チョコレートの遊園地、ティラミスの時計塔

ルーフス@低浮上を極める
@Seto_Kurona

目撃

広場のベンチで調査(という名の休憩?)を始めてから15分が経った。

あのクマはまだ同じ場所で風船を配り続けていたが、左手の糸の束は、もう少しで無くなりそうだった。

それを見た仲の良さそうな2人の男の子が慌ててクマに駆け寄っていって、繋いでいなかった方の手に、それぞれ風船を受け取る。

ついに風船は、最後の一つになった。

クマはくるりと振り返って自分に手を振りながら走り去っていく2人に、同じように手を振り返す。

その光景を眺めていると、何か胸騒ぎがした。

あのクマが子供をさらうという仮定の上でここにいるからなのか、それとも、もっと別の…。

一瞬だけクマから目を離して、2人だけが視界に入ったその時。


『こら、走ったら危ないだろ?

迷子になったらどうするんだ。』

『大丈夫だよ!だって僕には×××がいてくれるんだもん!』


1人は、見ていた2人と同じくらいの背丈の人影。そしてもう1人は。

(俺…か?)

小さな人影を叱りつけていた、少し大きな影。

響いた声も、聞き慣れた自分のものだった。

(なんだ、これ…)

だがどうしても、小さな影に見覚えがない。

片方の手を俺に握られて叱られても、俯いたりする様子もなく、ただ(影の)俺のことをじっと見つめているようだった。両腕の袖は、持ち上げても手が見えないほどにダボダボな大きな上着のもので、頭には大きな帽子をかぶっている。

(誰だ、あれは。)

(見覚えなんてない、よな…?)

頭がいたい。

針で突かれているような、鋭い痛みが走った。

思わず目を瞑って頭を手で押さえる。

しばらくそうしているとだんだん落ち着いてきて、再び目を開けた時には、もうあの人影も、仲の良い男の子たちも、いなくなってしまっていた。

ハッとして、慌ててあのクマの姿を探すと、さっきから少し離れた場所で、まだ最後の一つの風船を握ったままふらふらしていた。

少しばかり浮いてしまった腰をもう一度ベンチに落ち着けると、メモを読むふりをしてチラチラと様子を伺う。

最後の風船はまだ売れない。

近くに子供はいないということだ。

おそらく、他に子供の多そうな場所を探しているのだろう。

それなら、入り口に1番近いメリーゴーランドや、この広場の奥のティーカップには、俺が見てもわかるくらいにそこら中に子供の姿が見える。

なぜアイツは動こうとしない?

そもそも、もう風船が一つしかなくなったのなら、一度帰って風船を持ってくるのが普通じゃないのか…?

そこまで考えて、一つの結論が見えた。

(あの風船を渡された子供が“ターゲット”だ。)

そうと決まれば、俺もまだ子供…に、見えなくもない。(はず。)

ベンチから立ち上がって、広場をふらつくクマへ歩み寄ろうとしたその時。

クマが突然、ティーカップの方へと歩き出した。

さっきまでとは違い、確かな足取りでずんずん進んでいく。

(いや、ティーカップじゃない。)

しばらく進んだクマは、そのままティーカップの横を通り抜け、風船をねだる子供も全て無視して、そのまま奥の休憩所の方へと向かう。

その先には、たった一人の女の子がー。



著作者の他の作品

友達に布教されてまたまた新創作です。((登場人物はまぁ、いつも通りなんです...

「“不良”じゃねぇよ、“普良”だよッ!」友に感化されて久々に戻ってきたジャン...