一牛吼地

もた
@m_o_t_a

骨董屋の娘

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平界の城下町キッカには、魔法騎士団「黒の暴牛」の団長であるヤミがよく利用する骨董屋があるという。この店は刀鍛冶であった父親の影響もあり、店の奥には鍛冶場が設けられている。

今日は刃毀れした自身の武器の手入れを依頼するというヤミに連れられ、アスタとノエルもその店へ同行することになった。町の中心部から少し歩いた場所に、鍛冶場の併設された骨董屋「アメフラシ」はあった。


古びた外観でとても賑わっているようには見えない店だが、その扉を開くとたくさんの魔道具がずらりと並べられている。


「おおお!!何かたくさん魔道具が置いてある!!」

『あら!いらっしゃい、ヤミさん』

「おう、ロア。親父はいるか?」


店の奥から現れた美しい女性はヤミとも顔馴染みのようで、『ちょっと待ってて下さい』と再び店の奥へ行くとすぐに初老の男性を連れて戻ってきた。

この店の店主であるカジは久しく見なかった顔に「おぉ」と少し驚いたような声を出した。


「ヤミじゃねえか。相変わらずむさ苦しい面だなぁ」

「うるせぇよジジイ。それよりこいつの修理頼むわ」

「ん?何だ、また随分と荒っぽい使い方しやがったな」


刃毀れのひどい刀を見つめ溜息をつく店主だが、ヤミの無理な使い方は今に始まったことでもない。簡単に状態を確認すると「三日で出来っから適当な時に来い」とだけ言って再び店の奥へ戻っていってしまった。


「愛想のねえジジイだな」

『あれでもヤミさんのことをいつも気にしていたんですよ?王都襲撃の件もあって、最近は何かと物騒ですし』

「ジジイに心配されるほど俺は柔じゃねえよ」

『ふふ、相変わらずですね』


そう言ってクスリと笑うロアだが、彼と共に来店した二人の少年少女を見つけふわりと微笑んだ。


『貴方達は新しい団員さんかしら?』

「は、はい!俺はアスタって言います!初めまして!」

「ノエル・シルヴァです。初めまして」

『私はロア・ダクマリー。ここにある魔道具は年季が入っていて少し古いけれど、とても便利なものばかりだから良かったら自由に見ていってね』

「ありがとうございます!ロアさん!!」


彼女の言葉に甘え早速店内を見て回るアスタは、見た事もない魔道具や壁に飾られている絵画、武器といった商品に目を輝かせている。ノエルもそれに付き添うように商品を見て回っているが、そんな二人を見て『若い子はいいですね』とロアも微笑んでいる。


『特にアスタ君は元気が有り余ってる感じがして、黒の暴牛向きですね』

「あいつから元気を取ったら筋肉と声がデケェ事しか残らねえけどな」

「ンなことないっす!!諦めの悪さが残ってます!!」

「威張れることでもない気がするけど…」


いつにも増して大きな声でそう胸を張るアスタと、それに呆れるノエル。『元気が一番よ』とロアは微笑を絶やさないが、アスタが一切魔力を持たない反魔法の使い手であると聞くとその物珍しさに目を輝かせた。


