眠れない

🌃夜野くん💫
@yoru_sou_410





"眠れない"



ふと、静寂の中で彼がそう呟いた。


夜の帳、寒さを感じ始めた午前2時過ぎ。

未だ眠らない街のネオンが暗闇の部屋に伸びて溶けだしている。

ベッドの上でふたり、同じ枕から月明かりを眺めては、朝への緩やかな憂鬱に身を揺蕩わせる。

布の擦れる音と、二人分のゆったりした呼吸音が部屋に溶けた。

可笑しな話だ。

まさか二人して眠れないとは。


ひとつ欠伸をして、真横の熱に触れる。

細くて柔らかな銀髪は、窓から漏れ出す月明かりとネオンに照らされて、まるで宝石みたいだ。

その銀髪を撫ぜる様に指で梳かせば、彼は大きな瞳を伏せて「ふふ、くすぐったい」なんて言葉を漏らした。

その笑みはいつも見ているそれよりも綺麗で、色気さえ感じられた。


もしかすると今眠れないのは、これのせいなのかもしれない。


急に愛おしくなって、先程よりも身を寄せてきた彼の額に軽くキスを落とす。

すると彼はまた嬉しそうな顔で笑うのだ。


そしてまたお互い目を瞑り、懸命に意識を手放そうとする。

…………が。



「駄目だな、寝れねぇ」



あまりの眠れなさにため息を漏らすと、彼もまた言葉を漏らす。


「そーだね、いっそ朝まで一緒に起きとく?」


冗談めいた表情とトーン。

いつもよりは抑えられてるが。


もし俺がここで肯定の返事を返したら、彼はどんな表情をするだろう。

驚くだろうか、喜ぶだろうか、慌てるだろうか。

どれも有り得そうな反応で、自分で想像したにも関わらずどこか可笑しくなって、思わず吹き出した。


「馬鹿か、明日も学校あるだろ」

「え〜〜?」


引きずるように笑みを浮かべると、彼もまた月明かりできらきら輝く銀髪を揺らしながら笑みを零した。

そんな表情も可愛いなと思いながら、どことなくぼーっと窓の外なんかを見たりする。


不意に視線が横から天井へ向かされた。

目の前には陸の顔があって、気づいたら俺の上に陸が四つん這いで跨ってる体勢になっている。

驚いて彼の眼を見ると、柔らかく潤んだ青色に見据えられ、なんとも言えない感情になった。


「いいじゃん、休んじゃおうよ」


優しい声で囁く様に。

はたまた、いたずらな声で誘う様に。


耳元で発せられた声に少し心臓が跳ねたのを知らん振りして、陸の頭を撫でてやる。


「………………そうだな、悪くねぇな」


これからの事を少し考えてみて、でもやっぱり面倒くさくなって考えることを止める。

たまにはいいよな、なんて思いながら。


「んね、悪くないでしょ」


俺も大概、人の事が言えないくらい馬鹿だ。