愛してるから離さないで

星空いのり
@hoshizora_BL

Life,2 隣の席


カチャリと金属音が響く。

ドアノブをすっと開けたその先はとても綺麗な快晴で、弁当日和だなと心が暖まる。


「さてさて、俺の弁当日和タイムを邪魔するやつは居ないか確認しないと…」

よっと足を踏み会えれた瞬間ぶわっと何かに包まれるような感じがした。


ふと、隣に気配があった。

それはとても威圧的…とまではいかないが、触れてはいけないものに触れてしまったような…

食べ物に訳すなら禁断の果実みたいな。

馬鹿らしいかもしれない例えだが俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。

ドアを開いたそのすぐ真隣。

右隣に見たことの無い男がいた。背中を向けていたがそいつの外見は、ほとんど肌を出しておらず、全体的に黒く纏われておりまるで吸血鬼みたいな奴だった。スカートではなかったから直ぐにオトコとは分かったが、学年1目立つ俺が知らない人があるのだろうか…と考えてしまうくらい全く見覚えのない奴だ。


俺があまりに見つめているせいか、そいつが此方に振り向く。

気づいたのか、そう思って俺は顔を覗き込む。だがその顔よりも俺はあるものに目を取られてしまった。



手から滴る無数の血、傷、だ。



すぐに悟った。こいつ世にいう自傷癖って奴だ。リストカットっていう、自分の手首を傷つけて存在感を確かめるみたいな…?なんの為に行うのか分からないが、ダメな行為だとはわかっていた、

だから___


「お前何やってんだ!すぐ止血しろよ!!太い血管まで切っちゃったら死ぬかもしれないんだぞ?!」

自分でも酷く珍しいと感じるくらいに荒らげた声を出していた。


そんな自分、いたのか


相手はビックリしていた。直ぐに体を反転し傷を隠す。長い前髪から覗かれた紺色の瞳は俺の瞳をしっかりと抑えている。

「…っや、やめろよ…」


少年感のある高いトーンの声。俺はその声に鳥肌が立った。


「んだよ、せっかく人が心配してやってんのに」

反抗的な言葉に俺は少しイラついてしまった。先程の感情なんて一瞬で冷めてしまった。

そこでやっと気づく。あ、俺の弁当。中身ぶちまけられてる。

…御影に貰った…弁当…手作り弁当…


エコーが頭の中でかかる。しばらくその袋を見て地面にへたれる。

「……俺の弁当…」

初対面相手に俺は何を見せているのか…自分でもわかっていたがやっとの事で女子を振り分けて取った大切な昼休みが…俺の。昼休み…昼休み…


またエコーがかかる。

と、その様子を見ていた自傷癖男子がこちらに歩みよってくる。

同情かなんかか?そんなふうに思いぐずりながら相手の顔を見る。


「あ、やっ…えと…えっと……ごっごめ…」

俺が急に顔を上げたせいかビックリして少し上半身だけ反らしながら俺の方に言葉を告げる。


謝ってくれたのかよ。いや、お前何も悪くないだろ。

内心そんなこと思ってたり思ってなかったり。

「あ〜いや、俺が勝手にして弁当落としちゃったんしだしお前はべつに謝らなくても…」


先程から変な会話ばかりしている俺がなんてことを言うんだ…


すると自傷癖男子が俺に手を伸ばしてくる。

「じゃ、この傷のこと秘密にしてくれるかな、僕は君に傷を見られたそのせいで君はお弁当箱の中身が漏れた。ギブアンドテイクで俺は君にお昼ご飯を分けるそのかわりこの傷のことを…」

「長い長い長い長い長い長い」

右手を顔の前で左右でブンブン振りながら真顔で言葉を放つ。

「俺胡散臭いの嫌いなの。話とか長いのも。」

はぁっ…と胡座をかきその場に座り込む。

やけにこっちを見てくるな、、、


「え、あ、…ごっ……ごめん…………」

俺がストレートにいいすぎたせいかしょんぼりしながら重い空気が広がる。

あ、俺のせい?

自問自答をかけているうちに自傷癖男子が立ち上がった。


いや待てよーーー!!お前の名前聞いてないから秘密も何も出来ないじゃねーかー!


ばっと両手を広げ「待って待って待って」と連呼する。


「名前聞いてから帰って!?」







…………………








沈黙つら。


なんか喋れよ自傷癖男子さんよ


「……く……わ……み」

俺が脳内で送った言葉と同時にそれに答えた自傷癖男子。小さい声だったが少しだけ僅かに聞き取れた。

「えっと…くろかわ……よ…み?」

何だか見覚えある名前だ。よく耳にして毎日のように聞く、先生の出席名簿の時に呼ばれる名前……


「!?」


脳内がパニックに陥った俺はできる限りの言葉を相手に話す。


「おまっ、俺の隣の席の黒河夜弥!?!」