メアリー・ドロップ薬局店

アトリー(百合書きました)
@atoli1523

鈴の音は、スノー・ドロップ

陽の光が、少年の瞼を撫でる朝。

額縁のような窓辺に、すやすやと眠っていた少年は、ぱちりと目を開けた。ビードロの様な窓硝子に額をつけて。口元の硝子は、白い露を作る。

少年メアリー・ドロップは、スミレ色の眼を輝かせて、青い空を見上げた。雲ひとつない、晴れ。

「ついに春が来たんだ」


額縁の窓辺から駆け下りて、お気に入りのセーラー服を頭から被った。跳ねた髪を撫で下ろしながら、外へ駆け出した。

少し前に、雨が降ったのだろう。メアリー・ドロップのローファーに泥が跳ねる。

そんなことは気にも留めず、少年は丘の上にある大きな木蓮の木の麓まで駆け登る。

木蓮は白い花を咲かせて、少年の住む家を見下ろしていた。

メアリー・ドロップはその麓に膝をついて、ほっと息をついた。


「……あった」


スノードロップという小さな野花を、1つ千切って。メアリー・ドロップは掌でそれをころころと転がしてみる。

チリン と鈴の音が聴こえる花を選ばなければ。

小さな掌で、そっと包んでみた。


ふわりと、春の風が、香りが、メアリー・ドロップの銀色の巻き毛を、セーラー服のスカーフを、捲き上げながら駆けていく。


スミレのような香りの、スノードロップ。

小さなレースのような、スノードロップ。

その風に吹かれて、掌の小さな世界から、チリンチリンと真白の音が響いた。

著作者の他の作品

美術館で出会った天使のような少年と、お姉さんのお話。

チョコレートがテーマの作品集用に作った未収録の作品。賽の河原にて。