GOD EATER

赤狐@夢垢
@akakon4x_yume

腐敗寸前

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「………………おい、ミカゲ!!」


「……えっ?」



まるで今気付いたように顔を上げて目を瞬かせる。



「…聞いてなかったか?」


「…ごめんなさい」



少し青ざめた顔で急いで手元の資料に目を移す。

いや、別に聞いてないから怒ったりはしねぇが、こうも慌てられると俺は怖い先輩としてミカゲの目に映ってたのかと思うと正直凹むし申し訳ないし、これからもっと優しくしてやんねぇといけねぇのかな、とか思うわけで。


必死に企画内容見てるんだろうけど、どうせ頭に入ってないんだろ。



「…ちょっと飲み物でも買ってくるわ」


「えっ、…あ、はい」



エレベーターに乗り込んで、さっきのミカゲを思い出す。


リンドウさんが消えてから2週間が過ぎた。アナグラに何かが足りない。重苦しい空気でも、どこか安心出来る空気がない。


アリサはあの時何かがあって現在療養中。サクヤは親しい幼馴染みを失い気が動転。コウタは普段しないようなミスを連発。カノンなんて誤射するどころかアラガミの前で焦って撃てないし。


第一部隊だけでなく、この極東支部全体が揺れる中、ミカゲが急遽第一部隊を纏める事になった。言ってもまともに動いてるのはミカゲとソーマくらいだけど。

リンドウさんが居なくなったからと言う理由で、取って付けたような立場ではないのは皆判ってる。


けれど、それは誰もが想定出来ない程にミカゲにとっては大きな負荷だったことに、今日アイツを目の前にして理解した。


一番動揺してるのはミカゲだ。

端からは見えない。任務も忠実に精巧にこなす。だがそれは見た目だけ。


このアナグラに来て初めて支えてくれたリンドウさんが消えて、周りが揺らぎ、崩れていく中で…まだ神機使いになって日も浅いアイツは今どんな気持ちなんだろうな。


頼る相手を見つける前に責任と言う名の鎖で繋がれてしまったミカゲは悲嘆に暮れる暇も与えられず、重要任務だけが下っていく。



(まるでフェンリルの奴隷じゃねぇか…)



人手が足りない事は判ってる。動かなければいけない事は判ってる。

けれどミカゲも1人の人間だ。喜び悲しみもすれば、泣きたい時だってある。



(言っても、アイツの泣いてる所なんて見たことないけどなー)



極東支部初めての新型神機使いだとか、第一部隊の精鋭だとか、期待の神機使いだとか

輝かしい肩書きばかり。そんな所ばかり独り歩きして目立ち、本来のアイツが本人も含め皆判っていなかった。


オレからすればミカゲはまだまだ青臭い新米だ。いくら戦闘面で長けてようが、戦場の経験ならオレの方が圧倒的に上だ。

数え切れない程の命の灯が消えるのを見てきた。

数え切れない程の涙を見てきた。

数え切れない程の痛みを経験してきた。


長年神機使いをしていても、オレ1人で出来た事なんて本当にちっぽけなもんだ。



「ほらよ」



そう、オレ"1人"なら。



「え…?これ、タツミさんが買ったジュース…」


「眠気覚まし程度に飲んどけ。これから会議すんだからさ」



ガキの頃は誰にも頼らず1人でこなす事が偉い事なんだって思ってた。けれど、その考えのせいで何度も失敗した。


神機使いとして、隊長として後輩である#ミカゲ#にオレの二の舞は踏んでほしくない。



「ミカゲ、辛かったら誰かを頼れよ」


「え…?」


「隊長として部隊全体を見なければいけないオレが1人の神機使いの不調を見逃すと思うか?」


「……」


「リンドウさんの二の舞にはなってほしくねぇんだよ」



渡した缶を両手で握り締め、前髪で顔が隠れる程俯いて表情なんて判らない。



「周りがお前をどんな目で見ようと、オレは新米神機使いの#城崎##ミカゲ#としか見てねぇからな」



俯く頭に手を乗せ少し乱暴に頭を撫でてやる。



「先輩は後輩を支えるもんであって、後輩は先輩に頼るもんだろ。甘えても良いんだぜ?」



両手に持った缶のプルタブに雫が一粒落ちたような気がした。