想い、染み渡る

ゆいか
@ball_ver



「えー、主また現世行くの?」

「うん、今度は美容院ってとこに行くの。」


うちの主は、結構な頻度で現世に戻っていると思う。

服を買いに行くとか、髪の毛を手入れしてくるとか何かしらの理由で。

確かに主は審神者の中でも若いと思うし、身なりに気を使う気持ちもわからなくもない。それに、周りは男だらけなわけだから、お洒落しないよりはした方がいいとも思うし。


でも、だからって初期刀である俺を置いて現世に行くかなあ!?近侍を連れていってはいるけどそれは毎回俺じゃないのは不満だ。

俺が顕現した頃は二人で出かけることが多かったってのに、今は色んなやつがいるから近侍になるのも色々異なる刀達だ。なんだか寂しい、主ってば俺のことちゃんと覚えてんの?初期刀だよ、しょ、き、と、う。


「はあ、また主ってば現世に行っちゃったよ。つまんなーい。」

「ふふ、まあ彼女も色々あるんだよ。」

「もー。燭台切のそういう含ませたような言い方は、俺好きじゃないな~。」


俺は主のことわかってるから、って言いたげな余裕のある、言い方。主がそばに居ないだけで拗ねるような俺とは違って大人な感じ。ぶう、と頬をふくらませてみると、困ったように燭台切が笑った。


今日も本丸はいい天気で、縁側で主と一緒にお茶でも飲みながら話でもしたかったな。別にどこだっていい、主と一緒にいれるならそれはどこだっていいんだ。本当は現世に行くのだって仕方ないってわかっている。主は元々現世の人間なのだから本丸にずっと篭って入れるような人じゃないことくらい知っている。それでも、初めて俺を顕現してくれて大事にしてくれた主にそばにいて欲しいなんて貪欲に思う自分もいる。


いつか、彼女はここの審神者を辞める日が来るだろう。契を交わして子を成せば、ここには構っていられないだろうし、年を重ねると人間はすぐに老いるから身体面でも継続は難しくなる。俺たち刀は、いつまでも同じ姿なのに。


「あーあ…、切ないよなぁ。」


◆◇◆◇◆◇◆◇



「加州。」

「っ…!は、…あれ?」


肩をガシリと掴まれて思わず身体が跳ねた。ぼんやり考え事をしていたつもりが、いつの間にか眠っていたらしい。大の字になっていた身体を起こすと長谷部の姿が視界に入る。あぁ、今の近侍は長谷部だっけ。なんでぼんやりと考えた。いまいちしゃっきりしない頭を捻る。なんで長谷部がここにいるんだ。「何か用?」と彼に聞けば、彼は腕を組んだまま襖に身体を預け、ひとつため息をついた。


「なにそれ、失礼だなあ。」

「……主が呼んでいる。」

「……主が?」


そうか、近侍の彼がここにいるということは、もう主も帰ってきているということ。そこまで考えてピシリと固まる。俺ってば絶対にお迎えしようと思ってたのに……!くそっ、なんで昼寝なんかしてしまったんだろう!あぁ!こうしちゃいられない。兎にも角にも、主が呼んでいるんだから顔を覗かせよう。その時に、おかえりって言えばいいんだから。


少し気だるい身体に鞭打ち、部屋を出ていこうとした瞬間、微妙な顔をしている長谷部と目が合った。


「あぁ、長谷部。ありがとう。」

「…いや、あぁ。構わない…。」

「何?俺の顔になにかついてる?」


じっと人の顔を見て失礼だな、と思ったりもしたが微妙な表情の長谷部がなぜか気になった。訳を聞こうと口を開いたが「何でもない」と言って広間の方へと歩いていった。

長谷部の不思議な行動に少し首を傾げながらも、主の部屋を目指して歩を進める。道中庭を見れば短刀たちが鬼ごっこをしているのが見えた。今日も平和だなぁ、そんなことを考えながら歩いていると主の部屋についた。


「主。俺だけど、加州清光。」


扉開けてもいいの?と聞こうと思ったがその前に勢いよく襖が開いた。そこには主の前見ていた雑誌に載っていた今時の毛先カラーをした主がいた。毛先だけが染まっているそれはなんだか不思議だった。


「清光ただいま!珍しくお迎えに来なかったからどうしたのかと思ったよ!お昼寝してたんだって?堀川君が言ってた。」


寝顔見たかったなぁ~。と主は楽しそうにケラケラ笑った。俺はそんなことよりも新しく見る主の髪型になんてコメントすればいいかわからなかった。似合ってるね?かわいい?おしゃれだね?

でも何よりも一番に気になったのは、


「主、なんでその色にしたの?」

「え、」


赤く燃えるようなその色は、俺の爪紅を彷彿させた。気のせいかもしれない、ただの偶然かもしれないけれど主が俺の爪と同じ色というだけで気持ちが浮上した。

主は何も言わなかったが、毛先と同じくして染まった、その頬を見ると俺の想像はあながち間違いではないのかもしれない。





想い染み渡る



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2018/04/22

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