだよ」

「いやぁ、俺幸せモンだなぁって♪(にへらっ)」

そう言ってまた嬉しそうに笑うおそ松を見て、僕はなんだか無性に恥ずかしくなってしまい、思わず顔を背けた。

「……いい加減チョロちゃん止めろよ///」

「えぇ~ww?このタイミングでそれ言う?もっと他に言うことあるでしょ~?」

「…るせぇな」

「もぉ…ホントチョロちゃんは素直じゃないなぁ~」

口ではそう言いつつもおそ松の表情はどこか嬉し気で、まるで説得力が無い。

「これだからチョロちゃnんっ」

まだ小言を言おうとしている口にキスをしてやるとおそ松はようやく静かになった。

……言いたい事も、伝えたい事も山程ある。

でも、口に出したらコイツは間違い無く調子に乗るだろうし、理由は分からないけど、言ってしまえば全て消えて無くなってしまう、そんな気がした。

だから、この言葉は、僕の胸の中だけに留めておこう。


---お前みたいな可愛いい彼女が居る僕は、世界で一番の幸せ者だよ。


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