桜花爛漫

♠️咲葵♠️夢垢
@andante2017

第8話「笑顔と腹黒狸」

この小説は夢小説 (名前変換ができる小説) です。
キャラベルに登録してログインすると、登場人物の名前をお好きな名前に変更できます。

「……ごめんなさい。私のせいで……」


「……別に。俺の主はあんたなんだ。どう指示しようとあんた次第だ。あれで折れるのなら、俺はそこまでだったんだ。」


「……本当に……ごめんなさい……」



山姥切は彩乃を責めなかった。

それが余計に辛かった。

いっそ、頭ごなしに責め立ててくれた方が楽だったかもしれない。


――自分は甘かったのだ。


戦うということは、敵を倒すということ。


倒すということは、殺すということなのだ。


そして……誰かの命を奪うのならば、自分も斬られる側になる覚悟をしなければいけなかったのだ。


審神者になるということは、刀剣男士たちの命を自分が預かるということなのだから……


彩乃はそのことをまったく解っていなかったのだ。

こうなるまで自分がどれだけ甘かったのか解らなかった。



一歩間違えたら、彩乃のせいで山姥切は折れていたかもしれないのに……



そこまで考えて、彩乃は自分の愚かさを悔いた。

審神者をやるのなら、きちんと覚悟を決めなければいけなかったのに……

体験だからという理由で、どこか軽く考えてしまっていたのだ。


――だけど、今の自分には、山姥切に謝ることしかできない。


彩乃は震える体と声で、精一杯何度も何度も謝罪の言葉を彼に告げた。



「ごめんなさい……ごめんなさい……山姥切さん……本当に、ごめんなさい……」


「……もういい。俺は折れてないし、あまり自分を責めるな。」


「――でも……っ!」


「お前は悪くない。戦いなんて知らない平和な時代に生まれた女が、いきなりあんな殺し合いなんてもの見せられて、冷静でいられる訳がなかったんだ。だから……お前は悪くない。」


「……でも、それでも……山姥切さんが怪我をしたのは私のせいです!」


「……お前が本当に審神者になってくれたらいいのにな……」


「……っ」



不意に呟かれた言葉に、彩乃は顔を強張らせる。

するとそれに気付いた山姥切はすぐに「……すまない」そう言って彩乃から目を逸らした。

一瞬見えた悲しそうな表情に、彩乃は罪悪感でいっぱいになる。



「……ごめんなさい。私、すごく中途半端なことしてますよね。審神者になる覚悟もないのに、貴方を顕現してしまった。その上、こんな怪我までさせて……」


「……俺のことは気にするな。それに怪我のことも、もういい。」


「でも……」


「……俺を顕現した人間は意外に頑固らしい。」



そう言って山姥切は苦笑すると、不意に彩乃の頭に手を置いて、ぎこちない手つきで撫でてくれた。

労るような優しい手つきに、彩乃は目に涙が浮かびそうになって、慌てて手で拭ったのだった。



「……ありがとう、ございます。山姥切さん。」


「山姥切でいい。敬語もいらん。」


「……うん。ありがとう……山姥切。」


「――ああ。」


(――あっ。初めて笑ってくれた……)



その時彩乃が見た山姥切の顔は、柔らかく微笑むように、とても優しい笑顔だったという……


ひらりひらりと彼の周りにだけ桜が降り注ぎ、とても……とても綺麗だったのだ。













☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆













「――九条くん、あの子はどうしてますか?」


「――え?……ああ、どうやら初陣は失敗したみたいですね。」


「……そうですか。流石にいきなり出陣は無理だったかな。」


「そりゃそうですよ。あんな普通そうな女の子が、修業も、研修期間も取らず、その上ろくな説明も無しにいきなり出陣なんかさせたって、まともに指示なんて出せる訳ないですって。」


「……そうですね。少し焦り過ぎました。」


「そうですよ。いくらあの子の霊力が桁違いで、神の加護を受けたほぼチートだからって、期待しすぎですよ渡貫様は。」



九条と呼ばれた男は自分の上司である渡貫に呆れた眼差しを向けると、渡貫は静かに目を閉じて、小さくため息を吐き出した。



「……だって、仕方ないじゃないですか。夏目さん……いえ、翡翠さんにはなんとしても審神者になってもらわないと……」


「だからって拉致したり、孤児の女の子に祖父母の話を持ち出して審神者になるよう誘導したり、審神者になる気のない子に適性検査と嘘をついて神と契約させた上で初期刀をつけたり、数日の体験だのと言って本丸を与えたり、あの子が審神者にならざるを得ないように環境を整えたりして、着々と周りから固めていってるのはどうかと思いますが?流石にあの子が可哀想です。同情しますよ本当に。」


「…………」


「都合が悪くなると黙るのやめてください。」


「……九条くんて冷たいですね。」


「渡貫様よりはマシですよ。」



しれっと上司に向かって酷い言葉を吐く九条だが、これでも渡貫からの信頼は誰よりも得ているのである。



「……精々あの子に逃げられないように上手く騙せるといいですねぇ~」


「騙すだなんて人聞きの悪い。」


「人の良さそうな顔をして平気で嘘をつく、腹黒狸じじいが何言ってんですか。」


「……本当に酷いですね。君……」



渡貫は冷たい部下の言葉に流石に少し泣きそうになったのであった。

著作者の他の作品

乱藤四郎がもしも魔法少女になったらなお話