輪廻転生

『光』@キャラベル小説投稿中
@licht_hyde

悪戯悪魔と泉の女神。

「はあぁ…朝から晩まで狩り狩りって…俺もう疲れたぁ…限界だよぉ…」

ふよふよと力無く飛びながら俺は一つ大きなため息を吐き、そうこぼした。


「あっ!!!いた!!」


そんな俺を見つけるなり飛んでくるヤツが一人。

「おそ松兄さんまた仕事サボったでしょ!?ボクがどだけ働いたと思ってるの!?」

俺の事を『おそ松兄さん』と呼び現在口うるさく小言を垂れているコイツはトド松。

俺とバディを組んでいる死神だ。

「へー、へー、以後気を付けますよぉー」

「絶対反省してないよね!?」

「いーじゃん終わった事なんだしさぁ…トド松が優秀でお兄ちゃん嬉しい~♪」

「うっさいっ!!もう!ホントに次はないからねっ!?」

そう言ってトド松は去っていった。

ちなみにトド松は俺の事を『おそ松兄さん』と呼ぶが、俺達は兄弟でもなんでもない。

血は繋がっていないし俺は1人っ子だ。

でもアイツは初めて会った時から俺の事を『おそ松兄さん』と呼んでいる。

…まぁ俺達悪魔は基本的には堕天して生前の記憶や前世の記憶を消される場合が多い為もしかしたら兄弟だったのかもしれないが、今の俺にはどうでもいい事だ。

「仕事はトド松が片付けてくれたみたいだしー…なぁんか面白い事無いかなぁ…」

出来ればスリルのある面白さがいいんだけど……そうだ!

下界に行こう…!

下界にはエクソシストだとかいう俺達を祓うヤツらがいるらしいし、なんかすごく面白そうだ。

そう思って下界に繰り出そうとした時だった。


『おそ松ぅぅううう!!!お前また仕事をトド松に押し付けたなぁぁあああッ!?!?』


またもやどでかい特大の叫び声が聞こえてきた。

「ゲッ!」

『ゲッ!とはなんだ!聞こえておるぞ!?』

魔界の大王、地獄耳のサタンだ。

「相変わらず声でけぇなぁ…耳が痛い…」

『なんだその態度はッ!?シャキッとせんか!シャキッと!!』

「アンタは俺のなんなんだよww」

『とにかくだ!今回という今回は見逃さんぞ!!今そっちに私の部下を送ったから大人しく捕まって私の元に来い!!よいなッ!?』

「は…?部下を送った…?」

そう言って後ろを見ると…

「うっわッ!?何アレッ!?」

近衛隊の制服を着た大量の悪魔が俺を目掛けて走ってきていた。

「ッ!(ビュッ)」

俺は一目散に逃げ出した。

『止まれぇぇええ!!』

「止まれって言われて止まるバカがどこにいんだよッ!」

流石はサタン直属の近衛隊だ。

みんな桁外れに速い。

でも…

「魔界一逃げ足俺に追い付けるかなッ…!!(ビュッ)」

『クソッ!』

後ろから悔しそうな声が聞こえてくる。

「へっへーん♪俺をなめんなよぉってはぁッ!?」

ちらりと後ろを振り返ると何人かがバイクに乗っていた。

「バイクは卑怯だろッ!?」

俺はとにかく捕まりたくない一心で逃げ続けた。

しかし、段々と確実に俺と近衛隊の距離は縮まってきている。

クソッ…!

このままだと絶対に追い付かれる。

どうする?

どうすれば逃げ切る事が出来る?

逃げながら必死に頭をフル回転させて突破口を探す。

「!」

そしてふと1つの考えが浮かんだ。

このまま下界に逃げてしまえばいいんじゃないか?

近衛隊はサタン直属の部隊だから魔界から離れられない。

すなわち下界に行けば俺を追いかける事も出来なくなる。

下界に行けてしかも逃げ切る事が出来る。

まさに一石二鳥じゃないか!

俺は覚悟を決め、魔界の地面に向かって飛び込んだ。

『なッ!?』

近衛隊の驚愕の声が聞こえる。

確かにいきなり地面に突っ込むなんて頭がおかしいとしか思えない行動だ。

「でもなぁ、ここは下界に通じる通路なんだよッ!!」

場所によっては下界に通じている所がある。

俺はその場所を全て熟知していた。

そして数秒後。


---世界が変わった。


俺の周りは青い空に囲まれ、俺は今空から落下しているんだと把握した。

が、しかし…。

「うわぁぁぁぁあああああッ!?!?」

俺はそんな間抜けな叫び声を上げていた。

何コレッ!?

勢い付けすぎてコントロール効かねぇんだけどッ!?

視界がグルグルするしなんだよコレェエッ!?

ちらりと上を見てもそこには近衛隊の姿はなかった。

「へ!ざまぁみろ!!」

そう呟いた瞬間目の前に泉がある事に気付いたが、時すでに遅し。

「ブッ!?」


---バッシャーン


俺は盛大に泉に突っ込んでいた。

「ガボッ…!?」

なんだこの水ッ!?

