夜越しの白昼夢

🌃夜野くん💫
@yoru_sou_410

哀傷






とある夏の日。


家に来てから3ヶ月くらい経った。

この3ヶ月間、色々とあって、またそれと同時に色々な思いをしてきた訳だが。


一言で言えば、最悪だった。


まずあの時……言わば、この家に来て玄関に靴を置いた直後のこと。あの時感じた不安感と嫌な予感は、最悪な事に的中していて、嫌な予感ってのは勘よりもぴったり当たってしまうもんなんだなぁと痛感した。

結局あの白い傘の持ち主も、その姿を見ることなく別の黄色の傘へと変わってしまったし。


なんとなく怠くて節が軋む腕を伸ばして、部屋中のゴミのその下から小箱を取り出す。


昨日付けられた首筋の傷は、いつ消えるのだろうか。

手当の仕方なんてわからないけど、とりあえず見様見真似でやってみることにした。

確か、ティッシュかなんかに消毒液を染み込ませて……


「い゛ッ………」


首だからというのもあるけど、抉るように付けられた噛み跡が思ったよりも深くて、あてがった消毒液が刺さるみたいに沁みる。

痛覚の所為で、指先にまでびりびりとした感覚が走った。

……本当にこの方法であってるんだろうか。

もしもこれで間違っていたとしても、もうこれで実行してしまったのだから、何もかもが今更な気がする。


ため息をひとつこぼし、またここ数週間のことを思い返してみる。

……ああ、そうだ。確か、学校に行けなくなったのもこの傷がつき始めたのと同じくらいからだ。

男の人が急に変わったのもそうだ。というか、学校に行けなくなったのも、痛みに悩まされ始めたのも、原因はこれしかないのだった。


「う、…………っく、」


それにしても沁みる。

すごく痛くて、我慢しようにもなかなか難しい。

自分の中途半端な知識で、ここまで苦痛が生まれるものなのか。

だんだん鼻の奥がつーんとしてきて、視界の端がぼやけ始める。

目が熱くて仕方ない。


踏んだり蹴ったりだ、もう。

色んなものが嫌になった。

眠ったまま目覚めない方が良かったのに。


ふと零れた滴が、白いシーツに染みていく。

そこから堰が切れた様にぼろぼろと溢れ出て、次々に染みを作っていくのが見えた。

やばい、かな。あのひとはもうすぐ帰ってくるのに。汚してしまったら何か言われるだろうか。泣いていたら何か言われるだろうか。いや、何をされてしまう、のか。


頭がいっぱいいっぱいになって、訳がわからなくなる。

本当はきっと、拭くとか、泣き止むよう努力するとか、するべきなんだろう、けど。


「……お、おかあさん…おと、さん……っ」


ねえ、どうして置いて行くの?