夜越しの白昼夢

🌃夜野くん💫
@yoru_sou_410

プロローグ




まるでバケツをひっくり返した様な。

はたまた、神様がグラスの水を零してしまったかの様な。


大粒の雨がコンクリートを叩く金曜日の夜。

ここ最近はずっと降っていて、部屋に干された洗濯物が部屋全体を覆っていた。

白、ピンク、黄色、黒………色とりどりの衣服が、部屋の何処に視線をきっても映ってくる。

窓の外を見ると、人も車も少なくなり始め、街の店の明かりも段々と消えていっている。

暗闇に点々と赤い光と白い四角が浮かんでいるが、それはいつもよりもなんだか暗く見えた。


表の通りには所々ぽつぽつといろんな色の花を咲かせながら人が歩いていた。

外からの雨の音が酷くて、テレビの音と溶ける様に混ざってしまって上手い具合に聴き取れない。


ふと壁掛けの時計を見ると、針は午後10時過ぎを指している。


もう今日はこわいあの人は帰ってこない。

時間があるとはいえ、急がなくちゃいけない。


カチカチと鳴る時計の針に急かされて、つい服を手繰り寄せる手が震える。

ああ、なんだか緊張してきてしまった。

こういう事は2回目だけど、失敗してしまったら、いつも以上に酷いことをされてしまう。……なんとしても、それは避けたいところだ。嫌だから逃げるのに、バレてもっと痛い目を見てしまっては元も子も無い。

痛む腕の傷跡をなぞって、少し増した痛みを頭で誤魔化しながら、作業を再開する。


手に取っては鞄に詰め込んで、たまに元あったところに戻して、を繰り返す。

そんな作業も一段落した頃には、時計の針は既に11時を示していた。

ぎょっとして急いで鞄のチャックを閉める。


掛けた時間の割にはすっからかんな鞄を持って、テレビと照明は付けたままで、窓は閉めて、履き潰した靴を履いて、400円の傘を持って。鍵は閉めずに家を出た。

……ああ、それと、携帯は機内モードにしなくては。


さあ、急がないと。終電に間に合わなくなってしまう。


そう心の中で反芻させて、雨の中を歩くため、傘を開いた。










『夜越しの白昼夢』