主が好きな鶴と鶴が好きな月

藍音カボチャ@低浮上頑張る
@Tmkm8743

秋空:風になびく布の視線

俺、鶴丸国永は主の部屋で近侍の仕事をしていた。

ここ数日政府から新しい刀が見つかったなどの連絡が無かった。最近俺達の本丸に来た奴と来てから出陣をあまりしていなかった奴らは出陣をしていたが、練度やレベルといったゲームのように組み込まれている俺達個々のデータが全て上限に達したことになっている俺や三日月、貞坊といった面々は暫く仕事がなかった。


だが先日、政府から新しい男士が見つかったとの報告と、また今月から審神者は大阪城へ出陣するようにという連絡が回ってきた。

その事もあり、久しぶりに俺は近侍としての仕事を再開し、2日ほど俺は主の部屋で寝泊まりするような形で仕事をしている。


これは俺が余計なことを考えたくないからということもあった。この前の内番で貞坊に言われた事、三日月のこと。そして主への本当の気持ちは何なのか。


ストレスのように積もってくるこの考えが、俺の頭をグルグルと駆け巡る。

嫌になって手合わせ部屋の人形を切り崩した時は光坊に怒られた。なら近侍の仕事で無心になればいいじゃないか。そう思った時に政府から連絡が来たのだ。


主がパソコンに向かって今本丸にいる男士のデータを見つつ、政府への資料をまとめる。


「鶴丸、急なんだけど明日政府の方に行ってくるから仕事頼んでもいいかな」

「本当に急だな…で、俺はついて行かなくていいのか?」


主は少し考える。暫くして少し残念そうな顔をして、ごめん。と一言。


「要件、3か月くらい前にあった審神者殺人事件の本丸にいた男士達のことでさ…鶴丸連れてくのは危ないかなって…それで清光に着いてってもらうんだ。清光には話してる」


審神者殺人事件。他所の本丸の俺が主を殺したっていう話か…

俺ならしないと思うが、確かに演練であの本丸と当たった時は同一人物なのに、あっちの俺は負のオーラを持ってるような気がした。

きっと他所の本丸の俺でも俺が怖いだろう。


「あぁ…その件ならしょうがないな。いくらほかの本丸でも犯人はその本丸の俺だったんだ。きっと警戒するだろう?」

「ありがとう…」


無理して笑うように、主は笑顔を見せた。


そして次の日の昼


「…刀…預かってきちゃいました…」


一同に目を丸くした。そりゃそうだ。俺も驚いている。

主が政府から刀を預かってきた。期間は1ヶ月程度だが、預かってほしいと言われたそうだ。その刀は山姥切国広。事件の本丸の初期刀らしい。政府にいる間、主を守れなかったとずっと嘆いていたらしく、それで気分転換という名の心の入れ替えで呼ばれたのだと俺は察した。

生憎この本丸には既に山姥切は居るが、レベルが高いからか遠征が多く、そしてまるで社畜かと思うほど仕事熱心なほかの本丸に比べたら珍しいタイプの山姥切国広だ。鉢合わせする機会もほぼ無いだろう…

流石に週に1.2回は休みをあげているが…


「じゃあ、顕現させるよ」


主がそう言うと、はあぁっ!と声を出す。すると刀の周りが光に包まれ、山姥切国広が顕現した。


「…お前が、今日からお世話になる本丸の主か」

「そうだよ。よろしくね、山姥切国広さん。ところで…」

「悪いが、俺に近づかないでくれ。それと、この本丸の近侍は誰だ」


目つきが悪いからか、ギロりとこちらを睨む。一瞬寒気がしたが、俺を睨んだのだろうとすぐわかった。やはり、いくら他人の本丸だろうと鶴丸国永という存在が怖いのかもしれん


「この本丸の近侍は鶴丸国永。それと、今は政府命令の大阪城や江戸城の作戦を練ったり記録を作らなきゃいけないから長く話せないんだ。清光、本丸の案内頼んでいいかな」

「はーい、山姥切、ここはいくら暫くの間と言えどあんたのいる本丸なんだから好きに使っていいんだからね?」


そうか…と一言答えると、主に礼をして部屋を出てった。そして去り際に俺に小さな声で言った。


「他人の本丸と言えど、お前のことを監視するつもりだからな」


ゾクッと冷たい声が俺の耳に入る。

やはり、俺のことは気に入らないんだと感じた。また悩み事が増える。最近驚きが無くとも、退屈ではない原因を作るこの不穏な気持ちがまた増えて、俺はストレスに潰されそうな気持ちになった。


_寒気が走る秋空に、不穏な空気が渦巻き始める

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