パシリじゃないっ!!

勇吾の過去

進一『勇吾。話したくなかったり、途中で気分悪くなったりしたらすぐやめろよ』


伊月『え…そ、そんなになんすか…?』


進一『俺は勇吾を引き取った者になるから勇吾の過去は知っている。だから心して聞けと言っているんだ』


宏也『やっ……やだぁ〜……怖いぃいい〜…』


勇吾『わ、分かりました…で、でも…皆さん…話して下さっている…ので…っ…ぼ、ぼくも頑張りま、すっ…!』


進一『ゆっくりでいいから。危なくなったら止めるぞ』


勇吾『わ、分かりました…っ!では……。ぼ、ぼくは生まれた時からあまりご飯とか飲み物すら与えて貰うことが出来ず、ずっと家の中に放置されて…いました。1週間に一度…くらいでしょうか…それくらいの頻度でしかご飯をたべさせてもらうことができませんでしたっ…。べ、別に家が貧しかったわけではなかったです…っ。お母さん達は普通にご飯を食べていましたから…。そして…僕には兄がいるのですが…そ、その兄からは暴力を受けていました。毎日お風呂場の水に顔を沈まされて…死にそうにはなったのですが、唯一、水を補給出来る時間でした…。そんな兄やお母さん達に僕は"ごめんなさい"と謝ることしか出来ませんでした…学校にも行かせて貰えず、僕はただただずっと家の中でボーッとしていることしか出来ませんでした…な、なので、他の知らない方とお話しすることなんてなくて、ましてや家族ともまともに会話が出来ないじょ、状態で……。6歳になった時、意識朦朧としながらも僕は家を飛び出したんです…っでも何故かぼくは病院に向かっていました。無意識でした…。そして病院に着いたと同時に誰かとぶつかってしまって僕がこけてしまったんです。相手の方は優しかったので、大丈夫か…と声をかけてくれたんですっ…そ、それが…たまたましゃ、社長だったんです…っ』


伊月『しゃ…しゃちょー…』


進一『その時の勇吾は本当に痩せ細ってて、今にも死にそうで…ガキのくせに一人で何してんだって…俺とぶつかってこけて骨は折れただろうと思って…』


勇吾『そ、そうなんですよ…全然栄養とか補給出来てなかったので…っあ、足の骨が折れてしまったんです…っこけただけなのに…っ』


進一『俺はそのまま病院に戻って勇吾を見てもらったんだ。そしたら医者の"ご飯はちゃんと食べてる?"って言う質問に"週一回"ってたどたどしく答えてるのを聞いた時にすぐに虐待を受けているんだと気づいた』


勇吾『ぼ、ぼくはぎゃく…ったい…?の意味が分からなかったのですがっ…でも毎日…お腹すいた…とは思っていました…』


進一『それから気になって、勇吾を送り届けるついでに勇吾の家に行ってみたんだが…勇吾の前で言うのはなんだが…本当にクソな親だったよ』


勇吾『で、でも…ぼ、ぼくを産んでくれたのはお母さん達ですから…っ』


進一『…あんなこと言う親は親じゃねぇ』


勇吾『で、でも…っ』


夏生『え…な、なんて言われたか聞いても…?』


勇吾『…』


進一『勇吾。お前が言いたくないならいい。知られたくなければ言わなくていい』


勇吾『ちょ…っちょっと…ぼ、ぼくからは…っなので……っしゃちょう…から…っ…はぁー…はぁー…っ』


夏生『え…?!ちょ…!!勇吾大丈夫?!』


伊月『ご、ごめんな!!勇吾!!びょ…っ病院…っ!!』


勇吾『だ…っだいじょうぶ…っですっ…ただの…っ発作…なので…っ』


進一『落ち着け勇吾。深呼吸だ。いつもみたいに深呼吸して何も考えるな』


勇吾『は…っはい…っはぁー…』


進一『まぁ代わりに俺がとりあえず説明するわ。勇吾は親二人ともに"お前なんか産まなきゃよかった。なんで産まれて来たんだ。週一で飯やってやってるだけいいと思え。しかもいちいち勝手に出て行って怪我して帰ってくるなんて迷惑にもほどがある"って言ったんだ。しかも俺がいる前で。殴られたかったんだろうな。希望通りボコボコにしてやった。女だろうとクソみたいなヤツは殴ってなんやんねーとわかんねーだろうから。ちょうどその時、勇吾の兄貴もいてさ。その時兄貴は10歳くらいだったか?お前はどーなんだって聞いたら"お父さんやお母さんのためにやってた。自分が勇吾を虐めると親が喜ぶから"だって。バカにも程があるだろ?流石にガキは殴れねーから言葉を浴びせておいた。"正直、親が喜ぶからしていい事じゃねーだろ。勇吾の人生はお前らによって潰されたんだ。この先一生後悔して行きていくんだ。その覚悟があってこいつをこんなんにしたんだよな?お前も苦労しているんだろうが、親と同様でクソな人間だ。言いたくはなかったが、お前らみたいなのは早く死ぬべきだぞ。お前に生きる価値は今ここでなくなった。それだけは覚えておけ"ってな』


