白眉学園軽音楽部

第6話.誰も欠けない文化祭(11月後半)



 文化祭初日。

 青春アルテミス以外の部員は皆裏方に回り音響や照明を整える。軽くリハをしていると外に漏れた音を聞きつけた生徒達が、部室の前にどんどん集まってきた。

「シム君」

 リハを終わらせ、もうすぐ開場という頃。ニィはマイクをスタンドに収めながらシムラを呼んだ。

「んー?」

 シムラは腕を伸ばしながら返事をする。

「ライブ終わったらなんかする?」

「片付けの後?」

「うん」

「んー、二年五組の映画上映気になる」

「行こうか」

「おけおけー。ニィさんは?」

「お好み焼きおいしそうだった」

「行こっか」

「うん」

 ギターやベースのセッティングをしている三人を放置して、二人だけで控え室と化した第一部室へと戻る。

「あー緊張するなぁ。投票どーなるだろ」

「五日目の演奏はもらうしかないでしょ」

「そうじゃなくて技術投票のほう!」

「そっちか」

「そっちそっち」

「シム君にはドラムパート一位とってもらわないと」

「なんで?」

「俺がボーカル一位とるから」

「ニィさん対抗意識半端ないね」

「……対抗意識ではないけど」

 ニィは水を一口飲んでから呟く。シムラは椅子に座り、今日やる新曲を口ずさみながら自分の足をぺちぺちと叩いていた。

「……楽しんでいくか」

「え?」

 シムラが顔を上げる。それとほぼ同時に、ダイ達三人が第一美質に入ってきた。

「楽しもうって言った」

 ニィが言い直す。シムラはニィを見つめ、三人はそれぞれ顔を見合わせた。

「なに、どうしたニイノ。円陣組むか?」

 ダイが茶化すようにニヤニヤしながらそう言うと、ニィは「組む」とだけ答えシムラの肩に腕を回した。

「早く。ライブ始まる」

 三人は再び顔を見合わせたが、すぐに肩を組んだ。

「ねえ、この円陣運動部のやるやつじゃない?」

「五人でやるやついる?」

 荒巻あらまき翔平しょうへいことショウと原田はらださきことハラダがツッコむが、口角は上がっている。それほどニィのテンションが珍しかった。

 ニィは「うるさい」と返すがやはり笑みが抑えきれない。

「……青春アルテミス」

 ニィは続ける。

「一人も欠けてない文化祭を行えることに、感謝の気持ちを込めつつ」

「なんだよそれ」

 ダイが笑いながらツッコミを入れる。

「……初日、最終日もライブできるように、全力で……」

 そこまで言ったニィの脳裏にケイの存在が掠る。

 記憶に無い存在。でも、どちらかと言えばそれが、当然で自然なことのような……

「……楽しみましょう!」

 考えをかき消すように、ニィは声を張る。普段の低い声ではなく、歌う時の声の出し方だ。

「おーっ!」

 四人が声を揃える。

 『誰も欠けない文化祭』が、始まった。




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