身体中がピリピリとする。

焦っていたのもあると思うが、全くもって呼吸器官が役に立たない。

意識が朦朧として状況が把握出来ない。

あ……もう駄目かも……。

そうして俺は意識を手放した。


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---バッシャーン


「ッ!?」

突然の音に僕は驚いて飛び上がった。

遙か遠くで何かがバシャバシャとまるで溺れているかのように暴れているが、数秒後にはピタリと動きを止め、動かなくなってしまった。

僕は急いで駆け寄り彼を抱きかかえた。

しかし彼の身体に異変を感じる。

普通の人間ならこの泉に落ちた程度でこんなに皮膚が傷つく事はない。

考えるよりも先に取り敢えずは彼を陸地に上げなければ本当にこのまま死んでしまう。


―――ザバァッ


「よいしょっと…(ドサッ)」

僕は彼を陸地に上げ、彼の身体を見て驚愕した。

「なッ!?」

ボロボロだった皮膚が再生していく。

明らかに人間じゃない。

それに、彼には角、羽根、そして尻尾が生えていた。

そう、彼は悪魔だったのだ。


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「ッ、ゲホッ!ゲホッ!」

口からいくらかの水を吐き出して俺は意識を取り戻した。

そしてふと近くに誰かがいる事に気が付いた。

「君が俺を助けてくれたの?ありが…ッ!?」

顔を上げた視線の先にいたのは、葉っぱの王冠を被ったヤツだったが、そんな事はどうでもいい。

彼の顔を見た途端何故だかひどく懐かしく感じた。

「お礼なんていりません。早くここから立ち去って下さい」

「え?」

そう冷たく言い放たれて目が点になった。

初対面なのになんでこんなに邪険に扱われなきゃならないのだろうか。

「貴方はここにいるべき存在じゃありません。ここは神聖な泉なのですから」

下界なんだから神聖も何も無い気がするんだけど…。

「君誰?」

「私はこの泉の女神です」

「女神ッ!?」

「何か不満でも…?」

おかしい…俺は下界に来たはずなのに何故女神が…?

「私は人間界を住みかとしている女神ですから」

「あぁ!そーゆ事か!」

道理で下界に女神がいるわけだ。

「だから身体中ピリピリしたんだ」

「それよりも早くここから立ち去って下さい」

「なんでそんなに俺を嫌うの?傷付くんだけど…」

俺がそう言うとソイツはまるでゴミクズを見るような目で俺を見てきた。

「貴方は悪魔だ。悪事を働く意地汚い人種。ここでの貴方はそこに落ちているゴミよりも存在価値が無い。つまりゴミ以下の存在だ。生憎そんな奴らに払う敬意など僕は持ち合わせていないし、僕はそこまで優しくないからね」

「…(ぽかーん)」

「…なんだよ」

俺が目をぱちくりしていると女神様は不機嫌そうにそう言った。

「いや、随分と強気な女神様だなと思って…」

「!い、今の事は忘れて下さい…少々取り乱してしまいました…(ぷいっ)」

そう言って女神様はばつが悪そうに顔を背けてしまう。

「…可愛い(ボソッ)」

「はぁッ!?」

「あッ!いや、聞こえてたッ!?」

女神様はサタンと同じくらい地獄耳らしい。

俺がこぼした言葉に食ってかかってきた。

「言っとくけど僕は女神だけど立派な男だからなッ!?そんな奴に向かって可愛いとかお前頭大丈夫かッ!?」

「俺が言った可愛いはそういう方向の可愛いじゃなくて弟みたいで可愛いって意味だよ!!」

「誰が弟だ!あぁッ!?オメェみたいな悪魔と兄弟だなんてまっぴらごめんだ!!」

「ごめんってぇ!そんなに怒んないでよ!」

「うっせー!!ケツ毛燃えるわ!!」

「何ソレッ!?どーゆ事ッ!?」

「オラァ!浄化されたくなかったらさっさと帰れ!!」

「嫌だよ!俺追われてんだもん!!」

「だもんじゃねぇよ!クソが!!全っ然可愛くねぇよ!!」

「女神様手厳しい!」

「だからオメェに優しくする理由がねぇって言ってんだろうが!さっさと帰れ!」

「うぅー!分かったよ帰るよ!」

俺がそう言うと女神様も泉に戻るらしくさっさと帰れと言って泉に沈みかけていた。

「また来るね、女神様♪」

俺は女神様に向かってそう言った。

「うっせー!二度とくんな!」

女神様の罵詈雑言を背中に俺はその場を後にした。


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「全く…なんなんだよあの悪魔…」

全然帰んなかったし可愛いとか言ってくるし妙に馴れ馴れしく接してくるし、おまけに「また来る」とか言ってきやがった…。

おかげで後半はほぼ素でしゃべってしまったじゃないか。

でも、会話の中に、あいつの顔に、何処か懐かしさを感じた。

「…ってな訳ないだろ」

そう言ってその考えを振り払う。

「あんな奴と兄弟とか有り得ない…」

そう、あいつは悪魔で僕は女神。

人種も、住んでいる世界もまるで違う。

でも、何故だかあいつをひどく懐かしく感じた。

初めて会った気がしなかった。

「…~~あぁぁあ!!もうッ!!」

僕はもやもやとしたものを払うようにそう叫んだ。