本の住人

東雲 皓月
@ShinonomeKouget

「チカ×キョウシロウ」出逢い

 


春。それはとても美しく桜が咲き、誰もが心を穏やかにさせる素敵な季節。


けれど、その中には理解の出来ない乱れた心を持つ者もいる。私はそんな”異業者“を祓う役目を果たす為、今日も忙しなく目を光らせていた。


“────キエ、テ、シマエ───”


チリンッチリンッ


銀色の小さな鈴の音が“異業者”が現れた合図であり、耳にした私の役目が開始される合図でもあった。


「…現れたか」


鈴の音からして、今回の“異業者”は産まれたばかりの赤子だろうと踏んだ私は鞄から筆箱を取り出しながら焦る事もなく歩みを止める事なく、ただそこに居るだろう者に近付く。


学校の正門で入る事すら出来ずに立ち尽くす一人の男子生徒が目に入る。産まれたばかりの赤子なら結界に入る事すら出来ないのは当然。だが、それを放って置けば後々厄介になり面倒だ。


「今、楽にしてやろう」


“───ニ、クイ────ツラ、イ───”


何がそんなに憎いというのか、辛いと思うのか私には分からない。しかし、それはこの男子生徒も同じだろう。生気のない虚ろな瞳に呆然と立ち尽くすだけの、哀れな生徒を救う為に私は握っていた筆箱から消しゴムを取り出す。


至って普通の筆箱、普通の消しゴム。私はそんな文具で男子生徒の“黒く汚れた”頬に向けて平手打ちを食らわすように消しゴムを叩き付ける。


パチンッ


弾かれたような音と同時に、男子生徒の額は見るみる見違える程に“黒く汚れた”部分が消えていく。


頬は若干赤くなるが、これでこの男子生徒は“ただの生徒”に戻る。


「……あれ、何してたんだっけ俺…」


「君、早く入らないと遅刻をするぞ」


「かか、会長!?」


「見た所、君は二年生だな?門を閉めるから早くしなさい」


「は、はぃい!!」


慌てふためく男子生徒は、先程の出来事を覚えていないように普通に中へと入り学校の玄関へと小走りに向かう。


否、ようにではなく本当に覚えていないと言った方が正しい。


「さて、私も入るか…」


「・・・何、今の?」


「ッ!?」


ただの独り言に返ってくる声。それに振り返った私は驚くように目を見開いた。


誰にも見えないと思っていたし、誰かが見ていたなどと今までになかった異例だったからだ。


そこに立つ一人の男子生徒は、だらしない格好に風紀を乱すような派手な色をした髪をして私を捉えている。しかし、不思議と彼に似合うと思ってしまう。


「───ねぇ、教えてよ」


「・・・・・はっ?」


「君の事。知りたいんだ」


はにかむように笑顔を見せる彼は、突然にも程がある言葉で私の心を乱す。まだ頭の整理が整っていないというのに、私を見る彼の表情が何を考えているのか理解不能だった。


緩やかな風が吹き、桜の花びらが舞う中で私達はこうして初めての出逢いをする。


そしてこの出逢いがもたらすのは、私にとってある意味の“異業者”である事を今の私は知るよしもなかった。


著作者の他の作品

女主人公が色々最強って話。第二章からは『東離劍遊紀2』の話を沿った物語にな...