ナンバーズーThe Story of Outside World

YSH@創作の倉
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第1章「傭兵編 セントラル傭兵事務所」・戦場を求める武士達(1ー1)

グランダ大大陸中部に存在する都市ラムダリオン、そこは赤青緑の国旗を掲げ武帝、龍帝、賢帝の3勢力の息のかかった混色国家である。また世界最大規模の傭兵事務所の本部をその地に構え、最も血の気の多い荒くれ者共が集まり栄える地であった。ヨハネス達先行部隊がログレス大陸を発って早1年が過ぎた蒼穹が大空を支配するある日、ひと仕事を終えた1人の青年がとある建物の戸を潜った。


「流石はセントラル傭兵統合事務所本部ってトコロだな。なかなかどうして強そうなのがウジャウジャいるじゃねぇか、本部にくる事なんざ滅多に無かったモンだから割と驚いたな。」


その男は1枚の紙切れを片手に辺りを見渡しながらその建物内で一直線に歩を進める。その様子は初めてここを訪れるのか彼は初めて訪れるテーマパークの多種多様なアトラクションに目移りする童心を彷彿とさせる様な仕草とも見受けられた。その周りには傭兵事務所本部という事だけあって傭兵と思しき屈強な戦士達が様々な武器を肩や腰等に懸架して広々とした半円状のロビーに群がっていた。それらを掻き分け彼は数あるロビーの窓口の1つに足を止める。


「いらっしゃいませ、今回はどのようなご要件でしょうか。」


「傭兵ID X0081ーE03N9584ー0577の依頼完了の報告だ。それとカードの期限がそろそろ過ぎちまうからそれの更新。」


「傭兵ID X0081ーE03N9584ー0577…、ヨハネス シン ヒースクリフ様ですね。承りました。依頼内容ー反乱軍掃討作戦ー傭兵派遣の完了を確認しました。傭兵カードの更新手続きの後クレジットの送金をご確認ください。」



依頼書に見える紙切れと1枚のカードをロビーに提出した逆立った黒髪に紅の瞳のその男の名はヨハネス シン ヒースクリフであった。しかし身につけていたのは1年前の黄金の装飾をあしらえた赤いジャケットとは違い、胸元が少し開いたワイシャツの上に黒の丈の長い、焔の様な赤い模様の裾が破けたコート、その上から必要最低限の防具を装備した以前より白兵戦を意識した容姿をしていた。そしてロビーの女性スタッフは魔術と科学の中間点と表現できそうな青い半透明のキーボード状のコンソールをポチポチと叩く。


「お待たせ致しました。報酬の精算及びカードの更新が終了致しました。ご利用ありがとうございました。」


手続きを終えたヨハネスはロビーの女性スタッフから提出したカードを受け取りその場を後にした。


「へーぇ、まぁまぁ入ってんじゃん。流石は四帝の一角と言われるだけあるな。日雇いの傭兵にもこれどけ払うとは案外太っ腹なんだな。」


ヨハネスは傭兵カードと呼ばれる個人情報管理端末のようなものから出力される先程のロビーのスタッフが使用していたようなコンソールを操作しながら報酬の金額を確かめる。思った以上に送金されていたらしく少し嬉しそうにも伺えた。カードの操作に気を取られていたのか、ヨハネスは偶然にも彼の進行方向を横切ろうとしていた1人の和服少女とぶつかりそうになった瞬間。


「前方不注意ですよ。歩きながらのカード操作はあまりよろしいとは言えませんね。それと傭兵ともあろうお方が注意不足とはね…、以後注意してください。」


ぶつかりそうになったその少女はヨハネスを流水の様とも表現できそうな靱やかな動作で避ける。そして注意喚起と言わんばかりに腰に携えていた刀を抜き彼の首元に刀身を曝け出す。


「お…おう、分かったよ。悪かった。だからもうそんな物騒なモンしまえ、余計な誤解を招きかねねぇよ。」


華奢な女性にも関わらず凄まじい気迫を醸し出す彼女に圧倒されたのか、自分にも落ち度があるからかヨハネスは両手を上げながら謝罪を述べる。


「そうですね。私も少々大人気なかったようですね。次からは気をつけてくだされば幸いです。では。」


曝け出した脅迫の刃を納刀し彼女はそう言い残して去っていった。一方のヨハネスは彼自身、様々な戦場を転々としていたがあそこまで凄みを持つ者と会うのは初めてらしく驚いた様子を覗かせる


「ありゃぁ戦場に咲く桜の異名を持つ東雲 士乃だな。アンタえらい人と一悶着やっちまったみてぇだな。」


一連の騒動を目撃していた1人の中年の傭兵がヨハネスに声をかける。どうやら先程の少女は東雲 士乃という名らしい。


「東雲 士乃って誰だよ。それとアンタも。」


「俺は通りすがりの傭兵ってところだな。まぁ気軽にヨーヘイとでも呼べ。」


「なんじゃそりゃ、見たら分かるしそのまんまじゃねぇか…。」


突然話しかけてきた男性に困惑しながら誰だと聞くがあまりに雑な自己紹介に返って余計困惑するそんなヨハネスをさておきヨーヘイは本題を再開させる。


「まぁそんなことより、傭兵序列3位の東雲 士乃を知らないってアンタもしかして傭兵序列すら知らないんじゃないだろうな!」


「なんだその傭兵序列ってのは…。まぁここに来たのは1年前だしな、まだまだ知らないことだらけだ。」


「まぁそれなら仕方がない。いいか、傭兵序列というものは所謂幾千といる傭兵をランク付けしたものだ。主に個人個人の強さや依頼主の評価でランク付けされ、それを基準に舞い込んでくる依頼や貰える報酬金額、そして傭兵としての格が上がっていくっていうシステムな訳だ。」


親切にも通りすがりの傭兵ことヨーヘイはまだ外の世界に来て月日が浅いヨハネスに親切に教える。どうやら自分が先程ぶつかりかけた東雲 士乃という女性は大変ビッグな存在だったらしい。


「へぇ、そりゃあ大層な人物って訳だな。その傭兵序列ってのはどこで見れんだよ。」


「右下のそれっぽいマークを押すとランキング一覧と自身の序列が確認出来る。」


「大雑把な説明どうも。」


自己紹介も説明も大雑把なヨーヘイの指示された通りヨハネスはカードから出るコンソールを操作してみる。


「んー、97位…、って出てるな。報酬がいつもより多かったのは最近になって100位切ったからか…。で、ヨーヘイ。お前は何位なんだ?」


何気ない仕草でヨハネスはヨーヘイの序列も聞いてみるが当のヨーヘイは何故かガックリした様子で膝を崩し地に手をついていた。


「負けた…、2149位…。傭兵序列も知らないぽっと出の新人に抜かれるなんて…。」


初心者に色々と教えてあげようとしていた親切心の塊のヨーヘイはその初心者に序列をあっさりと抜かされていた事に尋常ではない程気を落とす。気にすんなよ、と肩に手をかけてフォローするヨハネスだったが返って逆効果のようにも見えた。そのあまりの落ち込みようにフォローしたはずのヨハネスも少し困惑の表情を見せていた。