荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第8話 赤い悪魔【中編】2

「モーガン、ダリス、ロビン! お前らは荷台から飛び降りろ! 後は俺が何とかする!」

「何だって!? マイク、お前……!」

「マイクさん!?」

「なに言ってんだマイク!? お前、まさかあのヤローと心中でもするつもりか!?」

「そうだよ!」

「そ、そうだよって――お前なぁ!!」

「……俺の墓石には名前と生没年、そして“マイク=フォスターは最高にクールでクレバーなナイスガイだった”って刻んでナンシー(マイクの妻)の墓の隣に建てておいてくれ」

 マイクの言葉にカッとなったダリスは思わず彼の胸ぐらを掴む。

「バッカヤロー! そんなことさせられるか! お前も一緒に飛び降りるんだよ!」

「言ったハズだ! 囮は負傷した俺にしか出来ないと!」

「だからって、あのクソヤローと心中するなんてバカなこと言ってんじゃねェ! お前が死んだら他に誰がモーガンの女房役やって、俺とニコラスとロビンの面倒も見るんだよ!?」

「後のことなんかどうだっていい! 今は“今のことだけ”考えろ!」

「今も大事だけど、後のことだって大事だろ!」

「うるさい! いいから早く飛び降りろ! それともケツ蹴飛ばして落とされてぇか!?」

「――! ……、……」

 マイクの気迫に押し負けるとダリスは手を放し、俯いて唇を噛んだ。――その目には、うっすらと涙が滲んでいる。ダリスのその表情を見たマイクは彼の肩にそっと手を置いた。

「バカ、そんなシケたツラすんなよダリス。……第一、本当に心中なんてするわけねぇだろ? ヤツをギリギリまで惹きつけ、落ちる一歩手前で俺も荷台から飛び降りる」

「だが、一歩間違えればお前もジョーキッドと一緒にお陀仏だ。それをわかっているのか?」

「ハッ! わかってねぇなモーガン。賭けはハイリスク・ハイリターンだからこそ面白いんだぜ? ――それに、死ぬ危険の無い戦いなんてそんなものはどこにもない。……違うか?」

「……」

「わかったなら早く飛び降りろ! もう時間が無い!」

「あぁ、わかったよ。――必ず成功させろよ、死んだらブッ殺してやるからな!」

「死んだら殺せねぇだろ。……あぁ、必ずあの野郎をひとりで地獄へ送ってやるさ」

「……。行くぞ、ダリス、ロビン!」

「……」

「マイクさん、絶対に……絶対に死なないでください!」

「あぁ、任せておけ」

 モーガンは名残惜し気にマイクを一瞥すると、ダリスとロビンを両脇に抱え、咆哮を上げながら荷台から飛び降りた。着地の衝撃で激しく転がりながらも何とか起き上がると、3人は遠ざかって行く荷馬車とそれを追うジョーキッドを更に追いかける。

「みんな、無事に降りられたようだな……」

 3人の無事を見届けたマイクは安堵のため息を吐くと、冷や汗で濡れた額を袖で拭う。

「……さて、ここからは俺とジョーキッドの勝負だ。気合入れてかからねぇとな。……ハッキリ言って自信はまったく無いが、みんなの前でカッコつけちまった以上、やるしかない」

 覚悟を決めると、両手で激しく顔を叩いた。崖まで残り十数メートル――マイクの乾坤一擲の大勝負が始まった。


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