見つからない場所へ

狛戌@GE3アプデ待機中
@Small0wolf5dog

魂ごと凍りそうな冷気が満ちているプラントに足を踏み込む。

硬い金属の床は所々氷に覆われ、ある日を境に時間ごと凍りついてしまったのではないか。そんな雰囲気を漂わせている。

紫貴は自らの神機をもう一度握り直すと、悲痛な表情のままゆっくりと歩みを進めた。


息を吐く度に白い煙が一瞬視界を塞ぎ、そして霧散する。

紫貴はこのフィールドが好きだ。

凍りついているおかげか、落ちている換金アイテムの状態も良い。

それに、この冷たい空気がとある場所に辿り着くまでは崩れそうな気持ちを落ち着かせてくれるから。

途中で落ちているアイテムを拾いながら、紫貴は足早に最短ルートを進んでいく。


本当はこんなことをしている場合では無いのだけれど。

少しでも、償いの足しに出来るのなら。


独り言ちて、苦笑する。



暫くして、紫貴は立ち止まった。

天井の一角に半ば埋め込まれたような形になっているコンテナ。

例えAGEでも、ハシゴか何かしらの道具を使わない限り到底届かない場所だ。

コンテナの下を通り過ぎ、あちこちに伸びている水道管や足場を駆使して登っていく。

この場所に来ること自体、優に十回は超えている。そのため神機と共にコンテナの入口に辿り着いた時、紫貴は息を乱してさえいなかった。

身体をぶつけないようにそっと中に入ると、神機を近くに寝かせその横へ膝を抱えて蹲る。

既にエイミーには連絡しており、無線は切ってある。

腕に顔を埋めると、抑えていた涙が溢れてきた。

服に浸透した涙が、皮膚に熱を伝える。


--守れなかった。


その思いだけが脳内を満たし、自分への嫌悪となって心を締め付ける。


--守らなきゃ、ならなかったのに。


涙は徐々に量を増し、袖を濡らす範囲も広がった。


「ごめ…なさい…!ごめん…なさい!!

…瀬音さん…!!」


初めて行くフィールドだと言っていた。

知り尽くしてる自分がサポートしなきゃいけなかったのに。


「どうしてっ…僕はいつも…!」


ぼやける視界に映る腕に爪を立てる。

この痛みの何倍も、痛かった筈だ。




特段難しくもなかったミッションだった。

討伐目標を倒した後、何事も無かったことに気が緩んだのだろう。

瀬音の後ろに迫っていた小型アラガミに紫貴が気づいた時には、既に対処不可能な距離だった。

避けようと瀬音が身体を逸らした瞬間、そのアラガミの爪が深く瀬音の左腕を切り裂いた。

回復の早い神機使いでも即座の回復は無理だとわかる程だった。

それでも運が良かったと言うべきか、小型アラガミは一体だけだった。

紫貴は瀬音を庇いながら小型アラガミを討伐した。その後、無線でエイミーに緊急だと知らせた。

迎えが来るのが遅いと焦ったことなど、この日まで無かった。

瀬音の腕から溢れる血を見て、自分が取り返しのつかないことをしてしまったのだと改めて思い知らされた。



医務室で治療後の瀬音と対面した時、明るく笑う彼を見て泣きそうになった。

「こんな状況になったのに、自分に気を使ってくれている。」

「この笑顔を、失くすところだった。」


脳内に響き渡る自責の念に耐えられなかった。

瀬音に深く頭を下げ、医療班の職員に治療代は自分に請求するようにと告げた後そのまま飛び出して来てしまった。



ーー早く泣き止まなきゃ。


そう思えば思うほど、涙がとめどなく溢れる。



客人が来ている状態で、ここへ来ることなんて想定していなかった。



ーー急にいなくなって、瀬音さんに変に思われる。

もしかしたら、僕を探しているかもしれない。

でも、怪我をさせた相手をわざわざ探すだろうか。



防ぐことの出来なかった後悔と、平静を保てなかった恥ずかしさが紫貴を苛む。

そして、益々立ち上がれなくなってしまった。




ーーピピピッ



少しして、ポケットから電子音と振動が伝わってきた。

10分経ったことを知らせる為に設定していた携帯のアラームだ。

あと五分経つと強制的に無線が繋がってしまう。

涙を袖で拭い、震える足を無理やり動かす。

アラームを止めてから神機を掴んで屈みながらコンテナから出る。


先程のルートを逆走し、ある程度の高さまで来たらそのまま一気に地上まで飛び降りる。

着地の衝撃音が虚しくこだまするのを聞き届けてから、無線を繋げて迎えを頼む。

待つ間、氷のような冷たさになった腕輪を瞼に当てる。

ゆっくりと深呼吸を繰り返し、早くなってしまった息遣いを元に戻す。

先程よりも頭の中は冷静だ。



もう一度謝罪して、処分は瀬音さんに任せて…そうだ。彼の無事を願って、待ち続けている人もいるだろう。

その人達への謝罪の品も考えなければ。

…あぁ、もしどこに行ってたのか聞かれたら誤魔化さなきゃ。

賢くて優しい人だ。生半可な嘘じゃ無理だ。

納得させる理由を決めておかないと。



グルグルと考えている内に迎えが来たようだ。

紫貴はもう一度息を深く吸い込む。

何を言われても揺らがない様に覚悟を決め、歩き出した。



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