VBI捜査官

ひゅう
@_Srtrzw1024

第0録〜序章〜 『出 遭 い。』

この小説は夢小説 (名前変換ができる小説) です。
キャラベルに登録してログインすると、登場人物の名前をお好きな名前に変更できます。




最後に見たのは多分、ヘッドライトの光が反射して異様なほど白く映る自分の手。

やけに低い目線に遠近感の取れないコンクリートの表面とどこから流れて来たのかも分からない真っ赤に艷めく血液だった。




靴と地面の摩擦音に遠くに聞こえるサイレンと密かに伝う内側の脈拍。


心地よい波に揺られながら

私は目を閉じた。



























コチ…コチ…


規則的な電子音と擦れる紙。

コト、という机かテーブルかにものを乗せる低い音はどこか耳障りが良い。



ゆっくりと瞼を上げると眩い光に顔を少しだけ顰めた。


小さなライトが2つ、3つ…。

まるで手術室にでも居るかのような感覚にゆっくり首を回した。





どこだろうココ…




見覚えのない多くの机と書類の束。褪せた橙のクラフトの表紙に、ビニールのジッパーに入った何か。

ホワイトボードと幾枚の写真。


その側の椅子に腰を下ろし脚を組みながら顎を触れていた男性がこちらを向いた。



『あ。目覚めたよ』




目が合うとふわりと笑うその男性ははっきりとした顔立ちで誰かに向かってそう告げる。


立ち上がり、向かってくると分かる。

この人は背が高い。




『あんた、俺らのこと見える?』




今度は別の方向から声がした。

どこか飄々とした口振りに首を回せば、淡い紫の様な薄紅の短髪がずい、と視界を覆った。




『その質問少し変じゃない』


『もしかしたら視覚障害なってるかもだろ』






知らない男の人の声。

知らない部屋の匂い、知らない顔。






「…?誰…」





私の応答に満足した様に腰を伸ばすと後ろにいるもう一人の男性に声を掛ける。



『目は無事みたい』



『だな』






返事をしたのは黒髪短髪の男性だ。

こちらを垣間見てもニコリともしない仮面のような表情を貼り付けて、何やら書面に筆を走らせる。


全く頭がついて行かない。


ここは何処で

彼らは誰なんだろう。




「…あの?」





ここに居てもいいのだろうか。

もし悪い人なら…




そんな不安を汲み取ったのか、机で筆を執る彼が動きを止めた。




『ああ、紹介遅れたな』




書き綴っていた書面を手に軽く視線を揺らして確認すると、立ち上がった。





『俺は岩泉一。こいつらは同僚で、ここは捜査局のオフィス』




「…え」




短絡的な説明に目を細める。


ゆっくり上半身を起こせば身体が痛んだ。

鈍い痛みに少しだけ顔を歪めたのだろう。最初に声を発した彼が手を伸ばした。




『大丈夫?』



『あんた倒れてたんだよ』




淡い髪色の男性が近くのデスクに腰を預け腕を組むと、重みの感じる声音で、でもさらりと告げた。





『血だらけでね』







…血… …?




「どういう…ことですか…?」





自分の手を見るも、勿論何も付いていない。

服はスウェットで少し大きく感じる。


そんな私を見てゆっくり目を閉じ再び開けると小さく息を吐いた。


瞳の大きな顔立ちの良い男性が腰に手を当てて顎を引く。




『…やっぱりその様子じゃ何も覚えてないね』





残念そうな、それでいて悔しさを滲ませる眉間に首を少しだけ動かす。







覚えてない…?


何か、忘れた…?





忘れたことすら分からない。





『あんたの関わった事件については全くと言っていい程情報がないんだ』





「、」




不意に立ち上がる長身に肩を上げて驚くと、それを笑う淡い髪色の男性が小突かれる。


また別の男性だ。

切れ長の瞳に少しくせっ毛で黒髪を刈り上げている。彼もまた、クスリともしない。





『とりあえず捜査は続けるが…』








…頭痛がする。



手で触れれば分かる布の感触に何となく自分の状態を察知した。


なんで、どうして。


そんなドラマみたいなセリフは声にならず、哀しみも焦燥も何も無い、ただ理解のできない状況下で俯くしかなかった。





『…で、大丈夫?』




「えっ」






あ…聞いてなかった






『…あんた、名前は』






「…なまえ…」





名前…、は…何だろう。

分からない。そもそも名前なんてあったんだろうか。断片すら思い出せない。覚えていない。



答えに口を噤む私に

顔立ちのいい彼がパンッ、と手を叩いた。




『…あー、じゃ思い出すまでぜろちゃんにしよ』



『何でだよ』



『0繋がり?』



『はあ?』



『ぜろちゃん、俺は及川徹。』





真剣な面持ちで一層顔立ちの良さが目立つ彼が私の前にしゃがみ込んだ。


淡い髪色の彼が"花巻貴大"。おーす、なんて気のなさそうな返事で手を上げる。


その隣にいる長身の男性が"松川一静"。よろしくと少し口角を上げて目を細められた。その仕草が少し色っぽい。




及川さんは強過ぎない力で私の両手をぎゅっと握った。


初めて他人に触れたような

そんな温かさが少しだけむず痒い。





『…ぜろちゃんが失くした記憶、取り戻せるように俺たち全力で捜査にあたるから。そして犯人も突き止めるから』





「…は、い」





正直、まだ何も分かっていない。

何があったのかも、分からない。



でも


不思議と恐怖はなく







『何かあったらすぐ俺ら捜査官を頼ってね』





握られたこの手と

私を囲う彼らの事は



何故か信用できる気がした。