神様の前で誓うその前に

ちはやっこ
@mizu_intention

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もうまもなく日付も変わろうかという時刻。

たまには早めに寝ようかななどと考えていた矢先、部屋にはインターホンの音が鳴り響いた。

こんな時間に来客なんて予定は全くない。

恐る恐るモニターを覗き込むと、そこには予想だにしなかった人物が映っていた。


「よ、義高?!」


慌てて玄関のドアを開けると、肩で息をするように荒い呼吸の彼がいた。

足元にはいつも愛用しているボストンバッグが無造作に転がっている。


「どうしたの……?」


時間的な疑問もあるが、普段は関西棋院でのイベントがあるときくらいしか義高はこっちに来ない。

ただでさえプロ棋士として多忙な生活をしている。

だから私たちが会うのは専ら、私が東京に行った時だけだったのに。


「よかった……間に合った……」

「え?なにが?」

「なにって……お前、今日誕生日、だったろ……」


そこまで言われて、はっと気がつく。

もうこの年になると、自分の誕生日なんてさして気にするものではないから、すっかり忘れていた。

だから、私にとっては誕生日のことよりも彼が今目の前に来てくれたことの方が正直驚きだし、嬉しかった。

ひとまず玄関先のままというのも、ということで部屋の中に義高を通すと、ぐったりしたようにソファーに腰を下ろした。

決して本人は口にしないけれど、本当に忙しい中駆けつけてくれたことが見て取れる。

インスタントのコーヒーを簡単に淹れて渡し、そっと並ぶようにわたしも彼の隣に座った。


「明日、こっちで手合いでもあるの?」

「ばーか、ひよりに会いに来たんだっつーの。」


どストレートに言葉にされて、どう返して良いかわからない。

あれ、義高ってこういうこと言う人だったっけ?


「お前の誕生日なのに、わざわざ東京来させるのは……なんか違うじゃん。」


全然間に合わなかったけど、と義高自身は申し訳なさそうな表情をしている。

そんなの、来てくれた時点で帳消しなのに。


「あと、どうしてもこれはちゃんと面と向かって渡したかったし。」


襟を正すようにすっと背筋を伸ばして、義高はまっすぐ私を見る。

そして、おもむろにポケットから取り出したものを差し出した。

おずおずと受け取ると、それはちゃりんと澄んだ音を立てて手のひらに落ちた。


「えっ……?」


明らかにどこかの家の鍵、だ。

私の家である可能性は絶対にありえないので、つまり。


「いつでも来ていいから……って言うだけにしようと思ってたんだけど。」


ひと呼吸、置いてから本心が顔を出す。


「……家に、来い。」


それは、つまり。


「ひより。俺と……結婚、してください。」



その言葉の後に、きらりと輝くダイヤモンドの指輪が、そっと左手の薬指に贈られた。




Fin.

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