伊月『お…重いっすよ…10歳の子に対して…』


進一『殴るよかいいだろ。言葉なんて録音されてない限り証拠なんてないんだから』


夏生『やっぱ社長を敵に回すと…よくないですね…』


進一『それから俺が勇吾を引き取った。親にも、俺がバイトとかして勇吾の面倒見るから、迷惑はかけないって約束で。でも俺の親もちょっと引っかかったんだろうな。ちゃんと勇吾の飯も用意してくれてた。だから一応、ここまで戻ったんだ』


勇吾『ほ、本当に…っしゃ…ちょうの…ご家族には…っお世話に…っなって…っすみません…ぼ、僕がこんなんだから…っ』


進一『だからやめろ、その言い方。勇吾が悪いわけじゃない。生まれてきて悪い人間なんていない。そんなに子供が邪魔なら産まなきゃよかったんだ。それを勝手に産んだのは親だろ。それを子供に当たるなんて最低がやることだ。生まれてこなきゃよかったのはどっちだ?お前らの方だろ。って話。勇吾は自分を責める必要はない。ここからだ。トラウマをゆっくりでいいから取り除いていこう。腹減ったなら腹減ったって言えばいい。欲しいものがあったら欲しいと言えばいい。お前のワガママは俺が全部聞いてやる。お前と同世代の奴らより言語が劣ってても、勇吾は勇吾だ。勉強だって今から始めても遅くない。だから"俺なんか"なんて言うな。俺だって変われたんだ、一応な。こいつらだっているし。頼れる奴に頼れ』


勇吾『しゃ…っしゃちょー…っうぇええぇえーーん……っぐすっ…』


伊月『そ…そうだったんだな…ご、ごめんな?勇吾……辛いこと思い出させてしまった……』


勇吾『い、いえ…っ…ぐすっ…伊月くんには…っいつも…遊んでもらって…っ…とても楽しい…っです…感謝…っしています…っ』


伊月『………もっと遊んでやる。色んな遊び教えてやる。だから……もう……苦しむことはないぞ』


夏生『ちょ…ちょっと…伊月くんまで泣かないでよ……お、俺まで…泣けてきた…』


勇吾『夏生くんっ…にも…毎日助け…てもらって…っ…僕より…歳下なのに…っ本当に…毎日…いいな…っ凄いなって…思ってて…っ』


夏生『もういいよ…喋らないで…呼吸整えよう…勇吾のこと何も知らないで…俺は…っ』


勇吾『お、お互い…っ過去は知らなかった…じゃないですか…っだから…』


夏生『いや…っ…俺は…不甲斐ないヤツだと……勇吾に…この先も何もしてやれない…』


勇吾『今のままで…っいてください…っ!今の…っ夏生くんがいい…っです…!』


夏生『勇吾…っ』


進一『宏也……え。こ、宏也……?』


勇吾『…?……え?!こ、こ、こ、宏也さんっ…!!』


伊月『涙を流したまま意識どっか行ってんな』


夏生『…宏也さんには重すぎたのかも…?』


進一『おい、宏也。戻ってこい』


と言って一発。


宏也『…いてぇえぇええ〜…!!』


勇吾『あ…っ!!も、戻って来ましたっ…!!』


宏也『ゆ…ゆうご…っ!!今まで本当に大変だったんだなぁっ…!!俺はお前の過去も何も知らないで…っ大概失礼なことを考えてた……っほんとごめんな…っ!!お、俺でよければ…っ全然…何処へでも連れてってやる…っ!!行きたいとこ、欲しいもの、やりたいこと…お前の願いは出来るだけ叶えてやるからっ…勉強だって教えてやれる…っぐすっ…だ、だからな……?気を使わなくていい…本当の兄貴がいるみたいだけど…っ俺と伊月が兄貴で社長が親父、夏生が弟って思えばいい…っ!!同情でもなんでもなく…っ…俺は…少しでも美味い飯をたくさんお前に食べて欲しいよ…っ…』


進一『…だってよ。まぁ…そういうことだ。勇吾。お前には新しい"普通より暖かい家族"が出来たんだ。よかったじゃねーか』


勇吾『しゃ…っしゃちょう…っ…ぐすっ…ほ、本当に…っありがとうございますっ…ぼ、ぼく…皆んなとちゃんと普通にっ…話せるようになりたいです…っ…お友達も…っ欲しいです…っ…ありがとうっ…ぐすっ…ございますっ…』


伊月『今からそんな感謝してどーすんだよ!これからだ!これから!もっと俺らに感謝する日が来るぜ!な!夏生!』


夏生『うん!俺はサポートとかしか出来ないかもだけど…!なんかあったらすぐ言って!』


勇吾『み、みなさん…っぐす…っ』


宏也『じゃあ…っ早速…っ次の休み…っ遊びに行く予定立てましょうっ…!』


進一『…その前に。ラスト。お前だ』


宏也『…へ?』


伊月『ドサクサに紛れて自分だけ逃れようとしたな…?』


宏也『い、いや…そ、そんなことは…ぐすっ…』


夏生『まぁ一旦全員落ち着いた方がいいから休憩しよう』


伊月『そうだな。勇吾もまだ発作出そうだしな。たしかに心して聴く話だった』


宏也『あ…っじゃぁ…お茶…入れます…』


俺の過去なんて…


本当に何もないんだが…


あ…いや…"何もないという記憶"しかないのか…


どうしよう。


俺は内心焦りながらもお茶を入れるのであった。



続く