荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第8話 赤い悪魔【中編】2

 一方、ジョーキッドが生還していることなど知る由もない保安官たちを乗せた荷馬車は、町の繫華街に到着した。ニコラスとマイクたちの酒場でのやり取り、そして事件の通報者のフレデリック=ロータスと付き添いの男性の“赤い悪魔”の話がもう町中に広がっているようで、至るところで旅人や住民たちが凝り固まり、不安な面持ちで事件のことについて噂している。

 すると、そのときだ。ひとりの住民の男性が保安官たちの乗る荷馬車を捉えると、声を上げて駆け寄って来て、それに乗じて周りの人たちもどんどん集まって来る。――そして、あっという間に荷馬車は包囲されてしまい、前に進めなくなってしまった。

「おい! モーガン! ニコラス! この町に赤い悪魔が現れたって本当か!?」

「郊外の牧場主と郵便配達員が殺されたって話だぞ!?」

「お前らいったい何やってるんだ! 早く逮捕してくれ! これじゃあ不安で外歩けねぇよ!」

「そうだそうだ! お前ら保安官だろ! ちゃんと町の治安を守れ!」

 好き勝手言う住民たちに、さすがの4人も困り顔だ。だが、すぐにダリスが口を開く。

「心配すんな! あのクソヤローなら北の崖からダイブして地獄へピクニックに行ったぜ!」

「本当かよダリス!?」

「あァ、本当だよ。俺たちが追い詰めて崖から落としてやったんだ」

「おい、お前ら! 赤い悪魔は死んだってよ! よかったなーっ!」

「でも、こいつの、ダリスの言うことだからなぁ~……ダリスと葬儀屋のマディソンはトルカの二大“信用しちゃいけねぇ”に入ってるからなぁ……ガセかもしれねぇぞ?」

「はァ!? 誰だよそんなこと言ったの!? とにかく、アイツはもう死んだんだ! だから安心して夜遊びもしていいぜ。――ほら、わかったならとっとと散れ! こっちはケガ人ふたりも抱えてんだよ! もし、搬送が間に合わなくて死んだらお前らのせいだからな! シッシ!」

 住民たちを適当にあしらって追い払うと、荷馬車は再び診療所に向かって出発した。

「あちゃ~……もう事件のことが町中に広がってるなぁ……」

「ったく、ヤローども、俺たちの苦労も知らねェで勝手なコトばかり言いやがって!」

「……でも、彼らが不安になるのもわかります。……僕も、正直言って“不安”ですもん」

「なーに、大丈夫だよ、あのクソヤローはもう死んだんだ。今頃、地獄でピクニックを満喫してる頃だって! なァ、そうだよな? モーガン! ニコラス!」

「……」

「何だよふたりとも、さっきから全然元気ねーじゃん! ま、ニコラスはケガしてるから元気無くてトーゼンだけど、何でモーガンまで元気ねェんだ? もしかして、あのヤローとの戦いで切れ痔が余計に悪化しちまった――とか? ……あ、それともマイクが心配なのか!?」

 ダリスは横で眠っているマイクの頬をペチペチと軽く触れるように叩くと「大丈夫だよ、このとおり“温かい”からまだ生きてるよ」と、モーガンを励ますが、その励ましはどこかズレているような気がしなくもない。

「ダリスさん、さっきのふたりの話聞いてなかったんですか? モーガンさんも、ニコラスさんも、赤い悪魔がまだ生きているんじゃないかって不安なんですよ。……そうですよね?」

「えっ? そうなのか? ふたりとも」

 モーガンとニコラスに話を振ると、ふたりとも真面目な表情でウンウンと頷く。

「そうだよ。俺たちの話をきちんと聞いていたとはさすが優秀な保安官助手だぜ。ロビン、お前、将来ダリスよりも出世するぜ。間違いねぇ、はっはっは!」

「本当だよ。ていうかダリス、お前一回ロビンの助手からやり直した方がいいんじゃねぇのか? 誰がどう見てもお前よりロビンの方がずっとデキるヤツだもんなぁ! ハハハッ!」

「い、いやぁ~……僕なんてまだまだですよ~……えへへ……」

「バッカじゃねーの!? 真に受けてんじゃねーよ」

 モーガンとニコラスに褒められ思わず照れ笑いを浮かべるロビンとは対称的に、不満そうに唇を尖らせるダリス――。そうこうしているうちに、荷馬車は町の診療所の前に到着した。ロビンは御者席から降りると急いで医師と看護師を呼びに診療所に駆け込む。


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