悪の組織のコス会議2 vs鳴神雪那編

倭音🌈キンプリを見てくれ
@wain416

鳴神雪那は一人、夜の河原を眺めていた。

兄を喪って数ヶ月。その傷は未だ癒えてなどいないというのに、再び平穏を脅かす存在が現れた。

こんな時、兄さんがいれば……。

そう思って首を横に振る。鳴神紫琉はもういない。これからは自分たちで戦い続けなければいけないのだ。


背後から、砂利を踏む音がした。振り向くと、そこには──。

「兄、さん……?」

暗くても見間違えるはずがない。けれど、おかしい、だって……。

「なんで、兄さん、死んだんじゃ……」

「お前たちを遺して死ねるわけないだろ。……心配かけたな」

「兄さん、兄さん……!」

立ち上がり、兄へと向かい足を踏み出した。

瞬間、違和感を覚える。

「……兄さんじゃ、ない……」

「…………」

目の前にいるのは、確かに鳴神紫琉だ。だが、何かがおかしい。

「……あーあ、気付かなければすぐ楽になれたのによォ」

「お前……!何者だ!」

「アァン?俺の名なんてどーでもいいだろうよ。お前はここで死ぬんだからなァ!」


兄のガワを被った何かは、兄には有り得ない卑下た笑みを浮かべている。

「偶然コイツの死体見つけてさぁ。俺が有効に使ってやったんだよ。

……さぁて、俺はお前に恨みは無いが、ここで死んでもらうぜェ。兄貴の身体に殺される!面白ぇじゃねぇかよ!」

バチバチと、電気の流れる音がする。

「死ねェ!!」

電流が鳴神雪那を襲う。

「……この程度で、私を殺せると思わないで」

襲いくる電撃を、氷の刃で避け続ける。

「お前は、お前は絶対に許さない……。

兄さんを……、兄を侮辱するな!!」


怒りを込め、刃を飛ばす。奴を取り囲む様に、絶対に、逃さないように。

「やっべぇ怒らせちまった。逃げよっ」

鳴神紫琉の肩から、一匹の鼠が飛び降りた。その瞬間、彼の体は崩れる様に地に伏せた。

「まさか、あの鼠……!?」

咄嗟に刃を飛ばすも、その小さな体を捉えることは叶わなかった。


崩れ落ちた兄の体は、冷たかった。

「……兄さん、ごめんなさい。私たちが、弱いばっかりに……」

呟いた声は、闇に溶けた。




一部始終を見守る影があった。

その影は、鳴神紫琉の傍らで悲しみに暮れる鳴神雪那へと近づいて行く。

「うっそー!リュシリューってネズミさんが本体だったんだぁ!らぶたん知らなかったぁ!

っていうかぁ、お兄ちゃん死んじゃったの?かわいそ〜!」

場違いに明るい声が響く。闇夜でも目立つパステルピンクが、存在の異質さを際立たせていた。

「お前は……」

「らぶたんは『魔法少女らぶ♡ぶらっど』

らぶりぃあいらんどからやって来た愛と悪の魔法使いなのだ!」

「悪……!」

「そんな警戒しないで〜!らぶたんはね」

スっと笑顔が消えた。それまでの明るい雰囲気が一転。

「お前を殺しに来ただけだよ」

闇を纏った。




「死ね!鳴神雪那!!」

自らへ魔法をかける。持ちうる全てを放てと全身へ指令を出した。

全ては目前の、何より憎い女へ向けて。あの澄ました顔が苦痛に歪む姿を見るために。

瞳に掛けた魔法は彼女の刃を見切り。

足に掛けた魔法は大地を蹴り。

腕に掛けた魔法は彼女を殴りつける。

避けきれず皮膚を裂く刃もあったが、鳴神雪那が負う痛みに比べれば微々たるものだ。


刃の合間を縫い、鳴神雪那の背後に回り込む。彼女が反応する時にはもう、首めがけてステッキをフルスイング。骨の折れる感触があった。

ドサリ、と倒れ込む音。

「あ、あぁ……」

思わず声が漏れる。勝った。あの憎い憎い女に、勝った。

「や……った、らぶたん、勝ったよ……」

体から力が抜ける。それと同時に、全身を激痛が襲った。


一時的に身体能力を強化するこの魔法は、効果が切れると反動が起こる。

「っ、うっぐ……あぁっ……」

筋肉が裂ける。頭が割れるように痛い。腕を見るとどす黒く変色している。血管が破れているのだろう。

死にたくない。死にたくない。死にたくない──。




「あーあ、あの女、結局死にやがった。女の恨みって怖ぇ〜」

遺体に近付く鼠一匹。

「……さすがにこんなボロボロの死体使えねぇよ。しゃーねぇなぁ」

らぶ♡ぶらっどのステッキを咥え、走り出す。その姿を、朝日が照らし始めていた。

著作者の他の作品

「悪の組織のコスプレ会議3」にて倭音がRPした「紅緒みやび」の過去編です。