未決定

ルーフス@低浮上を極める
@Seto_Kurona

追い詰められる高層ビルから:???

いよいよ高層ビルの入り口が破られて、怒り狂ったように叫びながら奴らが雪崩れ込んでくる。

まだ合図は来なかった。

さっきから心臓がうるさくて仕方ない。

せめてもの抵抗として、さっき逃げていった裏切り者が開け放っていったここへと続く扉を閉めて、鍵をかける。それから風で煽られるフードが脱げないようにしっかり手で押さえながら、あの人の横、屋上の端まで、あくまでも平然を装って、ゆっくりと歩いていく。

本心では、この燃え盛る眼前の鉄塊の中に生きる、仲間の姿をこの目で見たかったのだ。

火の海に飛び込んでいくことを自ら志願した僕らの希望が、まだ輝いていることを願っていた。

化学物質の焼けて発生する黒い煙が邪魔で、ボロボロのガラスの中なんて見えやしないが、それでも目を凝らすこと数秒。

その闇にも似た澱みの中に、こちらに向かって手を振る人影を見つけたのは、ビルの端に立つ2人同時だった。

まるで分かりきっていたことのように、僕が思わずフードから手を離したその瞬間に、左隣に立つその人の右手が伸びてきて、フードを深くかぶせ直してくれる。

それから、空いた左腕は空を切り、まっすぐ天へと向けられた。

その掌は人差し指と親指を残して全てを抱える。

ーチェック・メイトの合図だ。

後方から安堵の息が漏れる。

僕の頭が後ろへ押し下げられたのを合図に、全員がゆっくりと、鍵のかかった扉の後ろへと回る。

どこか遠くから響いてくる、プロペラが風を切って回る轟音。

それは、誰も見やしなかったこの高層ビルの後ろから、太陽が昇るように姿を現した。

こんなに近くにいたのに、誰も気に留めやしない。なんて滑稽。

それから一機、また一機と、今度は少し遠くから、次々と離陸するヘリコプターが見えてきた。

はじめの一機がホバリングしながら梯子を投げ落としてくると、指示通りに4人がそれにしがみついて登っていく。その間にもヘリは高度をあげ、逃走路へと向かっていく。

下で見ていたサツの残党が「急げ!早くしろ!」とか言っているけど、この高層ビルの中に入っているのは、あらゆる映画、ドラマの撮影に使われるモデルルームだ。防音対策はバッチリだね!

おまけに全ての部屋に鍵をかけておいたから、蹴破ってここまでくるのにも一苦労だろう。

眼下で唇を噛む大男を一瞥してから、僕は3機目のヘリへ乗り込む。

シートベルトもちゃんとして、窓の外からあの人の様子を見ると、どうやらまだ瓦礫の中の同胞と連絡を取っているようだった。



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