ずれて繋がる稲葉山

鴨鍋将軍
@sO___SAK

 死ぬにしてはあまりにも若かった。自分でもそう思う。

 十四で家督を継ぎ、織田共を防ぎつつ消えてゆく家臣等をどうにか思い留まらせようと説得へ向かい、けれど終ぞそれは叶わず、去り際に祖父と父について語られ、そうして比較される。まるで贋作を売りつけられたとでも言いたそうな顔であったことは、よく覚えている。

 龍興は、酒と女に潰れていた。比較をする馬鹿の相手をしているよりも、女の相手をしていた方がずっと楽しいし、拾ってやった双子の家臣は自分によく尽くしてくれた。それで良かった。

 それなのに、他がそれを許さない。竹中が、それを許しはしなかった。たったの十数名に、祖父が腰を下ろした城を落とされたのだ。そこから先は全部を失った。城は無い、双子の家臣も居ない。掴めるものを掴もうとしなかったつけが、これだった。そんな龍興を見捨てずに客将として扱ってくれた朝倉の義景には悪態を吐きつつも感謝をしていた。だからこそ、評価分には働いた。大器晩成の男なのだなと、言ってくれたような気がする。打倒とまではいかないが、織田を苦しめる為にあらゆる手を使った。祖父や父の血は間違いなく自分にもあるのだと確信した瞬間であった。この時にはもう女の味も忘れてひたすら地形図を見ながら次の策を次の策をと命を削っていた。

 だが、人生というものはそう上手くはいってくれない。あっさりとまではいかないが、あっけない人生であったくらいは思った。龍興を斬った男の顔は、昔去っていった重臣の面影があったように見える。

 体中が痛い。見上げるのが酷く恐ろしい。きっと首を落とされるのだろう。想像を絶する痛さなのだろう。父はきっと知らないのだろう、けれど祖父は知っているのだろう。様々な事が一気に龍興の中を駆け巡る。駆け巡れど、終着点は永遠に見つからない。

 せめてもう少し生きてみたかった。今の俺であれば織田なんてひょっとするかもしれないのに。

 髪を掴まれ、頭上に鎧通しが鈍く光ったような気がする。嗚呼、もう終わりか。情けない事に辞世の句の一つも詠めやしなかった。


 天正元年、八月の事であった。

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