GOD EATER 3

赤狐@夢垢
@akakon4x_yume

悪い夢、眠れぬ幼子

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「…ユウゴっ」



真っ暗な鉄の廊下を走る足音が機械の駆動音の中に響き渡る。



「ユウゴ…っ」



扉を開け部屋に入ると複数の寝息が聞こえる。

走っていた勢いそのままに目的のベッドへ倒れ込むようにしがみ付く。



「ユウゴっ!」


「うぉっ!?なん…っ、て、アスカ…っ!おまっ、ここ男部屋…っ」



飛び起きたユウゴがしがみ付いて来たアスカを見て叱ろうとしたが、肩を掴んでいた手が震えていた事に気付き吸い込んでいた息を力なく吐き出した。



「…取り敢えず、外出るぞ」



周りを起こさないようベッドから降り、アスカの手を引いて外へ出た。


外は緩く冷たい風が吹いていた。

青い月が見下ろす中、船の甲板に出たユウゴとアスカはベンチへ腰を降ろした。



「ほらよ」


「…ありがと」



渡された缶のプルタブを開けて喉に流し込むと幾分昂っていた気持ちは落ち着いた。



「…で?今度はなんだ?」



未だに俯き続けるアスカに声を掛けると、握っていた缶が少し音が鳴った。



「昔の…嫌な、夢」



ペニーウォートに、牢獄に居た時の辛い記憶。

夢などではない本当の過去。


辛くて何度死のうと思ったことか。

外に出た時にアラガミと遭遇して襲ってくれないか、と何度思ったことか。


でもその度にユウゴに支えられた。

アスカはユウゴが居たから今この時まで生きていると言っても過言ではない。



「…まぁ、過去を消し去る、なんて事は生きてる限り無理な話だ。けど、乗り越えていくことは出来る。

だろ?」



頭をくしゃりと撫でられるが脳裏から離れない苦痛の日々にユウゴの言葉が流れそうになる。

ふと目元を親指で強く擦られた。



「ったく、お前は昔から泣き虫だなぁ」


「だって…」



いつの間にか目元に滲んでいた涙を拭うと、両手で頬を挟まれ顔を上へと向けられた。



「な、なに??」


「お前は腕前はピカ一なのにまだまだガキンチョだなぁ」


「が、がきんちょって…」


「ガキンチョだろ?怖ーい夢見て泣いてんだから」


「こ、これはっその…」


「いいか?お前は俺の…なんだ?」



なんだ、とは。



「…お、幼な、じみ?」


「んー?」



ハズレらしい。



「え、えっと…」


「ごー、よーん」


「お、お兄ちゃん?え、えーっと、えーっと…っ」


「さーん、にー、いーち…」


「ふ、懐刀…?」



ユウゴからの謎のカウントダウンが止まり、頭をくしゃくしゃに撫で回された。



「そ、懐刀。俺を護ってくれる懐刀」


「護る…」


「その懐刀の刃がボロボロで一度打ち合っただけで折れたら、俺はどうなる?」


「傷付いちゃう…」


「懐刀である今のお前は?」


「…ぼ、ボロボロ…」


「だったら俺はアラガミに立ち向かった時や他のミナトとの交渉の時に傷付いちまうなぁ」


「そ、それは嫌…!」



自分の代わりに傷付くユウゴをもう見たくはない。

牢獄での苦しい痛みをもう2度と受けたくはない。



「だったら、しっかりしろ」



ぱしっと気付けのように両頬を挟まれる。

見上げた視界に映ったのは、星が煌めく夜空と同じ色をした黒曜石の瞳。



「お前は俺が護ってやる。ハウンドも、子供達も、クリサンセマムも。

けれど俺が闘えるのは…アスカ、お前って言う懐刀がいるからだ。

お前がいるから、俺は闘える」


「…うん」


「だから折れてくれるなよ。俺を…護ってくれよ?」



護りたい。


ユウゴを護るためなら怖い看守にも楯突いたこともある。

あの一件以来、あまり強い刺激をしないようにと看守たちの暗黙の了解になっていたことも知っている。

自分の持って生まれた、AGEにされ無理矢理目覚めさせられたこの力はユウゴを護る刃になれる。


自分が傷付くだけなら本望だ。



「判った…私、頑張るから…っ。もっとユウゴを護れるように頑張るから…っ!」



願うばかりの自分ではなくなった。

本当にこの手で護りたいものを護れるようになったのだ。



「だからってロストしてくれるなよ?あん時は生きた心地しなかったんだからか」



改めて腰を降ろして喉を潤すユウゴは、あの時、濃度の高い灰域でフィムとビーコン反応が一時的に消失した過去を語った。



「あ、あれはっ!私のせいじゃなくて…」



何だかんやと調子を取り戻し、何か言い訳染みた事を言っているアスカを横目に、先程言われた言葉を思い出した。



("お兄ちゃん"、ねぇ…)



お前は俺の何だ、と問いかけた時、咄嗟にアスカの口から出た彼女の中でのユウゴの格付け。



(そう思ってるのはお前だけ…なんだけどな)



未だ何かを言ってくるアスカの頭を撫でながら見上げた月は、雲に遮られる事なく、光り輝いていた。