【復活夢】早春のとびら【日常編①】

みやき
@remiyaki0416

第1話 一人目の飛翔

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ー鳴海 視点ー


「どこか、違う世界に行きたい。」


太陽が地平線に差しかかった夕暮れ時、隣にいた友人がそんなことを呟いた。そいつは、いつも寡黙で、自分の感情をあまり表に出したがらない、出すのをよしとしない風に生きているように見えていた。たぶん、他の奴らも同じように感じていたと思う。


返答に困った。学校の屋上で、さすがに周りを囲むフェンスを越えてはいないものの、一人放課後にたたずむ姿を見かけたらほうっておけなかった。最悪の状況を想像しつつ、恐るおそる「何やってんの?」って声をかけて、今に至る。


「違う世界、って?」

「今いるところとは違う世界。自分を知っている人間が一人もいない世界。今までの常識が、一切通用しない世界。」


まくしたてるように、友人―真琴は言った。


「違う世界、ねえ・・・」


真琴の言葉を吟味する。そんなところ、あるわけないのに。他県とか、日本じゃない別の国とかならその条件には当てはまるかもしれない。でも毎日、朝起きて準備して学校に行って、やれと言われたことをこなしてまた家に戻る。この往復を何度もくり返す俺たち学生が、そんなところへ飛び出していける可能性が無いに等しいのは、この年でじゅうぶん分かりきっていた。



夕焼けに照らされた町が、赤く輝く。普段から俺たちを取り巻くその群衆は、ここから眺めるとミニチュアのおもちゃみたいだった。



「・・・ごめん。今の忘れて」



真琴は、フェンスを握りしめていた手をはなすと、出口側に振り返った。そこで、はた、と驚いた表情をする。その理由を、俺はすぐに知った。


「おーい!!真琴ー!!鳴海―!!」


真琴、はこの隣の友人で、鳴海、というのが俺のことを指す。


あの声はしきみか。彼女の声はよく通る。

嬉しくなって俺も振り向く。こちらへやってきたのはしきみと沙良。この4人が、いつも一緒につるんでいるメンバーだ。


「あのね、駅前のコンビニ、新商品のアイス出たんだって!買いに行こう!!」


しきみの目が、きらきらと輝いている。まるで新しい玩具を与えられた子供みたいにはしゃいている。

沙良が、真琴の手をそっと取った。


「真琴も、一緒に行こう」

「・・・うん」


真琴は、沙良に弱い。なんでかは知らないけれど。


「じゃあ、しゅっぱーつ!!」

しきみが先導きって歩きだす。俺は屋上からの風景に一瞥くれながら、それに続いた。



このときの俺は、分かっていなかった。どこか、別の世界に。友人と話していた、他愛のない会話が、まさか現実になってしまうだなんて。


新商品のアイスって、何味なんだろう。そんな呑気なことしか考えていなかったし、社会に出るまでずっと、そうだと思っていた。



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