異世界食堂へようこそ!

ミユ:ワンピ大好き!
@MF_wanp

プロローグ 『仕込み中』

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(主に店主目線)

俺が死んだ爺さんからこの店を継いで、かれこれ10年になる。


花の東京、とまではいかないが、少なくとも県内では一番栄えている町のオフィス街。そこから歩いて3分もかからない場所に一つの商店街がある。

場所柄、飯屋がいくつも立ち並び、毎日昼休みともなれば昼飯を求めてサラリーマンやOLが押寄せるこの商店街の入口近くに建つ、地上3階地下1階、羽の生えた犬の看板が目立つビルの、地下1階。そこに俺の……いや、俺達2人の店がある。


店の名前は『洋食のねこや』


今時珍しい、年代物の真鍮(しんちゅう)で出来た取っ手の黒い樫の木の扉。招き猫みたいに右前足を上げた猫の絵が描かれたこの扉が目印だ。


犬と猫なら断然、猫派だった爺さんが今からざっと50年ぐらい前に始めた店で、どっちかと言うと犬派の俺が継いでからは俺の店でもある。それにこの店にはもう1人、俺の大切な人で、最愛の妻の晴華。

俺の料理の手伝いももちろん、接客も優しい笑顔でテキパキとやって、食事の後のスイーツも晴華が作っている。その人気のおかげなのか、商店街の中じゃあ老舗なんていわれてるんだぜ。


とはいえ、洋食の、なんて言っちゃいるがメニューは結構適当だ。じいさんの頃から増え続けてきたメニューの中には、明らかに洋食じゃないだろって料理も結構混じってる。


昔、大学を出てすぐの頃、まだ恋人同士だった晴華とこの店を手伝い始めた時に、


「なんでそんなになってるのか」


とじいさんに聞いたことがある。じいさんは日本ではなく大陸生まれで、戦争が終わってまもない頃に天涯孤独、裸一貫で日本に渡ってきた、なんて嘘か本当かよくわからない過去の持ち主だ。


そのせいなのか、どこか日本人ぽくなかったじいさん、俺や晴華に力説した。


「洋食ってのはよ、海の向こうから来た食い物って意味だろ?つまり、元々日本になかったもんは大体洋食ってこった。まぁ、それにあれだ。飯屋なんてなぁ何屋を名乗ってようが、飯が旨けりゃそれで良いんだよ」


と。ちなみに、その日の賄い(まかない)はランチの日替わりメニューで出した豚の角煮だった。賄い用に取り分けた豚の角煮の脂がよく乗った甘い肉切れをおかずに、どんぶり飯を豪快に書き込みながらじいさんはそんなことを言っていた訳で、俺も思わず、


「あぁ、そういうもんか」


と、深く納得し、晴華がそのやり取りに笑っているのを覚えている。


……まぁそんな 訳で、洋食以外のメニューも普通に出してたりするのはご愛嬌。もちろん一番得意なのはじいさんも俺も晴華も洋食やスイーツだ。

それに、これでも評判は結構良いんだぜ。じいさん仕込みの料理の味はもちろん、食い盛りの若いやつら向けにライス、パンとスープはお代わり自由。ついでにメニューは1番高いものでも千円までってのがじいさんと俺、晴華のこだわりといや、こだわりだ。


有難いことに毎日平日の昼間は近所のサラリーマン客のおかげで戦場で、晴華が厨房と店内を行ったり来たりと忙しく回っている。夜は仕事帰りのサラリーマンに、ライスとパンのおかわり目当ての貧乏学生共でそこそこ客入り、諸々差っ引いても俺と晴華の2人が食うに困らない程度にはもうかっている。


それが、元はじいさんの店で、今は俺と晴華の店でもある『洋食のねこや』だ。


営業時間は11時から15時までのランチタイムと、17時から21時までのディナータイムで、定休日は毎週土日の2日間。テーブル数は10で、特に混雑する時は相席をお願いすることもある。自分が言うのもなんだが、どこにでもある夫婦で営む普通の飯屋さ。



……


あぁ、でも、一つだけ、多分他にはない特別な事情がある。


週に一回、毎週土曜日。洋食のねこやでは特別営業ってやつを実施している。


うん?土曜日は定休日じゃなかったのかって?


その通り。だから特別営業。


特別営業の日には『こっち』の客を迎え入れる訳には行かないので、表向きは休みにしてる。じゃないと色々困ったことになるのが目に見えてるしな……。


といっても、俺もそりゃあ晴華も詳しいことはよく知らない。今からざっと30年前、俺がまだ小学校上がるかどうかの頃に今の特別営業を始めた張本人のじいさんは俺に詳しい話をする前にポックリあの世に逝っちまったんでな。


まぁ、前々から


「俺が死んだらこの店はやる。だからもし、俺が死んで店を継いでも特別営業を続けてくれよ」


と言い含められてたのもあって、俺は今でも特別営業を続けているし、土曜日の客が何者なのか、向こうがどんな場所なのかはあまり気にしないことにしている。客が来て、その客に飯を出し、旨いと思ってもらって、気持ちよく金を払ってもらう。それで充分。晴華も……


晴華「お客様が誰であっても、あなたの気持ちの入った料理や私スイーツを食べてもらえて、満足して貰えるのが一番だから、扉の向こうには興味は行かないの。もし、扉の向こうに行っちゃってあなたと離れ離れになるのは嫌だしね……」



と優しく笑って言っている。だから、来る客が『こっち』の方々か『あっち』の方々かは関係ない。


そんな訳で、洋食のねこやにはもう1つ変わった名が付いている。



異世界食堂。


それが『向こうの連中』が呼ぶ、うちの店のもう1つの名だ。