緑と酒と灰色と

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「いやぁ~まさか哀澤が付き合ってくれるなんて思わなかったよ」

『丁度時間が空いていたからだ。本来なら斬島達と鍛錬をする時間だが…生憎任務で居なくてな』

猪口に注いだ日本酒を味わいながら飲む。館の食堂、任務帰りの哀澤は丁度酒を飲もうとしていた木舌に誘われ、こうして二人で酒を煽っていた。

任務帰りの疲れ果てた身に酒…とは思ったが、木舌とはそれなりに長い付き合いだ。それに己が獄卒になる際も色々と世話になったからと承諾したはいいものの、この男度数の高い酒しか用意していないのである。何故だ。哀澤はそう思った。

「哀澤は真面目だねぇ…。強くなって、任務も沢山こなして、帰ったらまた鍛錬…。飽きないかい?」

『俺の日課だ。飽きる事は無い』

「真面目通り越して頑固だなぁ」

へらりと笑って酒を飲む木舌を哀澤は横目で見る。緑色の瞳は酒気を帯びて潤み、既にほろ酔い状態なのだと察知した。

「おれが初めて会った時は、可愛い子供だったのになぁ~?」

『っ…その話はもう良いだろう…。あの時は色々と、気が動転していてだな…』

木舌の呟きを哀澤は咳払いで誤魔化した。確かに自分は木舌達より後に入った新参者。しかし出きる事なら過去は忘れたい。その思いで出た誤魔化しだ。

「はは、今の哀澤は獄卒らしく冷酷で、情け無しの男前。ちょっと非道すぎるところがあるけど、それでも実力ありで素晴らしい獄卒、か…。何か寂しいなぁ…」

『何だが。俺は今の方が有意義に過ごせているぞ。本来の姿は失ったが、災藤さんやお前達のお蔭でこうして身を得て動いている。…お前似なのは不服だが』

「仕方ないじゃあないか。亡者の時に俺の妖気に当てられたのが悪い。それに田噛成分も入ってるじゃあないかぁ~」

『髪の跳ね具合だけだ。七三分けなのも、この顔の造形も、お前の所為だぞ』

「そんなに嫌?」

『お前に間違えられるのが嫌だな』

寂しげな緑の目から逃げるように、哀澤は顔を背ける。木舌は「おれ泣いていい?」と机に突っ伏して頬を膨らませていた。

「…でも、目は変わってない」

その呟きに、哀澤は横目で木舌を見る。木舌は視線が交わるとすぐへらりと笑った。

「その灰色の目は、結構好きだからさ。残ってくれて良かった」

『…』

灰色の瞳。生前の自分の特徴である、今の変貌してしまった自分が唯一持つ、自分の名残。

『…勝手に言っていろ』

「あ、照れ『首落とすぞ』お~怖い怖い」

けらけらと笑う木舌を無視するように、日本酒を注いで猪口に口を付ける。辛い酒を流し込みつつ、隣でぐだぐだと酒を煽る木舌を哀澤は眺めた。


「…何してんだよ」

任務帰りの田噛は開口一番に面倒臭そうな声を漏らした。それもそうだろう。辺りに散乱するのは酒瓶。テーブルの上はつまみの無くなった皿と、また酒瓶。その前で、哀澤に抱き付く形で木舌が寝ているのだ。哀澤は涼しい顔で自身の周りにある物を片付けているが、抱きついている木舌の巨躯に阻まれ苦戦していた。

『丁度良いところに来た。手伝ってくれ』

「それは木舌をぶちのめしてくれなのか?それとも机の上のモン片付けろなのか?」

『木舌の相手はお前には無理だろう。散らかっている酒瓶だけでいい、テーブルに置いてくれ』

「チッ…めんどくせぇ事させんなよ…」

『悪い』

渋々酒瓶を拾う田噛に謝りつつ、哀澤は木舌を抱き直す。心地良さ気に眠る木舌は、寝惚けているのか笑みを浮かべていた。

『(…阿呆面)』

そんな事を思いながら、田噛と協力しつつテーブルの上を片付けた。