『反魔法の力なんて珍しいわね!』

「えへへ、魔力が全然無い俺の唯一の武器っす!」

『成程ね…魔力が無くてもその反魔法の力を使いこなせば大丈夫よ。頑張ってね、アスタ君』

「!あ、ありがとうございまああああっす!!!!!」


よしよし、とロアに頭を撫でられるとアスタも少し照れ臭そうにしながらもどこか嬉しそうだ。

すると、ロアがそんなアスタにお勧めの品があると言い、小さなピンバッジを取り出しアスタのバンダナに付けてみせた。


『これは一時的に結界魔法が張れる魔道具。敵からのある一定量の魔力に反応して自動的に作動するから、魔力の無い貴方にも使えると思うわ』

「わあ…!ありがとうございまっす!!!じゃあこれ買っていきます!」

『お代は結構よ。「黒の暴牛」への入団記念に私からアスタ君にプレゼントしちゃうわ』

「な…なんですとォー!?!?超太っ腹っすねロアさん!!かさねがさね、ありがとうございまあああす!!」

「アスタばっかりずるい!あの、私にも何かお勧めの魔道具とかありますか?」

『そうねぇ、ノエルちゃんの魔法属性は何かしら?』


魔法具選びに盛り上がる三人。そんな彼らを一人壁に凭れつつ眺めているだけのヤミに、魔道具を貰ってはしゃぐアスタが駆け寄った。


「見てくださいよヤミ団長!ロアさんにこーんなかっけえピンバッジ貰っちゃいました!!」

「…へぇ、よかったねぇ」

「(あ、あれ?団長、何か怒ってる…?)」


適当な返事はいつもの事だが、自身を見下ろす視線にはどこか鋭い殺気のようなものが感じられアスタは一瞬だけ怯んだ。すると、ノエルもロアに入団記念として綺麗なブレスレットを選んでもらったようで嬉しそうにアスタ達に見せびらかしに来た。


「どう?王族の私にぴったりでしょ!」

「おう!綺麗な腕輪だな!さすがロアさん!」

「ちょっと!私だからこの腕輪が似合うのよ!?」

『二人共、気に入ってもらえて良かった。何かのお役に立てれば嬉しいわ』


帰ったら先輩達にも自慢しよ!と誇らしげなアスタ。一方のノエルも瞬時に二人の特性を見極めそれに見合う魔道具を選べる洞察力の高さに感心していた。


「でも今日初めて会った私達にぴったりの魔道具を選べるなんてすごい…!」

『私も一応、元魔法騎士団の団員だったからね』

「マジっすか!?すっげええ!!」

『ヤミさんとは同期だったの。あっという間に抜かれてしまったけど』


ね?と壁に凭れるままのヤミに訊ねれば「あぁ」とぶっきらぼうな返事だけ返される。どうりで親しげなわけだと納得する二人だったが、今度はこんな疑問が浮かんだ。


「でも、何で今は骨董屋に?」

『それは…』

「俺がこいつの腕をダメにしたから」

「え?」


思わぬヤミの言葉に目を丸くする二人だったが、『違うのよ!』とロアが慌てて彼の言葉を訂正する。


『私が任務の途中で怪我をしてしまって、それが原因で魔法騎士団を辞めることになったの。ヤミさんはちょうどその場に居合わせただけで、私の怪我とは何も関係ないのよ』

「あぁ…成程…」


事の詳細を聞いてどこかホッとする二人。だがそれ以上ロアの事を掘り下げて聞くことも出来ず、三人はアジトへと戻るのだった。

アジトへ着き団員達に骨董屋「アメフラシ」へ行った事を伝えると全員が「えーっ!?」と大声を上げる。


「俺もロアさんに会いたかったのに!!」

「私も!団長達だけずるい~!」

「うるせぇな、テメェらで勝手に行きゃあいいだろうが」

「だって用が無い時行くとあそこの親父が怒るんだもーん」


どうやら団員達もロアとは面識があるようで、皆彼女に久しく会えていない様子。ヤミ同様、彼女も「黒の暴牛」団員達から信頼が厚いようだ。すると、アスタがやたら輝くピンバッジを新しく身につけていることにマグナが気付いた。


「おい、アスタ。このピンバッジどうしたんだよ」

「へっへーん!実はコレ、入団記念にロアさんから貰っちゃったんすよ!」


それを聞いた直後、突然マグナがアスタのバンダナへと手を伸ばし無理やりにそのピンバッジを取り外そうとし始めた。


「寄越せアスタ!!姉貴からのプレゼントなんざお前にゃ百年早ぇ!!」

「いだだだだ何するんすかマグナ先輩!?これは俺が貰ったんだからあげません!!」

「テメェ先輩の言う事が聞けねえのかぁ!?いいから寄越せっての!!」

「いーやーだー!!」

「あっははは!何、殺し合い?僕も混ぜてよ~!」

「ぎゃああああ!!首が!首がもげるうううう!!!」


何を勘違いしたのか嬉々として乱入してきたラックがアスタの髪を強引に引っ張り始めた。

結局いつもの乱闘騒ぎになってしまうアジトだったが、ヤミは一人黙り込んだまま物思いに耽ったままだった。