ツキノ帝国〜女神〜

しおり🎋˚✩*
@star_light213

Episode.3◆邂逅する者達





「あら」

「まぁ、こんなところで会うなんて偶然ね、雪」


司令室へ向かう通路を歩いていると、花園雪を先頭にした紅組の適合者6人と、姫川瑞希が率いる蒼組の適合者6人が鉢合わせした。お互い行き先を告げずとも、司令室に向かっていることを察したらしい。


「ふふ、偶然だなんて言って、本当はお互いここで会うのを分かっていたんじゃない?」

「確信ではないけれど、そうあれば良い、とは思っていたわ」

「また瑞希はそういう意味深なこと言うんだから…」

「瑞希ちゃんなら、未来が見える力があってもおかしくなさそうだけどね」

「愛まで…でも、瑞希と雪ならその力、習得出来そうだと思っちゃうね」


雪は紅組の、瑞希は蒼組の委員長として、学生時代からお互いに交流を持っていた。その二人の親友である愛や結乃も交えた4人は、士官学校の中でも特に中が良かった。下級生に限らず、同級生からも羨望の眼差しを受けていた。そんな輝かしい先輩たちの後ろでヒソヒソと話し始める後輩たち。


「な、なんだか眩しい…!」

「千桜ちゃん、それすっごい分かる…!!」

「4人ともオーラが凄まじい!」

「テレレレッテレ~♪そんな時は、私が発明したオーラ測定器~」

「祭莉ちゃん、ここで爆発起こしちゃだめだよ…!」


他生徒よりは4人と仲の良い千桜、あかね、若葉、祭莉、ひなでさえも、時折圧倒的オーラに話しかけるのをためらってしまう時がある。が、決して敬遠したいわけではなく、ただ単純に尊敬をしているだけである。千桜たちのそんな思いも露知らず、マイペースに話を続けるメンバーが3人。


「そこにいるのはクリス」

「お~、本当だ!」

「げっ…椿も合格してたのね…さすがだわ」

「クリスに褒められると照れてしまうわ」

「褒めてないわよ!」

「艦隊に入ってもよろしくね~!」

「ま、まぁ、麗奈となら仲良くしてあげなくもないわ!」

「私とも仲良くしましょう?」


ピトッ


「ひゃああああ!ちょっと、いきなりどこ触ってるのよ!」


突然の悲鳴に全員の視線が一気にクリスへと集まる。もちろん、知り合い以外の通行人もいる。さすがに恥ずかしくなったのか、椿の手を無言でパチンと叩き落して雪の方を睨んだ。こんな時でも椿は真顔で「あん、痛い」と言って払われた手をさすっている。


「雪が立ち話してるせいで恥かいたじゃないの!早く司令室に行くわよ!」

「そうだったわね、ごめんなさいクリス」

「クリス~、それは完全に八つ当たりだよ~?」

「そんなところも可愛いわ」

「さぁさぁ、クリスをからかうのも程々にしないと、今度は司令官に怒られるわよ?」


瑞希の一言に全員が青ざめた。噂によると、司令官は怒るととてつもなく怖いらしい。入隊初日に怒号が飛ぶのだけは勘弁、とばかりに、12人は少し早足で司令室へと向かっていった。


************


「花園雪、如月愛、兎川千桜、結城若葉、桃崎ひな、聖クリス。以上6名は第五艦隊の所属とする」

「はい!」

「隊長は花園雪。しっかり頼むぞ」

「はい、尽力致します」


あれから数分後、司令室に着きドアをノックすると、中から「どうぞ」という司令官の声が聞こえた。幸い司令官は怒っておらず、何の問題もなく所属が言い渡された。隊長が雪になるのはみんな予想済みだったようで、クリスが「くっ・・・」とこぼした以外は特に反対意見もなく、すんなりと受け入れられた。


「そして、姫川瑞希、照瀬結乃、元宮祭莉、朝霧あかね、伊地崎麗奈、天童院椿。以上6名は第六艦隊所属とする」

「はい!」

「隊長は姫川瑞希だ」


こちらも隊長はみんな予想していた通りの人物が指名されたらしく、「やっぱりね~」という笑みがこぼれる。しかし、そのすぐ後、瑞希がゆっくりと手を挙げると、誰も予想していないであろう言葉を発した。


「すみません、それはお受け出来ません」

「なにか不都合でもあるのか?」

「いいえ、私に都合が悪いわけではありません。ただ、自分たちの隊長は自分たちで決めたいのです」

「・・・・・・」


少し考える素振りを見せる司令官。その間の居心地の悪さに、周りはそわそわし始め何度か瑞希を盗み見る。が、当の本人はいつもと変わらない、穏やかな笑顔を浮かべるだけだった。


「分かった。お前たち自身で決めることを認めよう。だが、話し合いをしたところで姫川に票が集まるだけだと思うが」

「そうだよ瑞希。多分、みんな瑞希が一番隊長にふさわしいって思ってるよ?」

「うん、私も瑞希がいいと思う」

「そうね、話し合いで決めるなら瑞希がいいと、私の勘も言っているわ。・・・話し合いなら、ね」


椿の意味深な発言を聞き、嫌な予感を覚える第六艦隊のメンバーたち。おそるおそる瑞希の顔を覗くと、ふふっと笑いがこぼれた。


「あらあら、誰が話し合いで決めると言ったのかしら?」

「何?」


予想外の言葉に、司令官が鋭い眼光で瑞希を見据える。それに怯むことなく、瑞希はまっすぐ司令官を見つめた。


「リングに選ばれるのは、その人の才能もあれど運も然り。なら、私たちをまとめ導く隊長を選ぶのも運であって良いと思いませんか?」

「運だけで艦隊の長を決めろと言うのか」

「私の仲間はみんな優秀ですよ?誰が隊長になってもきっと上手くいきます」


そうして、またしばしの沈黙が流れる。第五艦隊のメンバーもハラハラしながらその始終を見守っていた。雪だけは瑞希の本心が分かっているのか、穏やかな顔をしていた。しばらく司令官と瑞希が睨み合っていると、司令官が小さく息を吐いた。


「分かった。隊長の件は姫川に一任する」

「ありがとうございます」

「えっ…いいんですか!?」


予想外の答えに思わず結乃が声を上げる。他のメンバーも目を丸くしていた。怖いと噂の司令官であるから、さすがに怒鳴られるのを覚悟していたらしい。


「私が隊長に相応しいと思った姫川がそう言うんだ。悪い方へは行かないだろう」

「は、はぁ…」

「さすが瑞希。すでに司令官のハートをがっちりホールド」

「祭莉ちゃん、それはちょっと違うような…」

「それで?何で決めるの?この麗奈ちゃんが占ってあげてもいいわよ!」

「それも素敵だけど、決めると言えばやはりアレよね、瑞希」

「ええ、お決まりのア・レ♪」


と言って瑞希がどこからか取り出したのはあみだくじだった。これには思わず第五艦隊のメンバーも「えぇ!?」と声を揃えたが、瑞希たちは気にせずあみだくじを始めるのだった。





「さぁ、第五、第六艦隊ともに隊長も決まったことですし、これから頑張りましょう」

「そうね。お互い頑張りましょう」


そう言いながら、瑞希と雪は笑顔で握手を交わした。

ちなみにあみだくじの結果、隊長は椿に決定した。


「ふふふ。これから面白くなりそうね」






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