人魚姫と忠義の武将

堕天使の♀ヘム
@mesuhemu

魏の新たな女武将の誕生。

ここはとある一室……、

「…大丈夫なのでしょうか。」

楽進は不安げに呟く。楽進の目の前には怪異を倒した後に突如として現れた少女がぐったりと寝台に横たわっている。顔色は少し悪いものの息はあるようだから大丈夫だとは思うが。

そんな中、まだ楽進の中で何か引っかかっていた。

(私は過去に人魚を見た事がある気がする…)



楽進は一度海に落ち溺れたことがあった。それは任務で李典と共に海へ出たときのことであった。急な強い突風に煽られ船から海へ落ちたのだ。急な事だった為、浮き上がることもできなかった。

(私はこのまま死ぬわけにはいかないというのに…死んでしまうのでしょうか。)

そう思った時、何かに下から支えられた。その何かは人魚の姿をしていた。どんどん上へと持ち上げられそしてーーふわり、と下からの水流に海面へと浮き上げられていった。その後、浮き上がったところを李典と兵士達にすくい上げられそのお陰で命は助かったのだ。


(ただーーその人魚のような何かの姿はよく見えなかった。)

そう、海の中は暗くよく見えなかったのだ。

(もし、気のせいでも見間違いでもなく幻でもなく本当に助けてくれたのであれば。お礼を伝えたいのですけれども会えはしませんよね…)

そう思っていた時、

「う…ん…」

少女が意識を取り戻し目を覚ます。上体をゆっくりと起こし辺りを見回す。

「あ!意識を取り戻されたのですね!」

「ここ、は…それに、あなたは…」

少女は驚いたような顔をしていた。

「私が、どうかしたのですか?」

「いえ…なんでもありません…それにしても私は一体…」

「あなたは人魚のような怪異を倒したら何故か急に現れたのです。それから気を失っていたところをここに連れてきたのです。」

「そうなのですね…そっか…私、確か瀕死になって…それから意識がなくて…恐らく暴走していたのですね。助けてくれてありがとうございます。もしあなたが助けてくれなかったらどうなっていたことか…」

「いえ!私は当然のことをしただけですので!それと仲間の李典殿達も手伝ってくれたのです。」

「そうですか…ところでここはどこの国なのですか?」

「ここは魏の国です!私はここで曹操様に仕えているのです!」

「魏の国ですか…それであなたの名前は?」

「私は楽進、字は文謙と言います。」

「楽進…そう呼ぶのですね。私の名前は楽歌と言います。」

「楽歌と言うのですね!同じ漢字が使われてるとは奇遇です!」

「ふふっ、そうですね…何か運命を感じます。…もう少ししたらあなたの主人である曹操殿に会わせてくれないでしょうか。お礼と挨拶をしなければなりませんから。」

「はい!」

元気を取り戻した頃、楽歌は曹操の元へと向かったのだった。


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